新コメットさんの日記　第５章「星国のファッションショー」プロローグ

前半

主な登場人物

コメットさん：21才（２００９年７月１４日現在）。地球から４０００万

光年離れた３重銀河（トライアングル星雲）の一つ、ハモニカ星国（直径

７万５千光年）の王女。２００１年４月に地球を初めて訪れ、ツヨシ君、

ネネちゃんの家に１０ケ月間お世話になる。２００９年３月に保育士の専

門学校を卒業し、８月の試験に備えている。ハモニカ星国に留学している

ツヨシ君、ネネちゃんのお世話をするために星国に滞在中。

寧々（ネネ）ちゃん：12才。コメットさんがかつて地球でお世話になった

藤吉家の主人、景太郎パパ達のふたごの妹。ハモニカ星国に留学中。自分

の夢をかなえるために第７４０回トライアングル星雲ファッションフェス

タ：ウエディングドレスデザインコンテスト予選にハモニカ星国代表モデ

ルとして参加する。

剛（ツヨシ）くん：12才。同じくふたごの兄。同じくハモニカ星国に留学

中。

モモさん：３０才。ハモニカ星国のトップファッションデザイナーで５人

ものヌイビトを専属とすることが出来るデザイナーレベル５にランクされ

ている。ハモニカ星国王家のデザインも担当する。ネネちゃんの担当デザ

イナーとなる。アロマテラピストでもある。

メテオさん：２１才。トライアングル星雲の中で最も小さい（直径５万光

年）カスタネット星国の王女。２００１年４月にコメットさんを追って地

球に降り立つ。１５歳で歌手デビュー。ウエディングドレスデザインコン

テスト予選カスタネット星国代表モデル。
ミラさん：２０才。トライアングル星雲最大の（直径１０万光年。銀河系

と同じ）タンバリン星国の王子の主任侍女。ウエディングドレスデザイン

コンテストタンバリン星国代表モデル。

ヒトミさん：２６才（２００９年７月１４日現在）。カスタネット星国の超

人気カリスマデザイナーでカスタネット星国王家専属ティンクルファッシ

ョンデザイナー。デザイナーレベルはトライアングル星雲でも一人しかい

ない６。生け花の師範でもある。

リカさん：２６才（２００９年７月１４日現在）。タンバリン星国のトップ

ファッションデザイナーでミラさんの担当デザイナーとなる。デザイナー

レベルは５。

パピルスさん：リカさん専属のタンバリン星国のヌイビト（マルチヌイビ

ト）。星使いとほぼ同じ大きさである。

 

２００９　７／１４　１０：００

「ツヨシ君、ネネちゃん、おはよう〜。今日はハモニカ星国のファッショ

ンについて勉強するよ」

　わたしは自分の部屋で２人に言った。その時

「ひめさま。おはようございます。モモです。少し遅くなりましたが、よ

ろしいでしょうか？」

との声がした。

「待っていたわ。どうぞ」

　そうわたしが言うと、ドアが開いて、美しい女性が入ってきた。右手に

はティンクルペンを持ち、左手には花束を持っていた。モモさんが近づく

につれてここち良い香りが鼻をくすぐる。

「ああ〜いい香り�｡」

「ツヨシさん、ネネさん、初めまして。今日からネネさんの担当デザイナ

ーをさせて頂くことになったモモです。よろしくお願いします。それから

これはローズマリーというハーブの香りです。頭をすっきりさせ、こころ

を落ち着かせる効果があるんですよ」

とモモさんは首の回りのハーブを見せながら、とてもあたたかく、優しい

声で言った。

「モモさん、初めまして。ネネです。お会い出来るのをとても楽しみにし

てました。こちらこそどうぞよろしくお願いいたします」

「ツヨシです。今日はよろしくお願いします」

「ええ。ではひめさま、早速始めさせて頂きたいのですが〜」

「そうだね。ブティックにはすぐ行くの？」

「ハイ。最初に少しお話させて頂いた後、すぐに、と思っています。やは

り現場を直接ご覧になって頂くのが一番だと思いますので」

「わかったわ。ではお願い」

「それではまず、ヌイビトさん達、出てきて」

とモモさんが言うと、胸の中心のダイヤが黄色、周りが金色のティンクル

スターから５人ものヌイビトさん達が次々と出てきて、

「ヌイヌイしますですの〜」と言いながらモモさんの周りを飛び回った。

　ツヨシ君とネネちゃんはちょっと驚いた様子だった。

「ほらほら、みんな、ひめさま達にごあいさつして」

「ハ〜イ」

　ヌイビト達はモモさんのことばでようやく飛び回るのをやめ、１列に並

んだ。

「ねえ、コメットさん、２人多いよ」「ほんとだ、黄色と白もいるよ」

「そうだね」わたしがそう言った直後、一番左にいるヌイビトが

「ツヨシ様、ネネ様、初めまして。赤ヌイビトのノアです。全体のまとめ

役をしています」

と言った。

「そうなんだ」

「青ヌイビトのハートです。主にドレスの中心部分を担当しています」

「緑ヌイビトのループです。主にドレスの周りの部分を担当しています」

「黄色ヌイビトのフラワーです。ブーケを担当しています」

「白ヌイビトのマフラーです。ブーケ以外の小物を担当しています」

続いて４人のヌイビト達が自己紹介した。

「ネネです。よろしくお願いします」

「ツヨシです。よろしく。でも何で５人もいるの？」

「私達デザイナーにはその輝きによって１〜５までの『デザイナーレベ

ル』があって、ここ、ハモニカ星国ではレベルによって専属に出来るヌイ

ビトの数が違うの。私はデザイナーレベルが５なので、５人いるのよ」

「そうなんだ」

「１から３までは試験があって、それにパスすれば、認定されるんだけど、

４以上は主にデザイナーとしての実績が評価されるの。もちろん今度のコ

ンテストの結果も評価されるわ」

「フ〜ン。じゃあ、私も頑張らなくっちゃ」

「ありがとう。でもモデルさんはそんなに頑張らなくてもいいのよ。自分

の持っている輝きをドレスを着ることによって自然に外に出せればいいの

よ。そのためにはデザイナーやヌイビトがあなたの事を十分知っている必

要があるわ。コンテストには後２週間あるから、その間にあなたに色々聴

いたり、一緒に何かをしたりすることになると思うので、よろしくね☆」

モモさんはネネちゃんの目をまっすぐ見つめながら優しく言った。

「ええ。私もモモさんとたくさんお話ししたいし」

「まあ☆」

「ハハハ〜」「フフフ〜☆」

　２人の笑い声がこだました。周りの空気がいっそう華やいだ。

「では〜そろそろまいりましょうか。ひめさまもごいっしょされます

か？」

「もちろん。こんな機会、めったにないし」

「では、私の部屋にまいりましょう。ブティックへの星のトンネルの入り

口がありますので」

「へ〜星のトンネルで行けちゃうんだ。ブティックって近いの？」

「この真下のエト�潤[ルの中心街にあるから、そんなに遠くはないと思

うわ」

　モモさんはそう言うと部屋を出た。わたしたちも後に続いた。エレベー

ターで３階下に向かい、モモさんの部屋に入った。ここも心地良い香りで

いっぱいだった、

「ワ〜〜いい香り〜☆」

　ネネちゃんは目を輝かせて部屋の中を見回した。ピンク色を基調とした

部屋にはいくつかのドレスやデザイン帳、ハーブと思われる植物などがあ

った。

「モモさん、あのピンク色に光っている植物は何？」

　ネネちゃんは部屋の奥にあるデスクの上でピンク色に輝く花をつけたか

わいらしい植物を見つけて言った。

「ああ、それは『ティンクル・モモ』って言うのよ。私の大のお気に入り

なの」

「これって、何だかモモさんに似てますね。…って、まさか〜」

「ええ、そうよ。私の母もこの花が大好きだもの」

「え、モモさん、何でわかるんですか？私まだ言ってないのに〜」

　ネネちゃんは少し驚いたように言ってモモさんを見た。

「わかるわよ。あなたもこの花が好きになったんでしょ？私もそんなあな

たが大好き☆」

　モモさんはちょっとイタズラぽく言って微笑んだ。

「モモさん�｡」ネネちゃんは思わずモモさんに抱きついた。

　二人の間がどんどん近くなっている…まるで魔法みたい〜いや違った、

これは多分モモさんが無意識で使っている「愛力」に違いない―などとわ

たしが思っていると、

「ひめさま、ブティックへの星のトンネルの入り口はこちらです」

　デスクのわきの大きな鏡の前に立っているモモさんの声が聞こえた。

「あ、ごめん」

　わたしがすぐにそこに行くと、モモさんはティンクルペンを振って星の

トンネルを出現させ、中に入った。わたし達も次々と中に入る。すぐに周

りが宇宙空間になった。一方、眼下にはピンク色のハモニカ星が見え、次

第に大きくなってきていた。

「キレイ〜」

「キレイでしょ〜ホントはまずあなたたちにこれを観てもらいたかった

の☆」

　微笑みながらモモさんが言った。周りには様々な星の子達が数えきれな

い程浮かんでいた。

「あ、何か見えてきた。モモさん、あれがエトワール？」

「ええ。もう少しすればはっきりすると思うけれど、多分あれは中心にあ

るエトワール城だと思うわ。私のブティックはそこから歩いて５分位の所

なの」

「へ〜そうなんだ」

　ネネちゃんが感心したように言った後、しばらくしてわたしたちはモモ
さんのブティックに降り立った。

「ワ〜キレイ�｡私もこういうの、着てみたい�｡」

　ネネちゃんはショーウインドー内のピンクと純白のドレスに思わず駆け

寄りながら言った。

「ええ。もちろん後で色々着てもわうわよ。さあ、どうぞ」

　モモさんはわたし達を中に案内した。

「イイ香り〜あ、これはローズマリーね」

「ええ。でもよくわかったわね」

「だって、モモさんが入って来た時と同じ香りがするんですもの」

「確かにそうね。でも１度かいだだけでわかるなんて、アロマテラピスト

の才能あるかも」

「ホント？うれしい�｡」

「もう少し大きくならないと、わからないと思うけど。さあ、ここが私の

アトリエよ。これからどうやってドレスを創っていくか、あなたをモデル

にして説明したいと思うわ」

　モモさんは更に言葉を続けた。

「まず、モデルさんがどんなドレスを希望しているか、じっくり聴くのよ。

どんなドレスがいい？」

「エ〜〜と、かわいくって、お姫さまみたいな白いドレスがいい�｡」

　ネネちゃんはちょっとはずかしそうにしながら答えた。

「そう。じゃあ、プリンセスラインのドレスね。そではどうする？長袖？
半袖？それともノースリーブ？」

「ン〜〜と、長袖にしようかな、でもやっぱりコメットさんが着ているみ

たいな半袖がいい�｡」

　とネネちゃんは目をキラキラさせながらうっとりするように言った。と

ってもカワイかった。

「あれはティンクル・スリーブって言うのよ。じゃあ、ブーケはどんなも

のがいい？」　　

「ン〜〜。よくわかんない。あ、でも、ティンクル・モモは入れて」

「ええ、もちろん。それからベールはどう？どの位の長さがいい？」

「短い方がいいな」

「じゃあ、上半身だけの長さにするね。あ、グローブはどうする？半袖だ

と、普通はひじかその上位まで長くするんだけど」

「じゃあ、ひじより少し上にして」

「じゃあ、ロンググローブね。モデルさんの希望がわかったら、次にこの

ティンクル・ペンであのデザイン帳に絵を描くの」

「どうやって？」

「これからやるから、よく観ててね」

　モモさんは金色のペン先を下にして、ティンクル・ペンを持った手を上

げると、

「幾千億の星の子達。キラ星の輝きを。そしてあまたの力を。どうか私の

星力に変えて。エトワール！」

と言ってデスクの上にあるデザイン帳に向けてペンを投げ下ろした。する

と、ペンはピンク色の輝きに包まれながらデザイン帳に向かっていき、何

も描かれていないページを開くと、ドレスを着たネネちゃんの絵を描き始

めた！ネネちゃんはもちろん、ツヨシ君も目を丸くしてこの様子を見つめ

ていた。およそ３分程で、絵が出来上がった。

「モモさん、スゴイ〜〜！」

「ペンが勝手に動いた〜！」

「フフフ、これは想いをこめるとデザイナーの頭の中に浮かんだイメージ

を描くことが出来るの。腕の見せ所かもね。さあ、次はこのイラストをヌ

イビトさん達に観てもらってドレスを創ってもらうのよ。ネネちゃん、こ

んな感じでいい？」

　モモさんはほほ笑みながらネネちゃんに言った。

「ええ、もちろん！早く着てみたい�｡」

「じゃあ、ヌイビトさん達、お願い！」

「ハイ、わかりました。ヌイヌイしますですの〜」

　ヌイビトさん達はそう言って、しばらくイラストの周囲を飛び回った後、

今度はネネちゃんの周りを飛び回った。たちまちネネちゃんは星力の帯に

包まれた。そしてその輝きが消えると、純白のドレスに包まれたネネちゃ

んがいた。

「うわ〜〜〜ステキ�｡�｡�｡！！」

「ネネちゃん、ステキだよ�｡」

　大きな鏡の前に立ってとても嬉しそうに色んなポーズをとっているネネ

ちゃんを見ながらわたしは言った。

「なかなか似合っているわね。で、この後は今の手順を繰り返して少しず

つ『理想のドレス』に近づけていくのよ」

「『理想のドレス』って？」

「なかなか難しいわね。人によって違うと思うもの。でも私は『その人が

一番輝いて見えるドレス』だと思うわ。私達はドレスを着る人の、その人

らしい輝きを最大限に引き出すお手伝いをしてるの」

「ねえ、モモさん、このドレス、もう少し着てていい？」
「ええ、いいわよ。〜ン？ツヨシ君、どうかした？あ、わかった、『妹だけ

ドレスを着てズルイ』って思っているんでしょ？だいじょうぶ、ちゃんと

あなたのもあるから」

　モモさんはちょっといたずらっぽく笑いながらツヨシ君に言うと、ティ

ンクルペンをふった。するとツヨシ君が星力の輝きに包まれ、カッコいい

タキシード姿になっていた。

「うわ〜スゴイ！ありがとう。でも、何にも言ってなかったのに、何でわ

かるの？」

「だって、そう顔に書いてあるんだもの」

「そっか、ハハハ〜」「ハハハ〜」「あはっ」「フフフ〜」

みんなの笑い声がこだました。

「モモさん、自分でもドレスが作れちゃうんだ、スゴイね」

「ある程度はね。でも、やっぱりヌイビトさんにしてもらった方がもっと

上手く出来るわね。でも、このヌイビトさん達はハモニカ星国にしかいな

いのよ」

「へエ〜じゃあ、他の星国ではどうなの？」

「カスタネット星国ではね、デザイナーが一人でやってしまうのよ」

「え？」

　入り口の方からモモさんの声をさえぎるように若い女性の声が聞こえ、

美しい女性がメテオさんと一緒に入ってきた。

「ヒトミ！メテオさま。どうしてここに？」モモさんも少し驚いたように

言う。

「あなたがここに呼んだんじゃないの。この後私のアトリエに案内してく

れって」

「そうだけど、思ったよりずっと早かったものだから…あ、ネネちゃん、

こちらがカスタネット星国王家専属デザイナーのヒトミさん。私の友達で

もあるのよ」

「初めまして。ネネです。よろしくお願いします」

「私がカスタネット星国唯一のデザイナーレベル６のティンクルデザイナ

ー、ヒトミよ。早速だけど、あなたのこのドレス、似合っていないわね。

こんなドレスでは、とても今度のコンテストでこのワタクシがデザインす

るドレスに勝てっこないわ。ねえ、メテオ様」

「ええ、カスタネット星国最高のモデルのこのワタクシと、カスタネット

星国、いやトライアングル星雲最高のデザイナーのヒトミが組めば、優勝

するに決まってますわったらますわ！」

　メテオさんは自信たっぷりに言った。

「メ、メテオさん…」

「ひど〜い、私、このドレス、気にいってるのに、どうして？」

　ネネちゃんはちょっと泣きそうになりながらヒトミさんに言った。彼女

の言葉にショックを受けたようだっだ。

「だって、ベールは短すぎるし、グローブは長すぎるし、そでももっと長

い方がいいと思うもの。これじゃあ、あなたの輝きが全然見えてこない

もの。だから、こんなデザイン、デザイナーレベル６のティンクルデザイ

ナーとして許せないわ。モモ、あなたならわかると思うけど」

　ヒトミさんはそう言ってモモさんをちらっと見た。ネネちゃんも思わず

モモさんを見つめたが、モモさんは黙ったままだった。

「あ、そうそう、あなた達、うちのアトリエに行くんだったわね。どうす

る？私はどっちでもいいけど」

「私、行かない。こんな気持ちじゃ、行けないもん」

「ぼくは行ってもいいけど」

「ネネちゃん、本当にいいの？」

　モモさんはネネちゃんが首を縦に振ったのを確認すると、ちょっと申し

訳なさそうにヒトミさんに言った。

「ヒトミ、悪いけど、先にリカの所に行くわ。後から行くかもしれないか

ら、先に戻っててくれない？」

「あなたがそう言うなら、わかったわ。メテオ様、まいりましょう」

「ええ、じゃあ、コメット、またね」

「メテオさん、来てくれてありがとう。またね」

　２人が風のように去っていった後、モモさんがつぶやいた。

「ネネちゃん、ごめんね。でも、ヒトミが言ったことは本当だと思うわ。

あの人はプライドは高いけど、本当は悪い人じゃないわ。ただ自分の思っ

たことをストレートに言っただけ。悔しいけれど、『良く観てる。さすがデ

ザイナーレベル６にランクされているだけのことはあるわ』って思った

わ」

「モモさん…」

そうネネちゃんが言った時、ムークさんが入ってきて言った。

「ネネ様。ヒトミ様からのご伝言をお知らせします」

「え？何？」

「『あなたはひとつだけいい選択をしたわ。ブーケのピンク色の花、―確か

ティンクル・モモだったわね―あれは今のあなたにピッタリだと思うわ』

以上です。ではまた〜」

「ヒトミさん…モモさん、私、ヒトミさんに謝らなきゃ」

　そう話すネネちゃんの顔は明らかにそれまでと違っていた。
「ええ、でも、さっきリカにここに来てくれるように話したから、リカの

所に行った後、ヒトミの所に行けばいいと思うわ。いい？」

「はい。どうもありがとう」

「じゃあ、決まりね。あ、リカが来たみたい。どうぞ〜」

「こんにちは。モモ。あ、あなたがネネちゃんね。初めまして、私がタン

バリン星国代表デザイナーのリカよ。これから私のアトリエに来てもらう

けれど、よろしくね」

　ヒトミさんと同じくらいの年で、ティンクル・ペンを持った美しい女性

がミラさんと一緒に入ってきて言った。
「ネネです。よろしくお願いします」

「ツヨシです。よろしくお願いします」

「あ、ミラさん、久しぶり。今日はよろしくね」

「コメット様。こちらこそ。では早速まいりましょうか」

「あ、モモさん、私まだこのドレス着たままだった。元に戻してくれる？」

「ええ」

　モモさんはそう言ってティンクル・ペンをふると、ネネちゃんはたちま

ち元の姿に戻った。

「じゃあみんな、行きましょうか、リカ、お願い」

「わかってるわよ。みんなこっちへ来てね」

　わたし達はリカさんについて外に出た―

 

１１：００

　わたし達はタンバリン星国にあるリカさんのブティックに着いた。ブティ

ックは王宮から少し離れた所にあった。

「ここが私のブティックよ。さあ、中へどうぞ」

「おじゃましま〜す」「おじゃまします」

　２人がそう言いながら中に入ると、若い男性が出て来て「こんちには」

と言ったのでちょっと驚いた。

「あ、こちらが私の専属のマルチヌイビトのパピルスさん。タンバリン星

国ではデザイナーレベルにかかわりなく、一人のデザイナーに対してヌイ

ビトは一人しかいないのよ」

「ネネです。よろしくお願いします」「ツヨシです。よろしくお願いしま

す」

と２人が相ついで言うと、

「ツヨシさん、ネネさん、初めまして。パピルスです。リカ様のアシスタ

ントをしています」

との答があった。

「大きいね〜コメットさん、同じヌイビトさんでも随分違うんだね。びっ

くりしちゃった」

「そうだね」

「キレイ〜。リカさん、あのドレス、ステキですね」

　とネネちゃんは部屋の一角にある純白のウエディングドレスを見て言っ

た。

「ありがと。じゃあ、これからタンバリン星国でのデザインの仕方につい

て説明するね」

「お願いします」

「まず、マルチヌイビトさんにどんなデザインがいいか話すの。ネネちゃ

ん、どんなのがいい？」

「ン〜と、あのドレスみたいなのがいいです」

「わかりました。ではベールはどのようなものが？」

とパピルスさんが尋ねた。

「今度は床に届く位の長さのものがいいわ」

「グローブはどの位の長さにしますか？」

「ひじ位にして下さい」

「わかりました。ブーケはどうされますか？」

「ピンク色と黄色の花を入れて下さい」

「わかりました。ではこんな感じでいかがでしょう。ステラ！」

　パピルスさんがそう言ってティンクル・ペンを振ると、ペンから黄色い

輝きが出て、空中にウエディングドレスを着たネネちゃんのイラストが浮

かびあがった。

「スゴ〜イ！」

「これはティンクル・ラフデザインと呼んでいるのよ。キレイでしょ。で

も一定時間がたつと消えちゃうけど。だからその前に、私がこれを元にこ

のデザインノートに描くのよ。こうやって。幾千億の星の子達。キラ星の

輝きを。そしてあまたの力を。どうか私の星力に変えて。ステラ！」

　リカさんがそう言ってティンクル・ペンを床に置いたノートに振り下ろ

すと、ペンはまっすぐノートに向かっていき、モモさんがしたようにドレ

ス姿のネネちゃんの絵を描き始めた。

「ウワ〜キレ〜イ！」

約２分程で出来上がったイラストを見てネネちゃんは言った。

「そう。じゃあ、今度はこれを元に実際のドレスを創るのよ。タンバリン

星国ではデザイナーとヌイビトが協力して一緒にドレスを創るのよ。パピ

ルスさん、用意はいい？」

「はい！」

「幾千億の星の子達。キラ星の輝きを。そしてあまたの力を。どうか私達

の星力に変えて。ステラ！」

　そう言って２人が同時にティンクル・ペンを振ると、ペンから出た黄色

い輝きがネネちゃんを包み込み、それが消えると同時に純白のドレス姿の

ネネちゃんが現れた。

「ウワ〜スゴ〜イ！」

「どう？気にいった？」

「もちろん！どうもありがとうございました」

「どういたしまして。さあ、今度はヒトミの所に行ってもわらなきゃ。ス

テラ！」

　リカさんはティンクル・ペンを振ってネネちゃんを元の姿に戻すと、先

に立ってブティックの外に出た。

「モモ。後はお願いね。ヒトミによろしく」

「リカ。今日はありがとう」

「リカさん、どうもありがとうございました」

「リカさん、どうもありがとう」

「コメットさま、こちらこそ、いらして頂いて嬉しかったです。ツヨシ君

も、また来てね。じゃあ」

「さようなら」

「コメット様。次はコンテストの会場で」

　わたし達が別れのあいさつを交わした後、モモさんがティンクル・ペン

を振ってヒトミさんのブティックに通じる星のトンネルを出した。

「じゃあ、行くわよ。中に入って」

「はい！」

　わたし達はモモさんを先頭に次々と星のトンネルに飛び込んでいった。

 

７／１４　１１：３０

　わたし達は星のトンネルを出てヒトミさんのブティックに向かった。ヒ

トミさんのブティックはカスタネット星の首都にあるシュテルン城のすぐ

近くにあり、ブティックからは大きな城壁がそびえ立っているのが見えた。

一方、ブティック正面には緑色と純白のウエディングドレスが飾られてい

た。

「ネネちゃん、さっき、ヒトミに電話しといたから、だいじょうぶよ。中

に入りましょう」

「ありがとうございます」

　声の調子をわずかに上げて言いながらネネちゃんはモモさんの後につい

てブティック内に入った。

「ヒトミ、遅くなってごめんなさい」

「ヒトミさん、さっきはご免なさい。あなたのことを誤解していました」

「いいのよ。それより、これからデザイナーレベル６の私がどのようにデ

ザインを創っているか、特別に見せてあげる。シュテルン！」

　ヒトミさんがいきなりティンクル・ペンを振ったので、ネネちゃんもわ

たしもびっくりしたが、そこから出る緑色の輝きがネネちゃんを包んだの

で、更に驚いた。そしてその輝きが晴れると、純白のウエディングドレス

を着たネネちゃんの姿があった。

「ヒ、ヒトミさん…」

「ス、スゴイ〜」

「カスタネット星国でも、最初にモデルの希望を聞いてからデザインを起

こすデザイナーも少なくないけど、この（デザイナーレベル６の）『ワタク

シ』の場合はモデルを一目見ただけでどんなドレスが似合うかわかってし

まうのよ。だから、最初はデザインノートを使わないでドレスを創ること

が多いわ。どう？あのドレスと比べて」

「良く似合っていると思います」

　そう言ったネネちゃんのドレスは肩が出ており、Aラインでベールが床

につく位の長さだった。グローブは丁度ひじくらいの長さだった。それを

見たわたしも

（たしかにネネちゃんの言うとおりだわ）

と思った。

「私はこういうデザインをする時は感性が大事だと思うわ。だからとりあ

えず最初にイメージしたものを形にして、必要があれば訂正しているわ。

あ、ブーケがまだだったわね。シュテルン！」

　ヒトミさんがティンクル・ペンをふると、ピンク色の花を中心とした、

星型のブーケが現れた。

「この花は、ティンクル・モモですね」

「エエ。そしてこのブーケはティンクル・ブーケって言うのよ。持つ所が

星の形になっているでしょ。こうして見ても、確かにあなたに良く似合っ

ているわね」

「はい！」

ネネちゃんは嬉しそうに言った。

「こんな所だけど。何かある？」

「私、最初はびっくりしたけれど、ステキなドレスを着ることが出来た

し、ヒトミさんってスゴイな〜って思いました。どうもありがとうござい

ました」
「こちらこそ。あなた、まだ子供だけど、いいモデルになれると思うわ。

コンテスト当日が楽しみだわ」

「ホントですか！？」

目を輝かしてネネちゃんが言う。

「ええ。私、仕事柄、たくさんのモデルを見てきたけれど、みんなそれぞ

れ違う輝きを持っているわ。でもドレスとの輝きがこれほど自然にマッ

チしているモデルは、そういないわね。あなた、モデルになりたい？」

「ハイ、私、モデルさんになるのが夢なんです」

ネネちゃんはほんのちょっと恥ずかしそうにしながら答えた。

「やっぱり。でも、なかなか奥が深いわよ。まずはドレスともっと仲良く

なることね。シュテルン！」

ヒトミさんはティンクル・ペンをふってネネちゃんを元の姿に戻した。

「エ、どういうことですか？」

「そのうちわかるわよ。モモ、あなたはいいパートナーを持ったようね。

でも、今度のコンテストでは負けないわ」

「ええ、こちらこそ。お互いに頑張りましょう。ヒトミ、今日はありがとう」

「ン、モモ、いつもの元気がないわよ。もしかして私の素晴らしいドレス

を見ておじけづいた？」

「そんなワケないでしょ。この後のファッションショーのことがちょっと

気になっているだけ」

モモさんは声のトーンを上げて言い返した。

「そうこなくっちゃ。じゃあ、またね」

「じゃあ」

「ヒトミさん、さようなら」「さようなら」「さようなら」

　わたし達はヒトミさんのブティックを出て星のお城に向かった。

 

１２：２５

　

　星のお城に戻ったわたし達はお昼を食べていた。ネネちゃんが

「モモさん、ヒトミさんが言っていた、『ドレスと仲良くなること』ってど

ういう事ですか？」

と尋ねていた。しかし、モモさんが答えるより早く、

「それは、僕とツヨシロボみたいになることだと思う」

とのツヨシ君の声が響いた。

「エ、それってどういうこと？」

「僕がツヨシロボに最初に出会った時は、お互いのことを良く知らなかっ

たし、その声を聴くことも出来なかった。でも、だんだん親しくなるにつ

れて、いつの間にか、ツヨシロボの声が聴こえるようになったんだ。だか

ら、多分、ヒトミさんは『自分が着るドレスのことをもっとよく知って、

友達になりなさい』って言っているんだと思うんだ」

とツヨシ君はちょっと得意そうに話した。

「私もそう思うわ。もしかしたら、ドレスの声も聴けるかも」

「ホントですか？じゃあ、モモさんはドレスの声を聴いたことがあります

か？」

「ええ。時々聴こえることがあるわ。でも、ヒトミにはもっとよく聴こえ

るらしいけど」

「私も聴けるようになりたい�｡」

「ネネちゃんなら、そのうちなれると思うわ。あ、もうこんな時間。エトワ

ール城にいかなくっちゃ。ネネちゃん、食べ終わった？」

「あ、ハイ」

「この後、13時からエトワール城でファッションショーがあるの。２人に

はそれを見てもらって、ネネちゃんにはショーにも出てもらおうと思って

いるから、私と一緒に来てくれる？」

「ハイ！」

「あ、姫様もすぐに行かれますか？」

「わたしは、ちょっと用があるから、後から行くわ」

「じゃあ、ツヨシ君はいい？」

「ウン、コメットさんと一緒ならいいよ」

「では、姫様、ツヨシ君と一緒にエトワール城にいらして頂けますか？私

達はこれから行きますので」

「わかったわ。じゃあ、また後で」

「さようなら」「さようなら」「さようなら」

２人が食堂の外に出て行くとすぐにわたしは一旦自分の部屋に戻ってカゲ

ビトさん経由でネネちゃんのこころの声を聴いてみた―後半に続く―