新コメットさんの日記　第3章「星国のワールドカップ」

―その1―「VSカスタネット星国」

コメットさん：21才。ハモニカ星国の王女。ハモニカ星国に留学している

ツヨシ君、ネネちゃんのお世話をするために星国に滞在中。「第400回ト

ライアングル星雲ティンクルサッカー大会（ワールドカップ）」ハモニカ星

国代表チームFW。

三島圭佑（ケースケ）：23才。コメットさんの「星の恋人」。世界一のライ

フセイバーとなる夢をかなえるためにオーストラリアで修業中だったが、

ワールドカップに参加するためにハモニカ星国に滞在中。ハモニカ星国代

表チーム主将&FW。

クラリス女王：21才。ハモニカ星国内最大の小星国バイオリン星国の女王。

コメットさんの親友。ハモニカ星国代表チームMF。

ヒデさん：30才。ハモニカ星国のアニメーションの動画を描いている「動

画ビト」。クラリス女王の恋人。ハモニカ星国代表チームGK。

剛（ツヨシ）くん：12才。コメットさんがかつて地球でお世話になった藤

吉家の主人、景太郎パパ達のふたごの兄。ハモニカ星国に留学中。ハモニ

カ星国代表チームDF。

寧々（ネネ）ちゃん：12才。同じくふたごの妹。同じくハモニカ星国に留

学中。ハモニカ星国代表チームDF。

ラバボー＆ラバピョン：コメットさんのお供＆ペット。

メテオさん：21才。カスタネット星国の王女。コメットさんの大切な友達。

カスタネット星国に滞在中。ワールドカップカスタネット星国代表チーム

FW。

ヤベツさん：21才。メテオさんのふたごの妹。ワールドカップに参加する

ため地球留学から一時星国に戻って来た。カスタネット星国代表チームFW。

今川瞬（イマシュン）：24才。メテオさんの恋人で人気歌手。ワールドカ

ップに参加するためカスタネット星国に滞在中。カスタネット星国代表チ

ーム主将＆FW。

への５号（羽仁神也）：メテオさんの大ファン。かつてツヨシ君、ネネちゃ

んと同じ雪ノ下保育園、小学校に通っていたへの６号の兄。ワールドカッ

プに出場するためにカスタネット星国に滞在中。カスタネット星国代表チ

ームDF。

への６号（羽仁君也）：12才。への５号の弟。カスタネット星国代表チームDF。

ムーク：メテオさんのお供。

プラネット王子：23才。トライアングル星雲内最大の星国、タンバリン星

国の王子。コメットさんが星国に帰ったのを機に一時帰国する。タンバリ

ン星国代表チーム主将＆FW。

ジュピター王子：23才。タンバリン星国内最大の小星国、ドラムス星国の

王子。プラネット王子の親友。タンバリン星国代表チームの守護神。

ミラさん：20才。カロン君の姉。代々タンバリン星国王家に仕えるフィレ

ンツェ家の娘。プラネット王子の主任侍女&恋人。タンバリン星国に一時

帰国したプラネット王子と一緒に滞在中。タンバリン星国代表チームMF。

カロン君：16才。ミラさんの弟。プラネット王子の主任侍従。タンバリン

星国に滞在中。タンバリン星国代表チームMF。

 

2009 6/28 9:30

　

　ワールドカップは前回の優勝チームのタンバリン星国で行われることに

なっており、9時半から開会式、10時からキックオフの予定だった。わた

し達は朝早く起きて最後の練習をした後朝食をとり、9時前に星のトレイ

ンに乗り込んだ。9時ちょうどに星のトレインは出発し、20分程で会場の

あるタンバリン星に到着した。会場は10万人収容のとても大きなもので、

既に超満員だった。

　9時半に司会者が登場して口を開いた。

「皆さん〜！お待たせいたしましたがついにこの時がやってまいりまし

た！それではこれから第400回トライアングル星雲ティンクルサッカー

大会の開会式を始めます。選手入場！」

　会場は大歓声に包まれた。わたし達代表チームは主将を先頭に、3つの

入口から同時にフィールドに出ていった。

「では各チームの選手を紹介しましょう。まずは前回第3位、カスタネッ

ト星国代表チーム主将＆FWの、イマシュンこと今川瞬選手！」

　会場はものすごい歓声に包まれた。イマシュンは星国でも大人気だった。年に

一度位しかないコンサートツアーの予約はいつもすぐに満杯となり、昨夜

決まったハモニカ星国でのコンサートも既に予約は一杯だった。イマシュ

ンは手を振っ」て歓声に応えていた。

「続いてFWのカスタネット星国王女メテオ様とヤベツ様！」

　会場一角のカスタネット星国からの人々がいる所を中心に大きな歓声が

上がった。

「続いてDFのへの５号こと信也君！、その弟のへの６号こと君也君！」

「そしてGKはカスタネット星国親衛隊長!」

ﾊ

「では次に前回第2位、ハモニカ星国代表チーム主将＆FW、三島圭佑選

手！」

　イマシュンにははるかに及ばないものの、なかなかの歓声がした。

「続いてFWのハモニカ星国王女、コメット様！」

　わたしの名前が呼ばれると、ハモニカ星国からの人達がいる所を中心に

大きな歓声が沸き起こった。

「ひめさま、すごい歓声ダボー！」

「そうだね。みんなが応援してくれている〜わたし、とっても嬉しい☆」

わたしは手を振ってこれに応えた。とても気持ち良かった。

「それからMFのバイオリン星国女王、クラリス様！」

　わたしの時と同じ位大きな歓声があった。

「それからDFで現在ハモニカ星国に留学中の藤吉ツヨシ君、同じくその

双子の妹のネネちゃん！」

　これも結構大きな歓声があった。

「そしてGKは動画ビトのヒデ選手!」

「そしていよいよ次はディフェンディングチャンピョン、わがタンバリン

星国代表チーム主将かつFWであられるプラネット殿下〜！！」

　司会者がそう叫ぶと、会場内はものすごい歓声と拍手に包まれ、隣の人

との話し声も聞き取れない程だった。プラネット王子は両手を振ってこれ

に応えていた。

「続いてMFでプラネット殿下の主任侍女であられるミラ様、同じくその

弟で主任侍従のカロン様！」

　先程の余韻が残る会場内から再び大きな歓声が上がった。

「それからDFのタンバリン星国親衛隊長、副隊長!」

「そしてみなさま、お待たせしました。いよいよ最後は、わがタンバリン

星国が誇るスーパーグレートGK、ドラムス星国のジュピター王子〜

！！！」

　司会者が言うのと同時に会場全体が震えるほどの歓声と拍手、王子コー

ルが沸き起こり、ものすごい熱気に包まれた。王子はこれに手を振って応

えるだけでなく、20 m位ジャンプするパフォーマンスもしてみせた。

「さすがジュピター王子、プラネット王子よりすごい歓声ダボー！」

「そうだね」

「では次にトライアングル星雲兼タンバリン星国ティンクルサッカー協会

会長リベロ氏より開会宣言があります。」

「みなさま、ようこそワールドカップへ！トライアングル星雲ティンクル

サッカー協会会長リベロです。それではこれより第400回トライアングル

星雲ティンクルサッカー大会の開会を宣言いたします。」

そうリベロ会長が言った後、会場は拍手と歓声に包まれた。

「では次に前回大会優勝のタンバリン星国代表チームからカップの返還が

なされます」

　すると金色に光り輝く高さ40 cm程の優勝カップを持ってプラネット

王子がやって来て、リベロ会長にカップを渡した。

「続きまして選手宣誓を行います。各チームの代表者はこちらに来て下さ

い」

　するとプラネット王子を中心に3人の主将が司会者のいる特設ステージ

の壇上に並んだ。そしてそれぞれが右手を挙げてこう言った。

「宣誓！我々はこれまでの練習の成果を発揮し、正々堂々とプレーすると

同時に一人の退場者も出さないよう努力することを誓います！2009年6

月28日第400回トライアングル星雲ティンクルサッカー大会タンバリン

星国代表チーム主将、プラネット・タンバリン」

「同じくハモニカ星国代表チーム主将、三島圭佑」

「同じくカスタネット星国代表チーム主将、今川瞬」

「では以上で開会式を終わります。本日の試合はハモニカ星国対カスタネ

ット星国でキックオフは10時からとなります。選手退場！」

　わたし達は再びそれぞれ出て来た入口から退場した。キックオフまで後

10分程だった。

「ひめさま〜もうすぐ始まるボー！」

「そうだね」

　10時少し前に司会者が登場して口を開いた。

「それではいよいよ間もなく試合開始です。選手入場！」

　わたし達は互いを見つめ合うとケースケを先頭にフィールドに飛び出し

ていった。会場内は大歓声に包まれていた。イマシュンを先頭とした相手

チームの姿も見えた。キックオフは昨年の上位チームの主将のケースケがすることが既に決まっていた。

　ちょうど10時になり、主審のガニメデさん（「星の絆2」より）の笛で

試合が始まった。なお、審判は主審、副審、線審の3人で、試合に出ない

星国の人（この場合はタンバリン星国）がすることになっていた。

　ケースケはボールを奪いに来たイマシュンをジャンプしてかわすとドリ

ブルすると見せかけてわたしにパスをした。わたしはパスを受けると直角

フェイント（走る向きを急に90度変え、相手をかわすテクニック）でメ

テオさんをかわし、ケースケにパスすると見せかけて手前のクラリスにパ

スをした。しかし、これに気づいたヤベツさんがジャンプし、ボールを奪

ってしまった。（しまった）

　わたしはメテオさんをマークししつ急いで後退した。ほとんどフリーに

なっていたヤベツさんはドリブルでゴールを目指し、小さく体を浮かして

DFのネネちゃんのわきをすり抜けた。しかし、ツヨシ君の好ディフェンス

により前への動きが止まり、クラリスも来たのを見て、メテオさんにする

と見せかけてそのやや後ろのイマシュンにパスを出した。しかし、これを

見破っていたケースケがあっさりボールを奪い返す。（行くぞ）（ええ）

　ケースケは素早いドリブルでフリーになると、への５号、６号をあっさ

りとかわして右端からゴールに迫り、ゴールやや左にいたわたしにパスを

すると見せかけてそのままシュートした（挿し絵参照）。

（トルネードシュート！！）

「お〜と、これはケースケ主将、センタリング、いやシュートか！ボール

がうずを巻いてゴールに向かっている！お〜ッと、キーパーの前で軌道が

急に変わった！キーパー追いつけません！ゴ〜〜〜ル！！ゴ〜〜ル！ハモ

ニカ星国が早くも先制しました〜！！！」

　司会者の絶叫と同時に、会場は大歓声と熱気に包まれた。

「ケースケ、スゴイ！」わたしはケースケにハイタッチしながら言った。

「ケースケ兄ちゃんスゴイ！」

「スゴイ！スゴイ」

「まあな。でも試合はこれからだ。油断するなよ」

「ハ〜イ！」

しかし、そう言いつつわたしは何かすっきりしないものを感じていた。

（こんなに早く点が入ってしまっていいのだろうか〜。ケースケが放った

のは普通のトルネードシュートだ。いくら守備力に不安があるカスタネッ

ト星国とは言え、あんなにあっさりと点が入ってしまうなんて〜）

「カスタネット星国ボールでプレーが再開されます。お〜と、その前に早

くもメンバーチェンジです。DFのへの６号に代えてメテオ王女、ご自分の

分身を出されました」

（エ、もう交替？）

　ティンクルサッカーでは交替は原則としてフィールド上にいる選手の分

身とすることになっており、ベンチに交替要員をおくことはほとんどない。

更に交替は原則として1回しか出来ないのでこの時間帯に交替することはほとんどなかった。

　イマシュンがボールを蹴った時、マークしていたメテオさんが不敵な笑

みを浮かべながらチラッとわたしを見た。メテオさんの顔はこう言っているように見えた。

（コメット！このままじゃ終わらないわよ。そろそろ行かせて頂くわ）

　わたしの不安は更に大きくなった。

　イマシュンはメテオさん、ヤベツさんと素早くパスを回しながら２人の

少し先を進んだ。そしてボールを奪いに来た ケースケをななめ後ろにジャ

ンプしてかわすと同時にヤベツさんにパスした。ヤベツさんはそれをカッ

トしようとしたクラリスを制してボールをキープすると、イマシュンにパ

スするとみせかけて逆サイドのメテオさんにパスを出した。私は急いでこ

のボールを奪おうとしたが、メテオさんの方がわずかに早かった。

「シュン！」

　メテオさんはイマシュンを見ながらセンタリングをした。

「トライアングルシュート！」

　シュンはジャンプしつつ右足でオーバーヘッドシュートを放った。しか

し、一直線にゴールに向かうボールを取ろうとしたヒデさんの目の前でボ

ールは急に軌道を変えて一端斜め後ろにいった後、急に角度を変えて再び

前に進み、ゴール右隅に向かった。

「し、しまった！」

　完全に抜かれたヒデさんがそう言った時、わたしは同点に追い付かれる

のを覚悟した。しかしボールはゴールポストに当たって跳ね返った。

（フウ〜）

　わたしがそう思った直後、一瞬のこころのスキをついてメテオさんがこ

のボールに追い付き、シュートした。ヒデさんも反応が一瞬遅れ、ボール

はゴール左隅に突き刺さった。

「ゴ〜〜〜ル！！ゴ〜〜ル！カスタネット星国が同点に追い付きました

〜！！！」

　司会者がそう叫ぶのと同時に、会場は再び大歓声と熱気に包まれた。

（やられた。一瞬のスキをつかれたわ）

　そうわたしは思ったが、気を取り直してケースケがボールを蹴るのを待

った。

それから私達は互いにパスをかわしながらゴールに迫った。

（ケースケ！）わたしはメテオさんをかわして左端にいるケースケにラス

トパスを出した。

「トルネードシュート！！」

　すかさずケースケはシュートし、ボールはゴール中央付近にいたキーパ

ーの手前で大きく左に向きを変えたが、ゴール直前、メテオさんの分身に

クリヤーされた。

（トルネードシュートの軌道が読まれている―）

　そう思ったわたしはそのボールを受けたメテオさんがこちらをチラリと

見たのに気づいてハッとした。

（ま、まさか〜）

（そうよ、コメット。あなたたちに最初にゴールを決めさせたのは、トル

ネードシュートの軌道を見極めるため。マンマとこちらのワナに引っかか

ってくれたわね。さあ、今度はワタクシ達の番よ）

　その顔は今度はそう言っているように見えた。メテオさんはわたしが駆

け寄る前にイマシュンにパスし、ボールは再び３人の間を回りながらゴー

ルに向かった。そしてメテオさんからイマシュンへのペスをカットしよう

とジャンプしたクラリスの目の前でボールの軌道が急に変わり、イマシュ

ンにキープされてしまった。そのボールを奪おうと足をスライディングさ

せたケースケの上を飛び越えたイマシュンはドリブルでツヨシ君、ネネち

ゃんをかわしてシュートした。

「トライアングルシュート！」

　ゴールに向かうボールを取ろうとしたヒデさんの目の前でボールは急に

軌道を変えて一端斜め後ろにいった後、急に角度を変えて再び前に進み、

ゴール左隅に向かった。あらかじめそれを予想してゴール左側にいたわた

しはこれを取ろうとしたが、直前でボールがカーブした。

（え！？）

　わたしが驚いた直後、ボールはゴールに突き刺さった。

「ゴ〜〜〜〜ル！！ゴ〜〜〜ル！カスタネット星国、あっという

間に逆転しました〜！！！」

　会場は大きな歓声に包まれ、その直後、前半終了を告げる笛が鳴り響い

た。

 

　10:47

「ケースケ、どうしてわたしの目の前でボールの軌道が変わっ

たの？」

　控え室に戻るとわたしは早速ケースケに聴いてみた。

「おそらく、メテオ王女があらかじめ星力を入れておいたんだ

ろう。それからこちらはタッチしてないしな」

「どうすればいいの？」

「とにかく、イマシュンにシュートを打たせないこと。まず、

メテオ王女とイマシュンとの連係を崩すんだ」

「どうやって？」

「一応考えてはある。これからみんなに話すよ」

　ケースケはそう言うとみんなを集め、ゼスチャーも交えながら戦

い方の指示をした。みんな一心にその話に耳を傾けていた。

「―というわけで、連係を崩せるまでは何とか耐えてくれ。そ

の後必ずチャンスが来るはずだ！」

「オー！」

　わたし達はそう言うと、フィールドに向かった。

「ではこれから後半に入ります。選手入場！」

　大歓声の中、わたし達はゆっくりとフィールド中央に向かった。

そしてイマシュンのキックオフで後半が開始された。ケースケがメ

テオさんへのパスをカットしてあっさりボールを奪うと、ヤベツさんをかわしてわたしの方にパスを出した。

このボールを奪いに来たメテオさんを十分引きつけてからわたしは

からだをそらしてボールをスルーさせた。それを見たメテオさんの顔色が変わった。

（コ、コメット！）

　メテオさんはそう言っているように見えた。ボールは作戦通りク

ラリスに渡り、ディフェンダーの２人をかわしてクラリスはケース

ケにセンタリングを出した。

このボールをイマシュンが奪おうとしたが、ケースケが軽くジャン

プして頭にあて、落ちてきた所をすかさずシュートした。

「トルネードシュート！！」

　ボールはゴール左側にいたキーパーの手前で大きく右に向きを変

えた。しかしこの軌道をあらかじめ読んで右にいたメテオさんがク

リヤーしようとした時、

「トルネードウエーブシュート！！」

　わたしはそう叫んでボールを思いっきり蹴った。ボールは渦をま

きながら、これに反応しようとしたキーパーの手をよけるようにゴ

ール左隅に突き刺さった。

「ゴ〜〜〜ル！ゴ〜〜ル！ハモニカ星国が同点に追い付きまし

た！！」

「コメットさん、スゴ〜イ！」

「すご〜い！」

「ツヨシ君、ネネちゃん、ありがと。ケースケ！決まったわ」

「やったな！でもまだ同点に追い付いただけだ。油断するな、

今度はアイツらが来るぞ」

「オー！！」

　すぐにプレーが再開され、イマシュンを中心とする３人のFWが

パスを回しながら、ゴールに近づいてきた。しかし、その様子が前

半と微妙に違うことにわたしは気づいていた。後半開始早々に同点

に追い付かれたからか、３人の間の呼吸がぴったり合っていないの

だ。この後、何度も攻撃を受けたが、割と簡単にボールを奪えたり、

シュートを阻止出来ることもあった。でも１度、危ない場面があ

ったが、シュートミスにより何とかゴールを免れることが出来た。

一方、相手のディフェンスの方はしっかりしていてなかなかシュー

トを打たせてもらえず、緊迫した攻防が続き、同点のままロスタイ

ムに突入しようとしていた。

「―コメット王女、ケースケ選手にパスを出しま

した。サァ〜ケースケ選手、このままシュートか！

オーっと！！メテオ王女の分身がこれを大きくク

リヤー！！！ボールはラインを右にわりました。

ハモニカ星国ボールのスローインとなります。ア

ーッと、ここでついにロスタイムに入りました。

ロスタイムは約１分の予定です。果たしてこの間

に決着がつくのか！あるいはこのまま引き分ける

のか、いよいよ大詰めです！」

　会場内には張りつめた空気が流れ、みなかたずをのんで試合の行

方を見守っていた。スローインはわたしがすることになり、投げる

直前、ちらっとケースケの方を見た。

（これが最後のチャンスだ。あれを使う）

　ケースケの「こころの声」がその時聴こえてきた。わたしは小さ

くうなずくとケースケの方を見ながらボールを投げ入れた。が、ボ

ールはこれを阻止しようとしたイマシュンのわきを通過して、少し

離れたクラリスに渡った。これを見てハモニカ星国側の歓声が大き

くなった。

「―クラリス女王、ヤベツ王女をかわしてドリブ

ルでゴールに向かう。オ〜ッと、イマシュン選手

のスライディングタックルだ、女王も思わずバラ

ンスをくずした。ン、でもボールがない、と思

ったら何と、その前に後ろのコメット王女にパス

を出していた。

コメット王女、への５号をかわしてゴールに向か

う、そしてケースケ選手にセンタリングを出した、ケースケ選手、イマシュン選手のブロックをかわ

してヘディング、そしてボールが落ちて来た所を

シュートした！」

「トルネードシュート！！」

　会場内の歓声が更に大きくなった。

「―ボールは真中にいるキーパーの前で大きく向

きを変え、右にいるコメット王女の方に向かう、

オ〜っと、この間にメテオ王女が立ちふさがっ

た！」

「今度はさせないわよ！」

「―アーっと、しかしボールは右ではなく、上に

上がって行く。メテオ王女、追いつけない。これ

はどうしたことか。あ、何と、ケースケ選手がこ

んな所にジャンプしてきている！そして右足

でシュートした！！」

「トルネードジャンピングシュート！！！」

「この角度ではキーパー、追いつけない！！ゴー

ーーール！！ゴーーーール！！！ハ

モニカ星国がついに逆転しました！

と、ここでホイッスル！試合終了〜

ン、審判が手をふって何か言ってい

ますー

今、情報が入りました。先程のシュートはケース

ケ選手の頭が１０メートルラインを超えたため、

ノーゴールとなりました。よって同点のまま、カ

スタネット星国ボールのスローインに変わり

ます。失礼しました」

　カスタネット星国側から歓声が挙がった。ティンクルサッカーで

はジャンプした人の頭が１０ m以上の高さになることが禁止され

ていた。わたしは少しがっかりしたが、すぐに気を取り直してスロ

ーインに備えた。結局メテオさんが投げ込んだボールをケースケが

奪った瞬間、笛が鳴って試合終了となり、２対２の引き分けに終わ

った。

「ケースケ！」

「ワリーな、オレのせいで最後決められなくて。でもみんなよ

くやったな」

「ケースケのせいじゃないよ。負けなかったんだし。次頑張れ

ば大丈夫だよ」

「あ〜ラ、コメット！やっぱりあんた達には負けなかったワ。

これで次、私達が点差をつけて勝てば優勝するに決まってるワ。

こっちには『秘密兵器』もあるんだし。ジャーネ〜」

「メテオさん」

「『ひみつへいき』って何だろう？」

「わかんないね。ま、あんまり気にしなくていいよ。どうせあ

したわかると思うし…さ、行こ」

「ハ〜イ！」

　わたし達はまだ試合の余韻の残るフィールドを後にした。

　次の日、カスタネット星国とタンバリン星国の試合があった。序

盤はカスタネット星国代表チームがイマシュン、メテオさん及びそ

の分身、ヤベツさんの４人のFW及びMFが中心となって攻撃をし、

（これが「秘密兵器」らしかった）押し気味に試合を進めているよ

うに見えたが結局ジュピター王子のスーパーセーブによりシュート

をことごとく防がれ、次第にタンバリン星国が優位に立っていった。

そして前半こそ０対０だったが、後半２本のシュートをプラネット

王子が決め、２対０でタンバリン星国代表チームが完勝した。この

結果、カスタネット星国の優勝はなくなり、わたし達が優勝するに

は絶対に勝たなければならなかった。一方、タンバリン星国の場合

は負けなければ、つまりジュピター王子がこれまで通りゴールを許

さなければ良く、明らかに有利だった。

「ジュピター王子、なかなかやるな。でも弱点もあるようだぜ」

「ホント、ケースケ？」

「ああ。後で話すよ。さ、みんなこれから練習するぞ〜」

「ハ〜イ！」

みんなの元気な声があたりに響いた。

―その２「VSタンバリン星国」へ続く―

 

 

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