新コメットさんの日記 第4章「星国のサーキット」プロローグ

コメットさん:21才。ハモニカ星国の王女。ハモニカ星国に留

学しているツヨシ君、ネネちゃんのお世話をするために星国に滞

在中。

剛(ツヨシ)くん:12才。コメットさんがかつて地球でお世話

になった藤吉家の主人、景太郎パパ達のふたごの兄。ハモニカ星

国に留学中。自分の夢をかなえるためにパンダ隊長の指導の元、

1000回トライアングル星雲ティンクルロボットレーシング大

会に出場する。

寧々(ネネ)ちゃん:12才。同じくふたごの妹。同じくハモニ

カ星国に留学中。ロボッレーシング大会に出場する。

パンダ隊長:79才。(地球年齢52才)ハモニカ星国防衛軍最高

司令官。第999回ティンクルロボットレーシング大会優勝者。

アンタレス長官:57才(地球年齢41才)ハモニカ星国警察ビト

長官。第1000回ロボットレーシング大会ハモニカ星国予選を一

位で通過。

ラバボー:コメットさんのツキビト&ペット 

プロローグ前半

2009 7/ 1 10:00

「ひめさま。お迎えにまいりました」

「パンダ隊長。今行くわ。ツヨシ君、ネネちゃん、行くよ」

「ハ〜イ!」

 わたしがツヨシ君、ネネちゃんと一緒に部屋を出るとハモニカ星国防衛軍最高

司令官のパンダ隊長の姿があった。今日はハモニカ星国の治安がどう守られてい

るかを勉強するために午前中はパンダ隊長のいるハモニカ星国防衛軍指令部に、

午後はハモニカ星国警察ビト長官のアンタレス長官の案内で警察庁に行くことに

なっていた。

「ひめさま、お早うございます。ツヨシ様、ネネ様。初めまして。

ハモニカ星国防衛軍最高司令官のパンダでございます」

「お早う」

「おはようございます。ツヨシです。今日はよろしくお願いします」

「お早うございます。ネネです。よろしくお願いします」

「こちらこそ。では早速指令部にご案内いたします。まずはエレベーター

ホールへ」

「星のトレインで行くのね」

「ハイ。指令部はエトワールの郊外にありますので」

「ねえ、コメットさん、『エトワール』ってどこ?」

「いや〜ね。お兄ちゃん、もう忘れたの?昨日勉強したでしょ。エトワー

ルはハモニカ星の首都で、この星のお城の真下にあるって」

「そうよ。エトワールはこの国の首都で人口は約300万人。議会や裁判

所なんかもあるのよ」

「そっか。忘れてた〜」

「では参りましょう」

 それからわたし達は星のトレインに乗り込み、エトワールに向かった。ハモニ

星国防衛軍指令部は中心部から少し離れた小高い丘の上にあった。星のトレイ

ンは広い敷地内の専用の発着場にすべり込んだ。

 そこから星のトンネルで10階建ての防衛軍指令部の玄関に着いた。周囲には

長い銃をもったたくさんの兵隊ビトの姿があった。

「最初に会議室にご案内いたします」

 わたし達は一階の会議室に案内された。中は広く、50人位は入れそうだった。

それぞれが席につくと、パンダ隊長が口を開いた。

「ようこそ。ハモニカ星国防衛軍指令部へ。本日は防衛軍について簡単に

ご説明した後、その装備等についてご覧になって頂きます。それから13

時に、警察に行って頂いた後、15時位からツヨシ様にティンクルロボに

乗って頂く予定です」

「あれ、私も乗ることになってるハズだけど?」

「ネネ様。これはすみません。忘れておりました。すぐに手配させます」

「確認しといて良った」

「そうだね。じゃあ、パンダ隊長、始めてくれる?」

「わかりました。それでは早速始めさせて頂きます」

パンダ隊長はそう言うと、メモリーボールを起動させた。

「まず、わがハモニカ星国防衛軍は主力のティンクルロボット隊、これを

支援する歩兵部隊、輸送部隊の星のトレイン隊、偵察部隊のバッタビト隊

の4つに分れます。ここ、エトワールには100機のティンクルロボット、

500人の歩兵など、合計約1000人が配属されており、ハモニカ星に

は約30万人、ハモニカ星国全体では約20兆人にのぼります」

「す、スゴイ〜。そんなにいるんだ〜」

「で、ふだんは何をやっているの?」

「防衛軍本来の任務は他の星国や銀河からの攻撃や大規模な災害、警察で

は対処しきれない争いや騒ぎに備えることです。しかし、ここ100年の

間で攻撃されそうになったのがたった一回、災害が2〜3回、争いや騒ぎ

も年1回あるかないかです。でもこれらはいつ起るかわからないので、い

つでも対処出来るよう、ほとんどの時間はその訓練にあてています」

「そうなんだ〜」

「そしてお二人が参加されますティンクルロボットレーシング大会は元々

は隊員の技能向上のために開催されたのです。でも今ではそれ以外のメン

バーも加わっているので参加者どうしの交流の場などにもなっているよう

ですが。では次に防衛軍の装備などについて簡単にご説明したいと思いま

す」

 パンダ隊長はメモリーボールの画面を切り替えて言った。

「まず地球や他の国の軍隊と違ってわれわれハモニカ星国、否、トライア

ングル星雲の軍隊が持つ武器はひとをある程度傷つけることは出来ても、

殺すことは出来ません。なぜなら武器を使うのも星力がいりますが、そん

なことに星の子達が力を貸すはずはないですからな」

「そっか〜だからあの時、メテオさんは気絶しただけだったんだね」

 わたしは「カスタネット星国の嵐」でメテオさんのすぐ近くで爆弾が炸裂した

にもかかわらず、気絶しただけだったことを思い出して言った。

「ン?今何か言われましたかな?」

「いえ、何でもないわ。続けて」

「次にわが星国の主力装備であり、この後乗って頂くティンクルロボにつ

いてご説明します」

 そうパンダ隊長が言った時、ツヨシ君の瞳が輝いたのをわたしは見のがさなかった。今日はツヨシ君の夢がかなう日。この日を迎えることが出来ることをわた

しはとても嬉しく思った。パンダ隊長は銀色に光るティンクルホンを胸から出し

て言った。

「ティンクルロボにはこのスリープモード、立った状態の

スタンバイモード、飛行する時のフライモード、戦闘時のバトルモードの4つのモードがあります」

「え、これがロボットに変身するの?」

 ツヨシ君はティンクルホンをじっと見つめながら思わず身を乗り出した。

「はい。後でやって頂きますが、まず、皆さんの名前を登録して頂きます。

これでそのロボットは登録した人しか動かせなくなります。登録の仕方は

後でご説明いたします。それから、ティンクルロボットレーシング大会は

フライモードで行われます」

「でバトルモードはどうなるの?」

「基本的にはスタンバイモードあるいはフライモードと同じですが、バト

ルモードでは他のモードでも使えるティンクルバリヤーの他に、主な武器

であるティンクルバトン、胸からのティンクルビーム、足からのティンク

ルミサイル、目からのティンクルアイビームも使えるようになります」

「スゴイね〜」

「バトルモードは通常使いませんし、大会でも使用出来ない規定になって

いるのでみなさんも使う事はないと思いますが、こちらの訓練ではこのモ

ードでも行ってますので、後でお見せしたいと思います。それから、星の

トレインについての説明は省略させて頂いて、次にバッタビトについてで

すが、バッタビトが持っている銃は形だけで実際に撃つ事は出来ません。

 バッタビトは原則として常に8〜10名程の一個小隊で行動する偵察部

隊なので、武器を使用するようなことはまずないはずですから〜。一方、

私達普通の兵隊ビトは皆このような武器を携帯しています」

 パンダ隊長は腰につけたサーベルを抜いてみせた。

「これはティンクルソードですが、星力で他の武器にもすることが出来ま

す。幾千億もの星の子達。キラ星の輝きを。そしてあまたの力を。どう

  か私の星力に変えて。エトワール!」

 パンダ隊長がティンクルソードをふると、まばゆい光とともに、サーベルが銃

に変わった。

「あ、銃に変わった!スゴイ!」

「スゴイ、スゴイ!」

「と、このように、心の中で願うだけで様々な武器にすることが出来るの

です。これはティンクルライフルといいます。エトワール!」

 パンダ隊長はティンクルライフルをふってティンクルソードに戻し、さやにお

さめた。

「武器の説明はこれくらいにして、これから館内をご案内し、その後訓練

場でティンクルロボットを観て頂きます。どうぞこちらへ」

 パンダ隊長の案内で館内を一通り見た後、わたし達は指令部のわきに広がる訓

練場に向かった。既に2体のロボットがスタンバイしていた。近くで見るとその

予想以上の大きさに圧倒されそうになる。ツヨシ君の目はロボットにくぎづけに

なっていた。2体のロボに10m位まで近付いた時、パンダ隊長が銀色のティン

クルホンを取りだして言った。

「これらのティンクルロボットは高さ約50m、幅約20mです。ではこ

れから登録方法をお教えします」

「ねえ、ねえ、どうするの?」

「とても簡単です。ネネ様。まず普通に開いてここを押してパワーをオン

にします。次に横のこのボタンを押しながら『◯◯です。よろしくお願い

します』と言うだけです。これで登録は完了します。しかし、他の人を登

録するか聴いてきますので登録する場合は、ハイ、しない場合は、イイエ

と言って下さい」

「ハ〜イ。でもスタンバイモードにはどうやってするの?」

「これからお見せします。ツヨシ様。パワーを入れて開いた状態で、『ティ

ンクルロボ、GET UP!と言ってこれを高く投げ上げて下さい。このように。

『ティンクルロボ、GET UP!』」

 パンダ隊長がティンクルホンを思いっきり投げあげると、たちまち巨大化して

ティンクルロボが現れた。これを見た2人は目を丸くしていた。

「ウオースゴイ、スゴイ!!」

「早く乗ってみたい〜☆

「それは僕のセリフだよ」

「では次にいよいよ中に乗ってみましょう。みなさん、私に合わせて『フ

ェードイン!』と言って下さい。では」

「フェードイン!」

 みんながそう言うとロボットの胸から光が放たれ、わたし達は光に包まれた。

それから上昇しながら胸に吸い込まれていき、いつの間にか頭部の操縦席につい

ていた。

「うわあ、僕達ほんとに乗ってる!」

「高いね〜」

「いい眺めだよね」

 操縦席からは指令部や光輝くエトワールの中心部などが見えた。時折、小さな

星の子達が近くを通過していく。

「今日は特別にお二人もこのティンクルロボに登録しましたから、操縦す

ることも出来ますが、詳しくは午後お教えしたいと思います」

 ロボットを歩かせならパンダ隊長が言った。

「あれ、わたしは登録してないの?でもなぜ乗れたんだろう」

「あれ、ご存じなかったのですか?ひめさまのような王族方はハモニカ星

国内の全てのティンクルロボに自動的に登録されていて操縦出来ること

を」

「そういえば、成人した時、ヒゲノシタからそんなことを言われたような

気がするわ。でもあのころは地球にいたし、全然興味なかったから〜」

「そうですか。私は確かにハモニカ星国防衛軍の最高司令官ですが、本当

の最高司令官は王様ですので。もっとも普段は私にまかせておられますが、

いざという時はお伺いをたてないといけませんので〜」

「ねえ、パンダ隊長、フライモードにはどうやってするの?」

「かんたんです。『ティンクルロボ、Fly』と言えばいいのです。ツヨシ様、

おやりになりますか?」

「もちろん!ティンクルロボ、Fly!」

 ツヨシ君が元気よく言うと、ティンクルロボがジャンプしたかと思うと腕をま

っすぐ前に伸ばし、足を後ろにまっすぐ伸ばして頭部をおこした。操縦席の前に

訓練場上空の景色が広がり、2体のロボが下の方に見えた。

「『ティンクルロボ、GO』と言って下さい。ツヨシ様。発進いたしますの

で」

「わかった。ティンクルロボ、GO!」

 すると、ロボットの足の裏からピンクの輝きが噴射され、勢いよく前に進み始

めた。2人は歓声を上げた。特にツヨシ君は嬉しそうだった。上空を一回りした

後、地上に戻り、わたし達はロボットから降りた。

「いかがでしたかな。ティンクルロボに初めて乗られて」

「スゴクおもしろかった」

「私もおもしろかった。もっと乗っていたい」

「わたしも」

「それはそれは、何よりで。お二人には午後にお一人で乗って頂きます

ので。午前中はこの後のバトルモードによる訓練をご覧になって頂くのが

最後です。午後は指令部内でお昼を食べて頂いた後、先に警察庁(ティン

クルポリスオフィシャルセンター)に行って頂くことになっております」

「そうなんだ。バトルモード、早く見てみたい」

「私も見てみたい」

「準備は出来ております。では早速訓練を始めたいと思います。『ティンク

ルロボ、バトル!』」

すると、2体のロボットの右手の中に大きなティンクルバトンが現れた。そして

バトンの先を相手に向けるとそこからピンクの光が出て相手の光とぶつかって輝

いた。

「スゴーイ!星力のビームだ!」

「このティンクルバトンで星力を集めることも出来ます。また、ティンク

ルビームは胸からも出すことが出来ます。今からご覧にいれます。ティン

クルロボ、ティンクルビーム発射!」

 2体のロボットの胸のハモニカ星国の紋章がピンク色に光り、そこから光の帯が発射された。

「これは直径1km位の小惑星をも砕く力がある、必殺兵器です。最後に

バトンをティンクルソードに変えて見たいと思います」

 パンダ隊長が合図を送ると、2体のロボはティンクルバトンをふった。すると、

バトンが剣に変化し、それからしばらくお互いに斬り結びあった。その迫力に2

人は圧倒されたのか一言も発しないでじっと見つめていた。

「よし、そこまで!」

 パンダ隊長がそう言うと、ロボットは剣をおさめ、スタンバイモードに戻った。

「訓練はこれで終わりですが、いかがでしたかな?」

「スゴーイ!ものスゴイ迫力だった!僕もあれをやってみたい〜!」

「私もやってみたい」

「でも、この大会ではバトルモードは使用禁止ですし、バトルモードは操

縦が結構難しいと思いますので、お二人にはまだ無理かと思います」

「でも見たい!」

「私も!」

「し、しかし〜いくらお二人でも〜ではツヨシ様、ネネ様、もし大会でこ

の私に勝ち、優勝されればバトルモードでの操縦を許可いたしましょう。

ひめさま、それでよろしいですかな?」

「え?ええ」

 わたしは慌ててそう言った。

「ヤッタ〜。優勝目指して頑張るぞ!」

「オー!」

「ではこれからスリープモードへの戻し方をお教えします。このように言

って下さい。ティンクルロボ、スリープダウン!」

 パンダ隊長がそう言うと、あっと言う間にロボットが小さくなり始め、ティン

クルホンに戻った。

「それから、この状態で星力を補給することも出来ます。効率はこちらの

方が良いと思いますので、おすすめです。エトワール!」

 パンダ隊長はティンクルソードをふって星力をティンクルホンに照射した。

「これで午前中のプログラムは全て終了です。指令部に戻ってお昼にしま

しょう」

「ハ〜イ!」

 それからわたし達は指令部のレストランでお昼を食べた。13時ごろ、パンダ隊

長のティンクルホンが鳴った。

「ひめさま、アンタレス長官が迎えに来たとの連絡が入りました。これか

らそちらの方に行って頂きます」

「わかったわ。今日はどうもありがとう、あ、ツヨシ君達はこの後戻って

来るんだよね。2人をよろしくお願いします」

「わかりました。お二人の、特にツヨシ様の夢がかないますよう、全力を

尽くしたいと思います。お二人は15時にここに戻ってきて下さい。では

こちらへ」   

 わたし達は玄関の方へ向かった。しばらくいくと

「ひめさま、お迎えにあがりました。警察ビト長官のアンタレスです」

との声がし

「お久しぶり、元気そうね。あ、こちらが地球から来たツヨシ君、ネネち

ゃん」

「初めまオて。ツヨシです。今日はよろしくお願いします」

「初めまして。ネネです。よろしくお願いします」

「ツヨシ様。ネネ様。初めまして。アンタレスです。お二人のお姿はこの

前のワールドカップでも拝見していました」

「そうなんだ」

「では、アンタレス、頼んだぞ。お二人には15時からここでティンクル

ロボに乗って頂くことになっている。遅れないようにな」

「わかってますよ。パンダ隊長、さ、みなさまはこちらへ。ティンクルパ

トカーを待たしてあります」

 アンタレス長官は玄関前に停めてある日本のパトカーに似ている車を指差した。

車体の下半分は黒だったが、上半分はピンクで、車輪の代わりに星力の噴射口が

あった。わたし達が乗り込むと、パトカーはピンク色の星力を噴射しながら浮き

上がり、てっぺんのサイレンが点灯した。

「では出発!」

 そのとたん、パトカーはサイレンを鳴らしながらものすごいスピードで飛び出したのでびっくりした。

「ワ〜すごい、スゴイ!速いね〜」

「スゴイ!スゴイ!パトカーがこんなに速いなんて知らなかったわ」

2人はそう言いながら目を輝かせて窓の外をくいいるように見つめていた。エト

ワールの町並みがグングン近付いて来る。それと共にこちらを振り返る道路わき

の星ビトや星使い達の数が次第に増えてきた。あっという間に9階建てのオフィ

シャルセンターに到着した。

「ようこそティンクルポリスオフィシャルセンターへ。どうぞこちらへ」

 アンタレス長官はパトカーを降りたわたし達にそう言うとセンターの入り口に向かっていった。センターはエトワールの中心部の一角にあり、周囲にはたくさ

んの警察ビトが立っていて厳重な警備が敷かれていた。わたし達は2人の屈強な

警察ビトが立っている玄関を通過して中に入った。中には大勢の警察ビトがおり、

一般のホシビトや星使いなどの姿もあった。アンタレス長官はわたし達を9階の

オペレーションルームに案内してくれた。前面にはエトワールの大きな地図がメ

モリーボールによって映し出されていて、6人のオペレーターが画面を見つめて

いた。よく見ると地図には数ケ所の光る点があった。

「ワ〜すごい!大きな画面だね〜」

「ここがオペレーションルームで、正面がエトワール市内の地図です。市

内及び周辺の住民からのティンクルポリスへの連絡は全てここに集まりま

す」

「アンタレス長官、あの光る点は何?」

「ここに連絡のあったティンクルホンのうちまだ処理が終わっていないも

のの位置を示しています。トワールは地球の都市よりはるかに治安が良

いので、1日の発生件数は事件、事故合わせて通常十数件です」

 アンタレス長官はちょっと自信ありげに言った。

「そうなんだ〜」

「エトワールにはここを含め、約3000人の警察ビトが配属されていま

す。ここは5階まではエトワールの警察署を兼ねているので、一般の星使

いやホシビトが立ち入ることがあります。6階以上は関係者以外立ち入り

禁止となっています。これから各階を順にご案内したいと思います。こち

らへ」

 わたし達はアンタレス長官の案内でセンターの中を上から順に見て回った。6

階までは会議室や、法令や捜査資料等の書庫などがあり、5階から1階までは事

件を捜査する刑事さん達の部屋や取調室、証拠品の保管庫、事故を扱う警察ビト

さん達のいる部屋や各種相談コーナーなどがあった。わたしもこれだけ詳しく見

るのは初めてだったのでとても面白かった。

「ではこれから地下1階にご案内いたします。ここには留置場や各種訓練

室などがあります。どうぞこちらへ」

 わたし達はエレベーターで地下1階に降りた。中は少し暗く、ひんやりしてい

て静かだった。廊下を少し進んだ後でアンタレス長官は分厚いドアの前で立ち止

まって言った。

「ここは射撃訓練室です。どうぞ」

 中は結構広く、短銃を構えた大勢の警察ビトが前方の的を狙っていた。

「これがティンクル・ガンです。ここからティンクルビームが出ます。星

国では地球のように胸や頭ではなく、バトンや銃などを持つ手を普通は狙

います。このように」

 アンタレス長官はティンクル・ガンを構えると的の一つに狙いを定めた。部屋

の空気がピンと張り詰める。わたし達はその様子をじっと見つめていた。その直

後、鈍い音とともにビームが発射され、バトンを持った手の部分に正確に命中し

た。

「すご〜い!さすが警察ビト長官だわ」

「すごい、スゴイ!」

「スゴイね〜」

「どうもありがとうございます。ツヨシ様。やってごらんになられますか?

特別に許可いたしますので」

「うん、やる」

「ではこれをお使い下さい」

長官はさっき撃ったばかりのティンクル・ガンを差出した。

「ホントに?どうもありがとう。以外と軽いね」

「地球の短銃のように、鉛の弾丸を発射する必要がありませんからな。地

球のものより軽い素材で出来ておりますv

 ツヨシ君はティンクル・ガンを的に向け、狙いを定めた。わたし達はかたずを

飲んでそれを見守っていた。それから間もなく銃の先端からピンクのビームが発

射され、見事バトンに命中した。

「お兄ちゃん、スゴ〜イ!」

「ツヨシ君すご〜い!」

「これは、お見事!」

「えッヘン☆」

 ツヨシ君はちょっとテレながら、ポーズをつけて見せた。その姿を見てわたし

はとても嬉しく思った。

「ねえ、アンタレス長官、私もやってみたい〜。コメットさん、いいでし

ょ〜」

「そ、そうね。わたしはかまわないと思うけど〜ねえ、アンレス長官?」

「そ、それは〜。わ、わかりました。ひめさまがそうおっしゃるのなら、

許可しましょう」

 アンタレス長官はちょっと困った顔をしたが、ネネちゃんの顔を見て、すぐに

そう言ってくれた。ネネちゃんはツヨシ君からティンクル・ガンを受け取ると、

同じように狙いを定めて銃を撃った。しかし、わずかに手元が狂ったのか、惜し

くもはずれてしまった。

「あ、はずれた!」

「惜しい」

「残念」

「もうちょっとだったのに〜。もう一回やっていい?」

 しかしアンタレス長官は首を振ると

「今日はこの位にいたしましょう。もうあまり時間もありませんので」

と答えた。

「私もお兄ちゃんみたいに当てたかったな」

「では、もしネネ様がこの私に勝ち、ロボットレーシング大会で優勝され

れば好きなだけ撃たせて差し上げましょう」

 アンタレス長官はわたしを見ながらそう言った。わたしは黙ってうなずいた。

「ホント?わかったわ」

「そうとわかれば次の訓練場にまいりましょう。本日ご案内するのはそこ

が最後となります」

「ハ〜イ!」

 わたし達は向い側の部屋に入った。中にはバトンを持った2人の警察ビトがい

た。

「ここは警察ビトが犯人を捕まえる時に最もよく使う、ティンクルタイト

(星の絆)の訓練室です。今日は先月行われた第1500回トライアング

ル星雲ティンクルタイト大会ハモニカ星国予選男性及び女性の部の優勝者

に来てもらっています。ご紹介します。男性の部優勝者のベガ巡査長。女

性の部優勝者のルナ巡査です」

「コメット様。初めまして。ベガです。今日は去年の本大会優勝者のコメット

様に御会い出来て光栄です」

「ルナです。私もとても嬉しく思っています。本日はよろしくお願いいたしま

す」

「王女のコメットです。こちらこそよろしく。あ、こちらが地球から来たツヨシ君、そしてネネちゃん」

「ツヨシです。よろしくお願いいたします」

「ネネです。よろくお願いいたします」

「ルナです。よろしくお願いします。早速ですけど、お2人共ティンクルタイト

の使い方はわかりますか?」

「うん、一応〜。コメットさんがやるのを見ているから、自分ではほとん

どやったことないけど…」

「私も同じです」

そうネネちゃんが言った直後

「ギャー」という、ラバボーの悲鳴が聴こえたのでビックリした

「ティンクルタイトはバトンから長く伸ばした星力で、このように相手を

グルグル巻きにして捕まえることが出来ます」

「な、何するダボ〜。動けないボ〜」

「こ、これは失礼」

アンタレス長官はバトンを振ってティンクルタイトをすぐに消すと言った。

「ラ、ラバボー。いつの間に。今日はラバピョンと一緒におでかけじゃな

かったの?」

「そ、それは〜途中でケンカしちゃって〜ヒゲノシタに聴いたらここだって言う

から〜」

「ラバボーったら」

「ひめさま。せっかくなので、まずルナがツヨシ様、ネネ様のお相手をさ

せて頂こうかと〜」

「ええ。よろしく」

「では、お2人でかかってきて下さい。手加減は無用ですので」

「わかった。ネネ、いくぞ」

「オオー」

 早速2人はバトンを出し、ティンクルタイトを伸ばしてルナさんに向かったが、

あっと言う間に2人とも縛られてしまった。

「や、ヤラレタ〜」

「苦しい〜早く出して〜」

「これはこれは、どうもすみません。つい、いつもの調子でやってしまっ

て〜」

 ルナさんはすぐにティンクルタイトを引っ込めて言った。

「ルナさん、ツヨ〜イ!じゃあ、今度はわたしが行くね。ベガさん、ルナ

さん、かかってきて。遠慮しなくていいから」

「わかりました。よろしくお願いします」

 2人はそう言うと、バトンを構えてティンクルタイトを出し、わたしに向かっ

て同時に伸ばしてきた。わたしももすぐにティンクルタイトを出し、これらを弾

き飛ばした。しかし、その直後2人はティンクルタイトの先端に作った小さな輪

を高速で回転させながら向かってきた。

トルネードタイト!

 輪はまるでたつまきのように回転し、どこからその先が出て来るのかわからな

かった。2つのトルネードが迫って来る。わたしはとっさにティンクルタイトを

自分を囲むように高速で上下させ、これを受け止めた。次の瞬間、2つのたつまきは消滅した。

何!」「あのトルネードタイトが破られるなんて!

 2人の動きが一瞬止まった。

 わたしはこれを逃さず、すぐにティンクルタイトを一振りして2人を縛り上げ

た。

「コメットさん、すごい〜!」

「すごい、スゴイ〜」

ひめさま、スゴイボー

「ま、参りました〜」

「ありがと。でも2人ともとっても強かったよ」

わたしはティンクルタイトを消して2人に言った。

いえ、いえ、ひめさまに比べればまだまだ〜さすがトライアングル星雲

一の使い手だと思います。ありがとうございました

ありがとうございました

「こちらこそ。今度の本大会、期待しているわ。頑張ってね」

ハイ!

「イヤ〜お見事でしたな。さすがはひめさまです。では今度はこの私がお

相手をいたしましょう。真剣勝負とさせていただきます」

 アンタレス長官はゆっくりとそう言ってティンクルタイトを出すと、身構えた。

部屋の空気が一変する。わたしもティンクルタイトを出して長官の方をじっと見

つめた。

(スキがない。さすが去年、本大会で準決勝に進んだだけのことはあるわ。

メテオさんには負けたけど…。こうなったら、あの構えを崩すしかないわ)

 重苦しい雰囲気の中、数十秒にらみ合った後。わたしは長官に向けてまっすぐ

ティンクルタイトを伸ばした。アンタレス長官はこれをひらりとかわすと、いき

なり大技を放ってきた。

「ブーメランタイト!」

 これは先端をブーメランのような形にして高速で回転させる、アンタレス長官

の必殺技だった。わたしは迫ってくるブーメランを右にかわした。が次の瞬間、

ひめさま!後ろ!

とラバボーが叫ぶ声がした。右後方を見ると、かわしたはずのブーメランがわた

しの後ろにまわ閧アみ、後方に伸びる線でわたしを縛り上げようとしていた。わ

たしは思わず

「ソードタイト!」

と叫んで「星の絆」の先を剣のように堅くして細く長く伸ばし、わたしを囲んで

いるティンクルタイトを断ち切った。

「な、何!!」

長官の顔色が変わった。わたしはすかさず、ティンクルタイトの先端部分をプロ

ペラ状にして高速回転させ、長官の方に向かわせた。

「プロペラタイト!」

 アンタレス長官はあわててこれを防ごうとティンクルタイトを伸ばしたが、逆

に跳ね飛ばされ、あっという間に縛り上げられてしまった。

「く、苦しい〜ひめさま、早くといて下され〜」

「ごめんごめん。チョットむきになっちゃった」

さっきのお返しだボ〜

「ハハハ〜」「ハハハ〜」

「え〜以上でご案内を終わりたいと思います。お2人はこれから私と一緒

に指令部に戻りますので。ひめさまとはここでお別れですな。いや〜先程

は参りました。ひめさまにはかないませんな」

「アンタレス長官、今日はどうもありがとう。長官も今度の本大会、がん

ばってね。わたしも出るから。あ、でもその前にティンクルロボレーシン

グ大会の方も頑張ってね」

「ありがとうございます。今大会こそはパンダ隊長を破って優勝したいと

思います。ツヨシ様。ネネ様。どうぞこちらへ」

「2人をよろしくお願いいたします。ツヨシ君、ネネちゃん、練習が終わ

ったらパンダ隊長と一緒にティンクルロボで星のお城まで来て。隊長には

話してあるわ」

「ハ〜イ!」

 2人はそう言ってティンクルパトカーに乗り込み、手を振った。それに合わせ

てわたしも手を振る。

「では指令部に向けて発進!」

 アンタレス長官の声とともにパトカーは星力をふりまきながら矢のように走り

去っていった後半へ続く

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