「コメットさんの日記新たなる旅立ち地球(テラ)

第2章「クラリス達の危機」その2「クラリス二世の結婚式」

 

コメットさん:26才。ハモニカ星国の王女。雪ノ下保育園の先生。カリオ

ストロ公国の王女、クラリス二世を助け出し、カゲビトを通してその

「心の声」を聴く。

クラリス=ド=リオストロ王女(クラリス二世):26才。カリオスト

ロ公国の女王、クラリ一世の一人娘。3年前から女王の職務を代行。

結婚後、正式に王位を継ぐ予定。ルーク=カリオストロ伯爵にさらわれる

ものの、コメットさん達に助けられる。

ラ=クラリ=バイオリン女王:26才。コメットさん、クラリス二世の

親友。ハモニカ星国最大の小星国、バイオリン星国の女王。クラリス二世

と外見がそっくり。さらわれたクラリス二世の身代わりとなる。

クラリス=ド=カリオストロ女王(クラリス一世):62才。カリオス

公国の女王。

あおいちゃん:11才。コメットさんのいとこ。スピカおばさまの娘。コメット

さんと一緒にクラリス王女を助ける。

マルコ:28才。クラリス二世の婚約者。大公館の衛士長。8年前にクラ

リス二世付きの衛士となり、彼女に恋をする。クラリス二世とクラリス女

王を見分けるこが出来る。1年前に婚約。さらわれたクラリス二世を助

けるべく、カリオストロ城を捜索する。

ルーク=ド=カリオストロ伯爵:26才。ゴドロフア=カリオストロ前伯

爵の息子。1年前に爵位を父から受け継ぐ。クラリス二世をさらい、自ら

が結婚しようとする。

シャドー:40才:ゲの長。ジョドーの孫。

パウロ大司教:66才:バチカンから結婚式の司式をするために遣わされた

西ヨーロッパ担当の大司教。

 

2014 /23 310(カリオストロ公国時間:日本時間 8/23 1010

わたしは少し前にムーブメントさん起されて、シャドーさんの「こころ

の声」を聴いていた。

…私はグライダーで大公館の屋上に密かに降り立った。館の周囲にいる

衛士達には気づかれなかったようだ。屋根の一角に金具を引っかけ、ロー

プをたらして下に降り始めた。やがて3階のバルコニーに降り立ち

中に入ろうとした時、急に光に照らされたので驚いた。衛士達が駆け寄っ

て来るのが見えたので、急いでバルコニーから飛び出し、グライダーを広

げて湖の上に出た。幸いにもそれ以上追ってくる様子は見えなかったので

城の裏手に向かった…)

 わたしはすぐにクラリス二世やマルコ衛士長に連絡した。マルコ衛士長

からは

(「あらかじめ知らせてくれて、助かりましたよ。こっちも予想はしていま

したが、まさか空から来るとは思ってませんでしたからね)」

との返事があった。わたしはほっとするとしばらく眠ることにした…

 

9:00

わたしは再びルーク伯爵のこころの声を聴いていた。

(…少し前にシャドーから、大公館からの車列がこちらに向かっていると

の知らせがあった。「やはり来るのか、あきらめの悪い奴だ」と思った。

それから間もなく、シャドーがやってきて、

「マルコ衛士長が捜索にまいりました。」と言ったので

「通せ」と言った、すぐにマルコが入ってきたが、慌てた様子はなかった。

「おはよう。これからどこを捜すのかね」

「城の地下室を中心に調べるつもりだ。後1時間で必ず見つけてみせる。

では」

とマルコは私が呼び止める間もなく、足早に出て行った。私は

「愚かなやつだ。見つかるワケはないのに…」と思いつつ、クラリスを迎

えに行く準備をした。9時45分になって、シャドーからヘリの準備が出

来たとの報告があった。十分後に出発することをえると、私はマルコを

捜した。そして10時7分前に彼の所に行くと、

「どうやら私の勝ちのようだな。いいかげんあきらめたまえ」

と言った。しかしマルコは

「私は最後まであきらめないぞ!」と言って離れていった。私は

「好きにしろ!」と言い放つとヘリポートに向かった。10時7分前に

ヘリに乗り込むと、クラリスのいる教会に向かった。10時数分前に教会

の地下に着くと、急いでクラリスのいる部屋に向かった。部屋のカギを開

けて中に入ると純白のウエディングドレスに身を包んだクラリスが後ろ向

きに立っていた。これを見てそれまで私の心の中にあった一抹の不安は姿

を消し、嬉しさがこみ上げてきた。

「クラリス、迎えにきたよ」

と優しく呼び掛けたが、クラリスは振り返るとこう言った。

「残念ながら、私はカリオストロ公国のクラリス王女ではないわ。バイオ

リン星国の女王、ラ=クラリス=バイオリンよ。これが私の本当の姿」

私が口を開く前に。クラリスの姿がまばゆいばかりに輝き、ピンク色の王

冠とマント、肩の透けたドレスという見た事もない姿に変わっていた。私

があっけにとられていると、すぐに携帯が鳴り,慌てて出ると、

「ルーク様、大変です。今クラリス王女とマルコ衛士長が大公館に現れて

隣りの教会に向かいました」

というシャドーからの報告があった。すぐにそちらに向かうことを伝えて

電話を切ると

「私は昨日、ここに連れて来られる途中でクラリスと入れ替わったわ。あ

なたは全く気づかなかったようだけど」

とラ=クラリス=バイオリン女王が言った。

「な、何、つまりマルコは君を、いや、クラリスを捜しているふりをして

いただけだったというのか…」私はショックを受けた。今までマルコ(の

行為)を愚かだと思っていたが、愚かだったのは自分の方だったことに気

づかされたからだった。

「でも、いったいなぜ…」

「もちろん、クラリスの誘拐に失敗したことをあなたが知れば、結婚式ま

でにもう一度誘拐しようとするかも知れない、という想いもあったでしょ

うけど、それだけではないと思うわ。それは二人の結婚式を見ればわかる

と思うけど…。さあ、行きましょう。あなたは私にこう言ったわ。もし、

今日の10時までにマルコが私を、いやクラリスを見つけることが出来れ

ば二人の結婚を祝福すると」

ラ=クラリス=バイオリン女王は私の目をまっすぐ見つめながら言った。

「わかった。でも一つ聞いていいかね?」

「ええ」

「マルコはどうやって君達を見分けているのかね?」

するとラ=クラリス=バイオリン女王は再び私の目をまっすぐ見つめ

ながら言った。

「私達は顔はそっくりだけど、目のひとみの色が少しだけ私の方が濃い

の。でもマルコは最近、私達の輝きの違いも見分けられるようになった

らしいわ。だからこれまではかなり近くでないと私達を見分けることが

出来なかったけれど、少し離れても見分けることが出来るようになった

わ」

これを聞いて

「わかった。私の負けだ。私はクラリスの相手にふさわしくないようだ。」

と思わず視線をはずして答えた。すると女王はゆっくりと私に近づき、

私の手を取るとやさしく言った。

「あなたはマルコに負けたわけではないわ。本当の勝負はこれからよ。

あなたにはクラリスよりもっとふさわしい人が現れるハズだわ。さあ、

行きましょう」

そして女王が錫杖を振ると門のようなどこかに続く通路が現れた。

するとためらいがちな私の手をとってその中に飛び込んだので、続いて

私も飛び込んだ…)

 

…大公館の隣りの教会の右側最前列にいたわたしはルーク伯爵のこころ

の声を聴くのを止めて入口の方を見た。するとドアが開いて純白のウエ

ディングドレスに身を包んだクラリス二世と白いマントに水色の手袋と

ブーツ姿のマルコ衛士長が姿を現した。2人はゆっくりバージンロード

を進んでいった。中程に来た時、わたしのすぐ前方が光り輝き、星の

ンネルの出口が姿を現したので、周囲の人々は驚いていた。

 それからすぐにクラリスとルーク伯爵が姿を現したが、クラリス二世

達は何事もなかったかのようにそのまま進んだ。間もなく2人は会堂の

最前列に達し、歩みを止めた。ベールを顔にかけ、白い花のブーケを持

ったクラリス二世の左隣りにはクラリス女王が、マルコ衛士長の右隣り

にはその両親がいた。2人の前には祭壇があり、すぐ後ろにはバチカン

から遣わされたパウロ大司教がいた。

 2人が所定の位置につくと、パウロ大司教が口を開いた。

「これから、クラリス=ド=カリオストロ大公息女とマルコ=リメジー

衛士長との結婚式を執り行います…。最初に聖歌、…番を讃美いたしま

す」

 パイプオルガンが鳴り響き、祭壇の両脇に並んだ聖歌隊のリードのも

と、聖歌が合唱された。それから大司教が式文に従って開会の祈りを

捧げた。会堂内の空気がピンと張りつめ、程よい緊張感が覆った。

「次に聖書を朗読して頂きます。最初に創世記2章24節をヨハネ=

リメジーさんに、詩編23編を新郎新婦に、マタイ1946節をクラリ

ス=ド=カリオストロ大公に朗読して頂きます」

と大司教が言った後,マルコのお父さんが

「こういうわけで男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる」

と創世記を読み上げた。

次にクラリス二世とマルコ衛士長が詩編2316節を一緒に朗読した。

そしてクラリス女王が凛とした威厳のる声で

「イエスはお答えになった。『あなたたちは読んだことがないのか。

創造主は初めから人を男と女とにお造りになった。』そして、こうも言

われた。『それゆえ、人は父母を離れてその妻と結ばれ、二人は一体と

なる。だから、二人はもはや別々ではなく、一体である。従って、神

が結び合わせて下さったものを、人は離してはならない』」

とマタイ福音書を朗読した。それから大司教が聖書を朗読した。続いて

「それでは、お二人の結婚に際して私から一言お話しさせて頂きます」

とパウロ大司教が言った。

「結婚に際して必要な愛はまず、相手を独占し、一つになりたいという

エロースの愛があげられます。しかし、この愛には自己中心的な面が

あり、これだけでは正しい結婚生活を営むには不十分です。イエス=

キリストの私達への愛である『アガペーの愛』が不可欠です。この

アガペーの愛は新婦のお母様のクラリス=ド=カリオストロ大公が46

年前、ルパン3世をジョドーの銃弾から身を呈して護ったことで実践

されています。どうかお二人もこの愛を、実践し続けて下さい」

パウロ大司教がそう語った時、「何とも言えないあたたかいもの」が会

堂内に満ち、こころ動かされた。

「導入のことば。マルコ=リメジー衛士長、クラリス=ド=カリオス

トロ大公息女、あなたがたは自らすすんで、この結婚を望んでいます

か」

はい、望んでいます

クラリス二世達は声を合わせてそう言った。それから大司教の前で向

かい合って握手をした。続いてパウロ大司教が

「結婚生活を送るに当たり、互いに愛し合い、尊敬し合う決意をもっ

ていますか」

と二人に問いかけると、二人は声を合わせて

はい、もっています

と答えた。それから

「あなたがたは、恵まれる子供をまことの幸せに導くように育てますか」

との問いかけがあり、

はい、育てます

との答えがあった。

「それでは、神と私たち一同の前で結婚の誓約をかわして下さい」

とパウロ大司教が呼び掛けた。会堂内に緊張が走った。わたしは反射的

にルーク=カリオストロ伯爵を見た。しかし彼は黙って二人を見つめて

いた。

「マルコ=リメジー衛士長、あなたはクラリス=ド=カリオストロ大公

息女を妻としますか」

「はい、いたします」

パウロ大司教の問いかけに、マルコ衛士長は元気良く答えた。 

「クラリス=ド=カリオストロ大公息女、あなたはマルコ=リメジー衛

士長を夫としますか」

「はい、いたします」

クラリス二世も母親に似た、凛とした声で答えた。

「それでは、一緒に誓いを立てて下さい」

私達は夫婦として、順境にあっても逆境にあっても、病気の時も健康

の時も、生涯互いに愛と忠実を尽くすことを誓います

と二人は声を合わせて答えた。何事も起こらず、わたしはほっとした。

「私は、お二人の結婚が成立したことを宣言します。お二人が今、私た

ち一同の前でかわされた誓約を神が固めて下さり、祝福で満たして下さ

るように」

パウロ大司教の宣言の後、二人は手を離し、マルコ衛士長がクラリス

二世の顔の前のベールを上げ、後ろにたらした。パウロ大司教が二人を

祝福し、続いて指輪に聖水をかsyる間、クラリス二世はまずブーケをク

ラリス女王に預けると、左手の長い手袋の中指を右手で引っ張り、続い

て右手を二の腕付近を覆う左手の手袋の端にかけて裏返しにしながらひ

じまで引っ張った。それから左ひじを曲げると右手で左の手袋の指先を

つかみ、ななめ右下に引っ張って左手の手袋をはずし、クラリス女王に

預けた。次に左手を右手の二の腕付近を覆う手袋の端にかけて裏返しに

しながらひじまで引っ張り、それから右手の手袋の中指を左手で引っ張

り、続いて左手で右手の手袋の指先をつかんでななめ左下に引っ張って

右手の手袋をはずし、クラリス女王に預けた。マルコ衛士長は既に手袋

をはずしていた。そしてパウロ大司教から指輪を受け取ると、クラリス

二世の目をまっすぐ見つめ、

この指輪は私たちの愛と忠実のしるしです

と唱えながら青地に白いヤギが彫られた指輪をクラリス二世の左の薬指

にはめた。

続いてクラリス二世も同様に指輪をパウロ大司教から受け取ると、マル

コ衛士長の目をまっすぐ見つめながら

この指輪は私たちの愛と忠実のしるしです

と唱えてマルコ衛士長の左の薬指に指輪をはめた。二人が手を上げて指

輪を皆に見せると、自然と拍手が沸き起こった。それから二人は祭壇に

進み出て、結婚証書に署名し、次にルーク=カリオストロ伯爵、ラ=

クラリス=バイオリン女王、パウロ大司教の順に署名した。そしてパウ

ロ大司教が署名し、結婚証書を掲げている間、クラリス二世は右手の手

袋をはめてから左手の手袋をはめ、クラリス女王からブーケを受け取っ

た。マルコ衛士長も手袋をはめた。それからパウロ大司教が祈祷を捧げ

た。続いてパウロ大司教は二人の頭の上に手を置いて祝福の祈りを唱え

た。それから締めくくりの聖歌を一同で讃美し、パウロ大司教が十字を

切って二人と参列者を祝福した。そして

「これで、クラリス=ド=カリオストロ大公息女とマルコ=カリオスト

ロ衛士長の結婚式を終了します」

とパウロ大司教が結婚式の終了を宣言し、無事結婚式が終了した。その

後、新郎新婦、ルーク伯爵とラ=クラリス女王は横一列に並んで祭壇に

向かって礼をした。それから4人は出口の方を向いたが、ルーク伯爵が

大きな声で言った。

「ここで、皆様に証人として一言申し上げたい」

皆の視線が注がれる中、ルーク伯爵は続けた。

「今日の結婚式はとても素晴らしかった。私は証人として、またカリオ

ストロ公国の伯爵として、二人を支え、カリオストロ公国の発展に寄与

することを宣言する」

式場内は大きな拍手に包まれた。それから新郎新婦は腕を組み、出口に

向かって歩き始めた。証人、マルコ衛士長の両親が後に続いた。二人は

出口で退堂する参列者の挨拶を受けた後、会堂の外で記念撮影を行った。

そしてクラリス二世はブーケトスを行った。わたしやあおいちゃんを含

む30名程が並んだが、新婦が勢い良く投げたブーケは一番後ろにいた

11月にヒデさんとの結婚を控えたクラリスの手に吸い込まれた…

            @                                                                                                                                       第二章エピローグに続く-

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