新コメットさんの日記　第４章「星国のサーキット」その４

「決勝最終ステージ」

コメットさん：21才。ハモニカ星国の王女。ハモニカ星国に留学している

ツヨシ君、ネネちゃんのお世話をするために星国に滞在中。

剛（ツヨシ）くん：12才。コメットさんがかつて地球でお世話になった

藤吉家の主人、景太郎パパ達のふたごの兄。ハモニカ星国に留学中。サー

キット星で行われた第1000回トライアングル星雲ティンクルロボットレ

ーシング大会決勝第二ステージを２位で通過する。

ツヨシロボ：全長約５０m、全幅約２０m。ツヨシ君の操縦するティンク

ルロボ。ツヨシ君の良きパートナーとなる。

パンダ隊長：65才。（地球年齢41才）ハモニカ星国防衛軍最高司令官で

ティンクルロボット隊隊長。第999回ティンクルロボットレーシング大会

優勝者。第１０００回ティンクルロボットレーシング大会決勝第二ステー

ジを３位で通過。

プラネット王子：２４才。タンバリン星国の王子。第1000回ティンクル

ロボットレーシング大会決勝第二ステージ第９位。

Dr-GIYさん：40才。埼玉県内の大学のロボット工学科助教授。愛機不知

火に乗り、第1000回ティンクルロボットレーシング大会決勝第二ステー

ジ第６位。

アスカさん：２９才。Dr.-GIY助教授の研究室の助手。Dr.-GIYさんの操

縦をアシストする。

青連者さん：28才。都内の会社のエンジニア。決勝第二ステージ４位。

サーシャさん：トランスバール星国で創られたアンドロイド。テレパスリ

ンクにより青連者さんの操縦をアシストする。予知能力によりベオウルフ

の危機を救う。

イマジンカイザ―さん：２１才。都内の大学４年生。第二ステージを１位

で通過。

 

７／８　１０：１８

「それでは先頭の状況をお知らせします。現在これで全てのロボが最終ス

テージに入りました。現在のトップの状況はどうなっているのでしょう

か？お〜っと、パンダ隊長ロボがイマジンカイザーロボに追い付こうとし

ています！すぐ後ろにはツヨシロボ、そのすぐ後ろにはベオウルフとグレ

ート不知火が並んでいます。現在この５機が先頭集団を形成しています。

更に約５秒遅れて、ラファエル・シューマッハー選手、そのすぐ後ろには

ティンクルマジンガーとアイルトン・ゼナ選手のロボが迫っており、更に

５秒差でプラネット王子のロボがいます。この第２集団の後ろは少し開い

ているようです。今、パンダ隊長のロボがトップに立ちました！続いてツ

ヨシロボ、ベオウルフ、グレート不知火に抜かれ、イマジンカイザーロボ、

あっと言う間に５位に転落です！」

（との司会者の声の中、僕達は星の子達がきらめく中、ゴールを目指し

た。コースは予選よりも複雑で、急カーブやクランクなどが幾つもあった

がリタイヤする機はこれまでの所なかった。それからしばらく進むと、ツ

ヨシロボが言った）

「ツヨシ様。間もなく宇宙気流帯に入ります。右から強い流れが来ていま

すのでご注意を」

「ああ。わかってる。出来るだけ流れの弱い所を探して進もう」

僕はそう言って操縦桿を握る手に力を込めた

「了解！」

（ツヨシロボが言った直後、右からの強い力を受け、ロボが少し流された。

が、すぐに体勢を立て直し、気流の弱い所を伝って進むことが出来た）
「あ〜っと！今イマジンカイザーロボを抜いて５位に上がっていたラファ

エル・シューマッハー選手のロボが宇宙気流に流されてリタイヤしまし

た！これによりティンクルマジンガーが第５位、アイルトン・ゼナ選手の

ロボが第６位、プラネット王子のロボが第７位、イマジンカイザーロボが

第８位に上がりました！」

「ツヨシ様、大変です。どうやらベオウルフが星力の暴走を起こした模様

です」

「ホント？」（後ろを振り向きながら僕は言った）

「まだ断定は出来ませんが、ベオウルフから出ている輝きが白く、大きく

かつ不安定になっています」

「そうなんだ」

（ベオウルフから出る星力が次第に広がっていくのを見ながら僕は言った

―）

―わたしは（もしそうだったら、大変）と思い、青連者さんのこころの声

を聴いてみた―

「マスター、大変です！星力の暴走が起こり始めました！もはや私の力だ

けでは抑えきれません」

「何！本当か？」

「ハイ。どうやら先程コースアウトを避けようと宇宙気流の流れに逆らっ

てスピードを上げ過ぎてしまったのが原因のようです」

「もし、このまま暴走が進んだらどうなる？」

「最終的には良くてサーキット星が、最悪ハモニカ星国全体が消滅する危

険があります」

（ベオウルフは珍しく機械的に答えた）

「それは大変だ。何とかしなければ〜でもいったいどうやって…」

「私が何とかやってみます」

（サーシャが僕の言葉をさえぎるように言った）

「大丈夫か？あまり精神力(テレパス)を使い過ぎるといくら君でも危険だぞ」

「わかっています。でもこのままではみんな死んでしまいます。私にやら

せて下さい」

「わかった。みんなで力を合わせて頑張ろう。サーシャ、ベオウルフ、頼

んだぞ」

（そう僕が言うと）

「了解！」「了解！」

（二人の元気な声が返ってきた。そして早速サーシャが目を閉じ、精神を

集中させると周囲がまばゆいばかりの黄色い輝きに包まれた。しかし、間

もなく）

（「青連者さん、私の力だけでは少し足りません。このままでは暴走を止め

ることは出来ないわ」）

（とのサーシャからのテレパスが届いた。「くっそ〜ベオウルフをコント

ロール出来るのは他にいないし〜」）

（まだいるわ）

わたしが青連者さんのこころに呼びかけると、青連者さんは驚いて言った。

「ひ、姫様！」

（わたしはティンクルロボットレーシング大会開催国の王女として全参加

者のティンクルロボのコントロールが出来るのよ。さ、もう時間がないわ。

ササッと始めるから、みんなこころを合わせて）

「了解！」

（わたしはアガペーバトンを出し、スーパーバージョンに変身すると、目

を閉じてこう言った）

「輝きの元である方、あなたの持っている愛力を、そしてみんなの持って

いる力をどうかわたしの愛力に変えて。アガパオー！」

（そしてバトンを振ると、ベオウルフ全体がオレンジ色の輝きに包まれ、

まばゆい程になった。しかし間もなく、輝きが弱まり、消えてしまった）

「サーシャ、大丈夫か？」

「ハイ。青連者さん。ただべオウルフが…」

「ン？こ、これは…」

（周囲の様子を見た青連者さんが思わず声をあげた）

「ありがとうございます！マスター、サーシャさん。おかげで更にパワー

アップすることが出来ました」

（そう言ったベオウルフの『天使の輪』は前よりも強く輝き、一回り大き

くなっていた。そしてその下の機体は鳥のような形に変化していた）
「ベオウルフ、これは新しいモードなのか？」

「ハイ、マスター、『スーパーフライモード』と言ってこれまでの２倍スピ

ードを出すことが出来ます。もちろん星力が暴走することはもうありませ

ん」

「そうか、ではベオウルフ、全速前進！」

「了解！」「了解！」

（「あ〜良かった」それからグングンスピードを増していくベオウルフを見

て安心したわたしは再びツヨシ君のこころの声を聴き始めた）

 

―「スタートから約３１００km地点です。現在先頭はパンダ隊長のロボ

で、そのすぐ後ろにツヨシロボ、更にその少し後ろ、２秒差でグレート不

知火、５秒差でデインクルマジンガーがおり、現在この４機が先頭集団を

形成しています。しか〜シ、約３０秒差、１０位のベオウルフが猛烈な追

い上げを見せています。今、イマジンカイザーロボを抜いて９位に上がり

ました！続いて第８位、ジュピター王子のロボに追い付こうとしています

―今、並びました！あっという間に抜いていきます！続いてトップと２０

秒差の第７位、アラン・ブロスト選手のロボに迫っています！―」

「ツヨシロボ、このままじゃベオウルフに抜かれちゃうね」

（司会者の興奮した声を聴いた後、僕はツヨシロボに言った）

「このままだと約１分後に追い付かれます。でも、大丈夫ですよ。ちょう

ど最後のエリア、アステロイドベルト帯に入りますから。向こうもそんな

にスピードは出せないハズです」

落ち着いた声でツヨシロボが言ったが、

「でもツヨシロボ、あっちはサーシャさんの予知能力があるんだから隕石

を避けるのは簡単だと思うけど〜」

なおも僕は訴えた。

「ご心配なく。一時的にはリードを許すでしょうが、ゴールまでにはきっ

と追いつけます」

「どうして？」

「今にわかりますよ」

ツヨシロボは意味ありげに少しゆっくりと答えた―

　それから１分近くたち、僕達はアステロイドベルト帯に差し掛かろうと

していた。前方には比較的大きな星の子達の「かけら」から出来た大小様々

な隕石からの輝きが広がっており、次第にその一つ一つが大きく見えるよ

うになっていた―

―「先頭は間もなくアステロイドベルトエリアに達しようとしています。

お〜ット、ついにベオウルフがティンクルマジンガーを捕らえて４位にあ

がりました！続いて第３位、グレート不知火のすぐ後ろにせまってきまし

た！今、並びました！グレート不知火、スピードを上げようとしています

が宇宙気流の影響で思うように上がりません、ベオウルフ、一気に前に出

ました！これで第３位です！」

司会者の興奮した声が再び聞こえた。

「ベオウルフ、やっぱり来ちゃったね。ツヨシロボ、どうする？」

「このまま先に行かせましょう。スピードを若干落として下さい」

「え？、ああ、わかった」

（僕がスピードを落とした直後、ベオウルフがわきを通過していった。ち

ょっと悔しく思う）

「ベオウルフ、２位に上がりました！そして今、パンダ隊長ロボと並びま

した！パンダ隊長もスピードを上げる、しか〜し、ついにここでベオウル

フがトップにおどり出ました！アステロイドベルト帯が迫ってくる、お〜

ット、ベオウルフの頭のてっぺんにある『天使の輪』が強く輝き始めまし

た！」

（それを聴いてわたしはすぐに青連者さんのこころの声を聴き始めた）

―「ベオウルフ、本当に大丈夫なのか？」

「マスター、見ていて下さい、今からこの『スーパーフライモード』の真

の力をお目にかけますから」
（目の前に迫った隕石を見て言った僕に対し、ベオウルフは人間のように、

茶目っ気たっぷりに言った。その直後、『天使の輪』がピンク色に輝いて前

に移動し、壁のようになって前からやってくる隕石を破壊し始めた！僕は

驚いて

「こ、これがベオウルフの『真の力』なのか…」としばし唖然とした）

（わたしは少し安心すると再びツヨシ君のこころの声を聴いた）

「ツヨシロボ、これじゃ追いつけないよ。あっちはまっすぐ進めるのに〜

こっちはいちいちよけなきゃいけないし〜」

「大丈夫ですよ。ツヨシ様。さあ、スピードを上げて。出来るだけベオウ

ルフから離されないように。今がパンダ隊長を抜くチャンスですから」
「わかった」

（僕はそう言ってスピードを上げ、パンダ隊長を右からかわした。しか

し、その直後、右から来る隕石に気付いて機体を左の方に寄せながら言っ

た）

「おっとあぶない。隕石にぶつかるところだった。あ〜ベオウルフがどん

どん離れて行っちゃうよ〜、ツヨシロボ、何とかならないの？」

「このままで大丈夫ですよ。きっと追いつけますから」　

（とツヨシロボは落ち着いて答えた）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 「どうして？これだけスピードに差があるのに」　　　　　　　　　　　　　　　　　　 「それは、今のベオウルフを見ればわかりますよ」

「え？」

僕は驚いて思わずそう聞いた。

「だって、スピードを出したり、隕石を破壊したりするのにあんなに星力

を使っているんですから、ゴールするまでに星力が切れて失速するハズで

す。そうなればたやすく追いつけますよ」

「で、でも〜もし、ゴールまでに失速しなかったら？」

「その時はベオウルフが優勝ですよ。だから、我々は『その時』がいつ来

ても良いように信じて待つだけだと思います。ツヨシ様、最後まであきら

めてはいけませんよ」

（ツヨシロボは静かに、でもきっぱりと言った。僕のこころの中で何かが

変わるのを感じた）

「わかった。僕も最後まであきらめないよ。このままベオウルフに出来る

だけついて行こう」
「了解！」

（ツヨシロボの力強い声が響いた）―

 

10:22

（それから約１分後、わたしは青連者さんのこころの声を聴いていた。ベオウル

フはゴールまで後約９００kmの地点まで来ていた）

「青連者さん、大変です！もうすぐベオウルフの星力が切れます！秒速６

kmに減速して、切れたら左に回避して下さい！」

（突然、サーシャの鋭く、かん高い声が聴こえ、一気に緊張が走った）

「了解！」

（僕はすぐにスピードを落としたが、直後に前方にあったピンク色の星力

の壁が消失し、大きな隕石が襲ってきた！僕はサーシャの警告通りとっさ

に機体を左に向け何とか回避することが出来たが、既に機体のコントロー

ルは難しくなっていた）

「青連者さん、これからは私の力でベオウルフを動かしますから、サポー

トに回って下さい」

「わかった。このままゴールまで行けそうか？後続との距離は？」

（次々とやってくる隕石を何とかかわしながら僕は早口で答えた）

「約９００kmです。こちらのスピードは秒速約６km、第２集団は約１５

kmですから、このままでは多分ゴール直前で追い付かれると思います」

「そうか。出来るだけリードを保ってくれ、もし追い付かれたら、そこが

最後の勝負だな。頑張ろう」

（僕は少し気分を落ち着かせて言った）

「ええ。優勝出来るよう、ベストをつくします」

（サーシャの凛とした声が響いたが、星力が切れたせいか、ベオウルフか

らは何の応答もなかった）

「ゴールまで後約６５０kmの地点です。現在先頭はベオウルフ、ここま

で快調に飛ばしてきましたが、つい先程からスピードを大幅にダウンし、

最大１分あった後続との差がグングンつまってきています。果たして逃げ

切れるか？！しかし、このままですと、約１分半後、ゴール手前約１００

kmで追い付かれそうです！」

（ここまで聞いたわたしは後続が気になって、第４位のDr.-GIYさんのこころの

声を聞いてみた）

「アスカ、ベオウルフには追いつけそうか？」

「ハイ！司会者も言っていた通り、こちらの計算でも今から１分２７秒後、

ゴール手前95.8 kmで追いつく見込みです！」

（アスカが嬉しそうに答える）

「よし、追い付いたらパワー全開で一気にスパートする。他のロボの度胆

を抜いてそのままゴールだ！」

「了解！」

（アスカの元気な声を聞きながら俺はふと思った。これまで不知火の持ち

味である強力なパワーを生かす機会があまりなかったが、ようやくチャン

スが巡ってきたな、幸いまだ余力は十分残っているから、これを出し切れ

ば優勝を手にすることが出来る、と…）

「GIYさん！左から隕石が！」

（俺はアスカの声で我に返ると、とっさに機体を右に向け、無事に回避し

た）
「もう〜GIYさん、気をつけて下さいよ、もうすぐベオウルフに追いつけ

るんですから」

「ゴメンゴメン。気をつけるよ」

（俺は苦笑しながらアスカに答えた。ベオウルフとの差は３０秒程につま

っていた）…

（ここでわたしは再びツヨシくんのこころの声を聞いてみた）

（ゴールまで４００ kmを切った。この付近は比較的隕石が少ないがそれ

でも３〜４秒おきに襲ってくるので油断は出来ない。一方、前を行くベオ

ウルフとの差は確実につまっていき、既に１５秒を切っていた）

「ツヨシロボ、ベオウルフとの差はどの位？」

「約１２秒です。このまま進むと、後19.5秒で追い付きます。どうされま

すか？」

「え？もちろんそのまま一気に抜いて行こうと思うけど」

「実は追い抜いてすぐ、ゴール手前６０〜８０ km付近に隕石の密度の濃

い部分があるんですよ。ですから、私としてはそこを避けてスパートを少

し遅らせた方がいいと思うんですが〜」

「わかった。そうしよう。でもパンダ隊長やグレート不知火が先にスパー

トしたらどうしよう」

「だいじょうぶだと思いますよ。おそらくどちらかが先にスパートするで

しょうが、下手にスパートしてもアステロイドベルトに掴まるだけだと思

います。それに２機の動きは多分ベオウルフの動きを観ていればある程度

わかるかと」

「とにかく、追い付いてからが最後の勝負だね」

（と僕が言うと、）

「ええ。ツヨシ様」

（ツヨシロボはややゆっくりと、力強く答えた）…
（「いよいよ大詰めか〜」わたしは再びDr.-GIYさんのこころの声を聴いた）

…「さあ、ゴールまで２００kmを切りました！間もなく先頭のベオウル

フに第２位、ツヨシロボが追い付こうとしています。そしてそのすぐ後ろ

にはグレート不知火とパンダ隊長のロボがいます！」

（との司会者のやや興奮した声が響いた。ベオウルフの機体がどんどん大

きくなってくる。さすがに少し緊張する。ツヨシロボがベオウルフになら

んだ瞬間、俺はパワーを全開にした。あっという間にトップに躍り出た。

パンダ隊長も一瞬遅れてスパートを始めたが、ついてはこれなかった。

「やった！これで勝てる」そう思った。が、次の瞬間、）

「GIYさん、下！」

（アスカの声で目が覚めた。いつの間にか隕石の密集地帯に突入してしま

ったのだ！左下から大きな隕石が襲ってくる！「しまった！！」あわてて

機体を大きく右に迂回させ、何とかこれを回避したが、パンダ隊長ロボと

接触しそうになった。ヒヤっとしたが、向こうが回避してくれ、ほっとし

た。しかし、その間にスパートしたツヨシロボに抜かれ、トップでのゴー

ルを逃したばかりか、ベオウルフにも抜かれて第３位に甘んじた）

「くッソ〜」

（優勝が手の届く所にあったのに、それが手の先からこぼれてしまったこ

とを思い知り、つくづくこのレースの難しさを味わった）
「でもGIYさん、元気出して下さいよ。決勝だけで半分以上がリタイヤす

る中、３位でゴール出来たんだし、それにまだ輝きポイントの結果が出て

いないんだから、まだ逆転出来る可能性だってないわけじゃないんだか

ら」

（と慰めるようにアスカが言った。不知火はちょうどゴール近くのスタジ

アムに着陸しようとしていた）

「あ〜そうだったな」

（苦笑いしながら俺は答えた。ただ同時にこの展開では逆転はほぼ不可能

だということも覚悟していた。確かなのは、もしアスカのあの一言がなけ

れば不知火はゴール直前でリタイヤしていたに違いない、ということだっ

た。不知火がゆっくりと着地した時、自然と次の言葉が口をついた）

「アスカ、ご苦労さん、どうもありがとう」

「え？…あ、いや、どうも、おつかれさまでした〜☆」

（アスカは最初はちょっと驚いた様子だったが、それから何ともいえない

「いい笑顔」になった。俺はこの笑顔を観るのがたまらなく好きだった…）

（「GIYさん…」ここでわたしは１位でゴールしたツヨシ君のこころの声を聴こう

としたが、足が勝手に既に着地したツヨシロボの方に向かっていた。

「ま、いっか…」わたしはそのままロボの足下に向かった…）

「今、１６位のニック料理ビトがトップから約５分３０秒遅れの２７分

５５秒７５５でゴール、これで全完走者、１６名がゴールしました！ここ

で改めてゴールした順位をお知らせします。第１位、ツヨシ選手、合計タ

イム２２分２７秒２４２、第２位、青連者選手。合計タイム２２分３１秒

７８４、第３位、Dr-GIY選手、合計タイム２２分３１秒８８４、第４位、

パンダ隊長、合計タイム２２分３２秒１８０、第５位、兜光二選手、合計

タイム２２分５０秒３３５、第６位、アイルトン・ゼナ選手、合計タイム

２３分１１秒１９４、第７位、プラネット王子、合計タイム２３分１２秒

１８２、第８位、イマジンカイザー選手、合計タイム２３分１６秒８４７

…」

　ここまで司会者が言った時、わたしはロボから降りてくるツヨシ君を見つけて

手を振った。

「ツヨシ君、おめでとう。優勝だよ、スゴイスゴイ〜」

「ありがとう、コメットさん。でもまだ輝きポイントの結果が出てないか

ら優勝かどうかはわからないよ」

「そうだね。でもわたしが見た限り、輝きポイントでも１位に決まってる

よ。開催国王女のわたしが言うんだから、だいじょうぶ」

　わたしはちょっとイタズラっぽく笑いながらそう答えた。大歓声の中、

他の参加者のロボが次々と降りてくる。

「ひめ様〜」
「青連者さん、サーシャさん、おめでとう。１位にはなれなかったけど、

素晴らしいチームワークを見せてもらったわ。一時はどうなるかと思っ

たけれど」

「こうして無事ゴール出来たのもひめ様のおかげです。ありがとうござい

ました」

「いえ、あれはあなたがた『３人』の力のおかげよ。わたしはほんの少しお手伝いしただけだわ。それより、ベオウルフはもうだいじょうぶ？」

 

「はい。コメット様。ゴールした直後から機能が回復し始め、今ではほぼ

元に戻っているようです」

　一瞬の間の後、サーシャさんが青連者さんより早く答えた。

「そう、それは良かった。あ、Dr-GIYさんだ」

わたしはグレート不知火から降りてこちらに向かってくる２人に気付いて手を振

った。

「ひめさま、残念ながらトップでゴール出来ませんでした。後少しだったのです

が」

「そうだね。でも２人ともとってもカッコ良かったよ」

とわたしが言った直後、パンダ隊長がぬうっと現れて言った。

「みなさま、楽しんで頂けましたかな？」

「もちろん！」

ツヨシ君を始めみんなが答えた。

「パンダ隊長、ご苦労様。連覇は出来なかったみたいだけど、よくやって

くれたわ。ありがとう」とわたしが言うと、

「いえいえ、姫様こそ、この大会の影の功労者ですよ。今回は特にベオウ

ルフの危機を救って頂いて〜。もし姫様のお力がなければーどうなってい

たことやら…おっと、そろそろ輝きポイントの審査結果が出ますぞ」

とパンダ隊長が答えた。その直後

「輝きポイントの審査結果が出ましたので、それではこれから総合順位を発表します」との司会者の声があった。とたんに会場が静まり返った。

「では第一位、輝きポイント５０、タイムポイント５０のツヨシ選手で

す！」

 

「やった〜！！」ツヨシ君の声と共に会場は大歓声に包まれた。

「以下、第２位、合計ポイント９８の青連者選手、第３位、輝きポイント

４８、タイムポイント４７のパンダ隊長、第４位、輝きポイント４７、タ

イムポイント４８のDr.-GIY選手、なお、３位と４位、この後の５位と６

位は合計ポイントは同じですが、規定により第二ステージの順位が上の選

手が上位となっています。５位、輝きポイント４4、タイムポイント４6

の兜光二選手、６位、輝きポイント、タイムポイント共に４５のアイルト

ン・ゼナ選手、第７位、輝きポイント４６、タイムポイント４３のイマジ

ンカイザー選手、第８位、輝きポイント４３、タイムポイント４４のプラ

ネット王子、ここまでが入賞者です。なお９位以下はメモリーボールが示

しているように、タイムポイントの順となっています。５分後に表彰式を

行いますので入賞者はステージまでお集り下さい」

と司会者は言って一旦退場した。

「ひめ様！」

「あ、イマジンカイザーさん、入賞おめでとう。最初はどうなるかと思っ

たけれど、だんだん良くなって〜第２ステージはすごくカッコ良かった

よ」

　わたしは近付いてくるイマジンカイザーさんに答えた。

「ありがとうございます。何度も助けて頂いて〜」

「え、わたし何かしたっけ？ま。いっか〜。初めての参加なのに入賞出来

たんだもの☆」

　そうわたしが言うと、イマジンカイザーさんはちょっとはずかしそうな、

でもとっても嬉しそうな顔をした。その輝きはここに来たばかりの、ちょ

っと自信なさそうな顔からのものとは明らかに違っていることに、わたしは

気付いていた。

（イマジンカイザーさん、成長したんだな〜）わたしがもの想いにふけっている

と

「おっといけない、もうすぐ表彰式が始まってしまう、ひめ様また後で」

との声を残してイマジンカイザーさんはステージに向かっていった。直後

に司会者が再び登場して言った。

「それではこれから表彰式を始めます。まず、４〜８位までの入賞者とロ

ボを紹介します。まず、第８位、プラネット王子〜！」

　司会者の声と同時にタンバリン星国からの観戦者を中心に大きな歓声が

起こり、メモリーボールにはプラネット王子とスポットライトを浴びたそ

のロボが映し出された。

「入賞者には大会の記録が書かれたカードがパンダ隊長から渡されます。

おめでとうございました！続いて第７位、イマジンカイザー選手！ン？あ、

今来ました！」

　ライトの中にイマジンカイザーさんが浮かび上がり、ちょっと恥ずかし

そうに、でもとても嬉しそうにカードをもらっていた。

（姫様、姫様、そろそろこちらに来て下され）

（あ、いけな〜い、忘れてた�｡パンダ隊長、ちょっと待っててね）

　パンダ隊長のこころの声でわたしは３位以上の入賞者のプレゼンターに

なっていたことを思い出し、急いでメダルなど渡すものを星力で出した後、

ステージに向かった。ステージではちょうど第４位のDr.-GIYさんとアス

カさんがカードをもらっている所だった。わたしは胸をなでおろした。

「続きまして、いよいよベスト３です。まず、第３位、パンダ隊長〜！！」

パンダ隊長が両手を上げてアピールすると、スゴイ歓声が沸き起こった。

わたしは手のひら程の大きさの、ピンク色に輝くだ円形のメダルを隊長の

首にかけた。隊長も嬉しそうだった。

「次に、第２位、青連者選手とアシスタントのサーシャ選手〜！！！ロボ

はもちろんベオウルフです〜」

「３人」の姿が浮かびあがると、ものスゴイ歓声に包まれた。青連者さん

達はこれに手をふって応えていた。わたしは銀色に輝くメダルを２人の首

にかけた。サーシャさんは泣いているようにも見えたので、声をかけよう

と想ったが、わたしも胸がいっぱいで声にならなかった。代わりに

チラっ☆と彼女の瞳を見た。それだけでもう、十分だった…

 

「そして、優勝は、ツヨシ選手！！ア〜〜ンド、ツヨシロボ〜

！！」

　会場は先程より更に大きな歓声に包まれ、しばらく続いた。ツヨシ君は

表賞台のてっぺんで会場内を見回しながら、これに手を振って応えていた。

その背中がまた少し大きくなったような気がした。

「おめでとう」

　わたしは金色に輝くメダルをツヨシ君の首にかけ、額に軽くキスをした。

ツヨシ君はちょっと驚いた様子だったが、嬉しそうだった。

「あ、気にしなくていいのよ。毎回開催国の王女が優勝者にする習慣にな

っているだけだから」

とわたしが言うと、ツヨシ君はちょっと恥ずかしそうに

「そうなんだ〜コメットさん、ありがとう」

と答えた。

「それではここで、優勝したツヨシ選手に話を聞いてみたいと思います。

今、どんな気持ちですか」

「自分の夢をかなえられて、とても嬉しいです。特にこのツヨシロボと出

会えて、ともだちとなることが出来たことは、優勝したこと以上に嬉しく

思います」

とツヨシ君は元気に答えてくれた。わたしもとても嬉しく思った。

「あなたは、星のお城で行われた歓迎レセプションで『例えばどんな夢で

すか？』と私が聞いた時何と答えたか、覚えていますか？」

「ハイ。『大きなロボットを操縦して、宇宙（ここ）を自由に飛び回ること

です』と言いました」

「そうでしたね。それでは、これからその夢を叶えて頂くために、姫様か

ら優勝賞品をプレゼントして頂きましょう！優勝賞品は、２４時間、トラ

イアングル星雲内を自由に飛ぶことの出来るだけの星力です！姫様、よろ

しくお願いします！」

との司会者の声の後、わたしはティンクルバトンを振って星力をツヨシ
ロボに送った。ロボがピンク色に輝くと、歓声が更に大きくなった。

「それではこれで表彰式を終わります。最後に優勝者のウイニングランが

あります。ツヨシ選手、準備が出来次第、発進して下さい」

「じゃあ、コメットさん、行ってくるよ。どうもありがとう」

「楽しんできてね.-あ、そうだ、パンダ隊長が言ってたわ。『ツヨシ様。お

めでとうございます。見事優勝されましたので、約束通り今から２４時間

以内はバトルモードでも飛行出来ます』って」

そうわたしが言うとツヨシ君は

「ヤッタ〜」

と嬉しそうに言ってツヨシロボに乗り込んだ。

（「ツヨシロボ、発進！」）

大歓声の中、ツヨシ君の声と共にツヨシロボは広い宇宙(そら)に一直線に飛び出

していった…その直後、わたしはふと沙也加ママの輝きを感じた。

「とてもあたたかい、でもちょっとさびしいような輝き」だった〜わたし

の胸がキュン、となった…

第５章「星国のファッションショー」に続く…