「コメットさんの日記新たなる旅立ち—地球(テラ)へ—」

第２章「クラリス達の危機」プロローグ「カリオストロ公国へ」

 

コメットさん：26才。ハモニカ星国の王女。雪ノ下保育園の先生。カワズ

ール・ナタール王国の王都ウルンディの宮殿に捕われていたエリザベス＝

ムベキ王女とその兄弟を和解に導き、帰国する。

ラ＝クラリス＝バイオリン女王：２６才。コメットさんの親友。ハモニカ

星国最大の小星国、バイオリン星国の女王。カリオストロ公国の王女、

クラリス２世の結婚式に招待される。

あおいちゃん：11才。コメットさんのいとこ。スピカおばさまの娘。鎌倉

に「留学」し、コメットさんと一緒に住む。

カゲビト８１３号：ラ＝クラリス＝バイオリン星国女王のツキビト

カール：ラ＝クラリス＝バイオリン星国女王のイヌ型のつき人。

沙也加ママ：コメットさんがお世話になっている藤吉家の主人、景太郎パ

パの妻

ツヨシ君：１７才。沙也加ママのふたごの兄。

ネネちゃん：１７才。同じくふたごの妹。

 

ムーブメントさん：「輝きの元である方」の人格の一つ。愛力の源であり、

姿形は不定形でその正体は謎に包まれている。

 

2014 ８/20 18：00

　8月下旬、ティンクルホンにわたしの親友、ラ＝クラリス＝バイオリン

星国女王からメールが来た。

（「コメット、久しぶり。もう結婚式の招待状が届いていると思うけど、

クラリス＝ド＝カリオストロ二世から連絡があって、結婚式を邪魔しよう

とする者がいるらしいから助けて欲しい、と言っていたわ。詳しいことは

明日の夕方そっちに行って話すから、よろしくね」）

思わず「えっー」と思ったが、そこはお互い様だった。わたしはすぐに

（了解。会うのを楽しみにしているわ。あ、カリオストロ公国にはすぐに

向かうの？それとも泊まっていく？）

と返信した。すると間もなく、

（「式の前の日の朝までに着けばいいと思うから、時差の関係で一晩泊ま

ることにしたいんだけど、いい？」）

と返事が来た。そこで沙也加ママに

「明日、わたしの親友のクラリスがここに来て泊まってから、カリオス

トロ公国のクラリス王女の結婚式に一緒に出たい、と言ってきたけど、

いい？」

と聴いてみた。

「あれ、クラリスさんとは向こうで会う約束じゃなかったの？」

そう沙也加ママが聴いてきたので、

「実は…」

わたしがメールのことを話すと、沙也加ママは納得してくれた。

「…でも結婚式にはあおいちゃんも行くことになったでしょ？

大丈夫かしら？」

「明日、詳しい話を聴いてみないとわからないと思うわ。最終的には

『輝きの元である方』に聴いて決めるつもり。エリザベス＝ムベキ王女

の時みたいに」

「そうね。」

と沙也加ママが言ったとき、あおいちゃんがリビングに入ってきた。

「コメットさん、エリザベス＝ムベキ王女の時って何？」

「実は、クラリスからメールがきたの…」

わたしがメールの事について話すと、

「え、もしかしてまた行けなくなってしまうってこと？」

と聞いてきた。

「そ、それは…」

とわたしが迷っていると、突然、ボール状に輝く光が現れ、ムーブメン

トさんが寄ってきた。

「あおいさん、安心して。センターさんが一緒に『行きなさい』って

言っているから」

「ホントですか？」

あおいちゃんが目を輝かせて聞いた。

「ええ。」

ムーブメントさんは自信たっぷりに言う。

「ワ〜イ、コメットさん、もちろんいいでしょ？」

「エ、ええ〜」

わたしはちょっとためらいがちに言った。

「どうもありがとう。楽しみだわ〜」

あおいちゃんはそう言うと、自分の部屋に戻っていった。ムーブメン

トさんも消えてしまった。

 

「コメットさん、本当に大丈夫なの？」

あおいちゃんが部屋を出た後、沙也加ママがそっと聴いてきた。

「ええ。まだ何か起きたってワケじゃないようだし、カリオストロ公国

自体は日本より治安がいいのよ」

「そう、それならいいけど〜」

沙也加ママは少し安心したように言った…。

 

８/2１ 1６：00

　次の日の夕方、クラリスからメールが来た。「これから星のトレインに

乗るから、６時頃そっちに着くと思う」という内容だった。わたしはい

つもより少し早めに保育園を出て、１７時１５分位に家に着いた。

「ただいま〜。」

わたしは玄関から中に入ると言った。

「お帰りなさい。早かったわね。あ、そうか、クラリスさんはまだ来て

いないわ」

リビングにいた沙也加ママが答えた。

「そう。６時位に着く予定、ってメールが来たわ」

「わかったわ。」

「あおいちゃん達は？」

「ネネ達と一緒にもうすぐ海から戻ってくるハズよ」

そう沙也加ママが言った直後、

「ただいま〜」

玄関でネネちゃん達の声がした。それから間もなく、ツヨシ君を先頭に

３人が入ってきた。

「おかえりなさい」「おかえり」

「ただいま〜。ああ〜楽しかった」

「たくさん泳げた？」

「ウン。波もあまりなかったし」

嬉しそうにあおいちゃんが答える。

「良かけたね。あ、あおいちゃん、もうすぐクラリスが来るって。

６時頃に着くってさっきメールが来たわ」

そうわたしが言うと、

「やった〜！」

あおいちゃんは喜びを爆発させて言った。

 

18:02

　18時を少し過ぎ、夕食の準備を始めた頃に、リビングが突然明るく

なり、星のトンネルの入り口が開いた。そこにはピンクのティアラを

つけ、白い女王の衣装を見にまとったクラリスがいた。その清楚で可憐

な姿はため息が出る程美しかった。

「コメット、こんばんは。会いたかったわ」

「こんばんは、クラリス。わたしも久しぶりに会えて嬉しいわ」

「こんばんは。クラリスさん。もうすぐ夕食が出来ます。今夜はゆっく

りしていって下さいね」

「沙也加さん。今夜はお世話になります」

そうクラリスが言った時、あおいちゃん達がやってきた、

「クラリスさん、こんばんは。お久しぶりですね。お元気ですか？」

「ええ」

「こんばんは」「こんばんは」

「こんばんは。二人とも元気そうね」

「ハイ。今日はみんなで海に行けて、楽しかったです」

「そう。コメット、あなたの部屋に案内してくれる？話しがしたいので」

「ええ。でももうすぐご飯だから、ゆっくり話す時間はないと思うけど」

「まず、概要を話すから、５分もあればいいわ」

「ええ。わかったわ。じゃあ、こっちへ。今日はあなたにもここで泊ま

ってもらうわ」

そうわたしは言って、クラリスを自分の部屋に案内した。

「ここに座って」

わたしは自分のベットにクラリスを座らせると、自分の机のイスに座った。

「以前からクラリス二世から話しは聞いてたんだけれど、結婚式を邪魔し

ようとしているのは、ルーク＝カリオストロ伯爵と言って，去年父親のゴ

ドロフア＝カリオストロ前伯爵から爵位を受け継いだの。２人は小さい頃

からお互いを知っていて、最初は仲が良かったの。でも彼女が１８歳の頃、

マルコという衛士に出会ってから変わってきたわ。マルコはクラリス二世

に一目ぼれして、やがて彼女もマルコに次第に惹かれるようになったわ。

ルーク伯爵は最初は身分の違うマルコを相手にしていなかったけれど、次

第に彼を恋のライバルとみなすようになったわ。そして、去年２人の婚約

直前に私が呼ばれたの」

「どうして？」

わたしが尋ねると、

「ある『テスト』のためよ」

と、クラリスは答えて更に言葉を続けた。

「その時、初めてルーク伯爵に会ったわ。遠くから見かけたことはあった

けれど。でも彼は私だと気づかなかったわ。一方、マルコは私とクラリス

二世を見分けることが出来たの。全く同じ服装でいたのに…いつも側に

いるから、否、それだけ彼女を愛しているからだと思うわ。そしてこれが

決め手になってクラリス二世はマルコを選んだわ。ルーク伯爵は落ち込ん

だみたいで、これであきらめてくれる、と思っていたけど〜。今月に入って

伯爵からマルコとの結婚を止めるように連絡があったわ。クラリス二世が

断ると、今度は『２人の結婚式を妨害する』と警告があったそうなのよ。

最初はクラリス二世も本気にしていなかったけれど、調べていくうちに、

密かに準備を進めているらしいことがわかったわ。それで私の所に連絡

があったのよ」

「そうなんだ〜」

そうわたしが言った時、ドアがノックされ、

「コメットさん、ご飯が出来たって」

とのあおいちゃんの声があった。

「今行く〜」

そうわたしは答えて立ち上がると、クラリスを促してリビングに向かった。

 

８/2２ 15：55　

　次の日、わたしは星のトレインを呼ぶと、アガペー変身してクラリスとあおい

ちゃんと一緒に玄関を出た。ツヨシ君とネネちゃん、沙也加ママが見送りに来て

いた。

「では行ってきます」

「気をつけてね。向こうでは何があるかわからないと思うから」

そう言った沙也加ママにクラリスが、

「沙也加さん、お世話になりました。お食事もとてもおいしかったです」

と嬉しそうに語りかけていた。

「こちらこそ。また、いらして下さいね」

「ええ」

「いいな〜あおいちゃんは。私も行きたかったな〜。おみやげ、楽しみに

してるね」

「私もとっても楽しみ〜。でも、無事に結婚式があるといいんだけど〜」

「ご心配なく、クラリス様達は私達が命にかえてお守り申し上げます」

そう言って、クラリスのつき人のカゲビト８１３号とカールが突然現れた

のでびっくりした。

「２人とも〜突然出てくるから、びっくりしちゃった。〜じゃあ、そろそ

ろ行こっか」

そうわたしが言うと、あおいちゃんはうなずいた。はるか上空で、汽笛が

鳴り響いた。

「コメットさん、じゃあ、また」

「またね」

と言ってバトンを振ろうとすると、クラリスが

「今は私のハートにみんな乗った方がいいと思うわ」

と言うなり、縦横1.5 m程のハート形の「輝き」を出してその上に乗った。

私達もすぐに乗り、直後にピンク色の「輝き」が大空高く舞い上がった。

ツヨシ君達が手を振っているのがチラっと見えた。それから間もなく、

上空に待機していた星のトレインにみんなが乗り込むと、あおいちゃんが

言った。

「カリオストロ公国に向けてしゅっぱ〜つ！」

すぐに汽笛が鳴り、星のトレインが加速し始めた…。

 

第二章その１に続く-