「コメットさんの日記新たなる旅立ち―地球(テラ)へ―」

第4章「ウイルスとの戦い」プロローグ「クラリスの結婚式」

 

コメットさん：26才。ハモニカ星国の王女。雪ノ下保育園の先生。石巻マンガ

館で行われた復興イベントから戻る。

あおいちゃん：11才。コメットさんのいとこ。スピカおばさまの娘。鎌倉に

「留学」中。コメットさんと一緒に参加した復興イベントから戻る。８才の頃、

ハモニカ星国に一時滞在する。

ラ＝クラリス＝バイオリン女王：26才。コメットさんの親友。ハモニカ星国最大

の小星国、バイオリン星国の女王。11月23日にヒデさんとの結婚式をひかえる。

ヒデさん：36才。ハモニカ星国のアニメーションの動画を描いている「動画ビト」。

コメットさんの地球での様子をアニメにした「コメットさま☆」の動画を描いて

いる。クラリス女王の婚約者

寧々（ネネ）ちゃん：1７才。コメットさんがお世話になっている藤吉家の主人、

景太郎パパ達のふたごの妹。

剛（ツヨシ）くん：17才。同じくふたごの兄。

沙也加ママ：ツヨシ君、ネネちゃんの母親。

景太郎パパ：ツヨシ君、ネネちゃんの父親。

コメットさんのお毋さん（王妃さま）：50才（オリジナルの設定）。ハモニカ星国の

王妃。18才の頃地球に行き、東京で１年間過ごした後再び星国に戻る（本編及び

「コメットさん」より）。フルネームはラ・コメット・ハモニカ（オリジナルの設定）。

コメットさんのお父さん（王様）：ハモニカ星国の王様。風呂にはいることとおもちが

大好き。

クラリス＝ド＝カリオストロ女王（クラリス二世）：1988年4月23日生まれ。２６才。

カリオストロ公国の前女王、クラリス一世の一人娘。３年前から女王の職務を代行。

ルーク＝カリオストロ伯爵にさらわれるものの、コメットさん達に助けられ、2014年

８月23日にマルコ衛士長と無事結婚式を挙げる。翌日戴冠式を行い、正式に女王となる。

石の森久美子さん：31才。コメットさんが東日本大震災時にお世話になったNGO

「石巻フィレオの会」代表。震災時にラ＝クラリス＝バイオリン女王と知り合ったこと

がきっかけで結婚式に招待される。

マルコ・ド・カリオストロ：２８才。クラリス二世の夫。８年前にクラリス二世付きの

衛士となり、約３ケ月前に結婚し、カリオストロ家の一員となる。

メテオさん：26才。カスタネット星国の王女。１5才で歌手デビュー。2009年3月に

愛力ノーマルバージョンが使えるようになる。

プラネット王子：28才。タンバリン星国の王子。2004年にライフセイバーのライ

センスを修得。2014年８月に鎌倉で行われた第50回全日本ライフセービング大会で

２位になる。

ミラさん：25才。代々タンバリン星国王家に仕えるフィレンツェ家の娘。プラネット

王子の主任侍女で恋人。

バイオリン星国: ハモニカ星国の直径の約２０％を占める、ハモニカ星国最大の

小星国。ハモニカ星国の中心から約一万八千光年離れた所に中心を持ち、楕円形を

している。

バイオリン星：バイオリン星国の中心付近にあるバイオリンエネルギー星系の第

３惑星。直径は地球の1.007倍、公転周期は365.0日。自転周期は24時間０分。

星力で表面温度が０〜３０度に調節されている。

バイオリン城：バイオリン星の北半球にある唯一の大陸の中心付近の首都

センターシティにある高さ180 mの城。ラ＝クラリス＝バイオリン女王の居城。

 

2014 11/22　１９:００

　わたしとあおいちゃん、ツヨシ君、ネネちゃんは少し早めに夕食をとると、

身支度を整えて沙也加ママ達と一緒に庭に出た。明日はわたしの親友、ラ＝

クラリス＝バイオリンの結婚式があり、わたし達も参列するためだった。

 

「景太郎パパ、沙也加ママ、行ってきます」

「行ってきます」

「行ってきます」

「行ってきます」

「気をつけてね。おみやげは気にしなくていいから」

「ええ。でもクラリスからは『いいもの』があるかもしれないから楽しみにして

いてね」

そうわたしは沙也加ママに言ったが、この時、バイオリン星国から

『もらったもの』が『いいもの』だけではないことを全く予想していなかった…

 

２１:３０

 

　その後、わたし達は星のトレインに乗り込み、２１時すぎにはトライアングル

星雲に着いた。そこから小ワープし、バイオリン星国に着くと、中心付近にある

バイオリン星を目指した。それから間もなく、地球によく似たバイオリン星が

見えてきた。

「きれい〜。地球とよく似ているね」

「そうね。ネネちゃん。でも大陸は一つしかないのよ」

「そうなんだ」

「ネネちゃん達はまだ１度しかバイオリン星国に行ったことがなかったわね」

「うん。でもその時は大陸が一つだったかは覚えていないや」

とツヨシ君。

「私も」

と笑いながら話したネネちゃんにつられてわたし達も笑ったが、ふと、あおい

ちゃんの様子が普段と違うことに気づいて

「あおいちゃん、どうかした？」

と聞いてみｽ。しかし、あおいちゃんは

「ううん、なんでもない」

と答えただけだった。その時はあまり気に留めなかったが、後から思うと、

東日本大震災時に初めてハモニカ星国とバイオリン星国を訪れたあおいちゃんは、

お母さんを想い出し、寂しさを感じていたのだと思う。

　それから間もなく、星のトレインはバイオリン城の下部にあるメインプラット

フォームに滑り込んだ。バイオリン城には上部に王族専用かつサイズが小さい

飛行物体専用のサブプラットホームがあり、星のトレインもギリギリ発着できるが

今回は余裕を見て下に誘導された。列車を降りると、クラリスが迎えに来ていた。

「ようこそ。バイオリン星国へ、」

「おめでとう。クラリス。明日の結婚式、楽しみにしているわ」

「ありがとう。みんなが泊まる所にこれから案内するわ」

「クラリスさん。お久しぶりです。明日の結婚式、楽しみにしています」

「ネネちゃん。来てくれて嬉しいわ。さあ、城の中に入って」

クラリスに促されてわたし達はバイオリン城の中に入った。それからエレベーター

で最上階の王族専用エリアに向かった。

「ネネちゃん達はここには１度来ただけだったわね」

「ハイ。でも泊まったことはないので、楽しみです」

「さあ、ここが王族専用エリアよ。今夜はここに泊まってもらうわ」

王族専用エリア内のゲストルームの前に来るとクラリスが言った。

「うあ〜〜広い」「クラリスさん、ありがとう」

「気にいってくれて、良かったわ。何か聞きたいこととかがあったら。ここにある

ベルを鳴らして。今なら、こころに直接呼びかけてもらってもいいわよ」

「わかりました」「ありがとう。クラリス」

「では、わたしはこれで」

「また明日」

クラリスはドアの外に去っていった。と、その姿をじっと見つめるあおいちゃん

の姿に気づいたわたしはそのこころに直接呼びかけてみた。

（「あおいちゃん、もしかしてクラリスからこころに呼びかけられた？」）

（「うん。お母さんと会えなくてさびしくない？って聞かれた。なんでわかるん

だろう…」）

（「それは多分、クラリスは幼い時にご両親を事故で失っているからだと思う

わ…」）

（「私もいつかそういうヒトになりたい…」）

そう言うあおいちゃんのこころの声を聞｢て、しばらく言葉が出なかった…。

 

11/23　8:00

　翌日、わたし達はクラリス、ヒデさんと一緒に朝食をとっていた。

「…９時半に開場だから、その頃に迎えが来ると思うわ」

「わかったわ。」

そうわたしが言うと、

「わたしはこれから着替えがあるから控室に向かうわ。みんなはまだゆっくり

していってね」

そうクラリスは言って立ち上がると、食堂を後にした。

「教会で…」

わたしが声をかけるとクラリスは軽くうなずいた。

「コーヒーの欲しい人はいるかな」

クラリスが立ち去ると、ヒデさんがみんなに呼びかけた。

「はい」「ハイ」

ツヨシ君、ネネちゃんが答えると、ヒデさんがツキビトに合図して２人のカップ

にコーヒーをついでもらった。

「あおいちゃんはココアはいる？」

「うん。」

とあおいちゃんがうなずくと、ツキビトがココアをついでくれた。

「ありがとう」「どうもありがとう」「ありがとう」

そう言ってコーヒーやココアを飲む３人を見た後、わたしはヒデさんに聞いてみた。

「ヒデさん、あなたはなぜクラリスと結婚しようと思ったの？」

「私がクラリスと初めて出会ったのは、あなたもご存知の、ラバボーの裁判

でした。まだ13歳なのに叙ｾで、あなたの弁護をされる姿に、ほとんど

『一目ぼれ』と言って良いかと思います。

　それから私がクラリスにティンクルペンをあげた時、クラリスに私の想いが

通じたようで、それから間もなく、クラリスから『会いたい』と声がかかる

ようになりました。後で聞いたところでは、彼女はほとんど一目ぼれだった』

と言っていました。そして、彼女が女王になった時から結婚について考え始めた

けれど、なかなか決心がつきませんでした…」

「どうして？」

「それはもちろん、彼女がバイオリン星国の女王だからですよ。恒星だけで

数十億もある星国を一つにまとめていかなくてはならないし、更には他の

小星国やハモニカ星国などの三大星国とのこともある。これらの努めを

果たしている女王を支えていけるか…当初は全く自信がありませんでした。

今もあるとは言えませんが…しかし、出会いを重ねていく中で彼女の女王

としての仕事ぶり、輝きの元である方から多くの助けを得ていることなどを

知るようになり、『私も自分に与えられた使命を果たし、彼女を支えていき

たい』という気持ちが次第に強くなりました…そして昨年、ついにプロポーズ

することができました。それから何とか今日の日を迎えられて、良かった、

と思っています」

「そう…」

そう言ってわたしは将来に想いを馳せた。

（わたしも将来ハモニカ星国の女王または王妃としてやっていけるのだろうか…）

 

9:35

 

　９時半ごろに迎えが来て、わたし達は結婚式場のバイオリン城教会に案内

された。バイオリン城教会は星のトレインのメイン発着場のある、城の下層部分

かつ一番外側にあって、高さはてっぺんの十字架を含めると、約30 mあった。

（あれ？昨日より教会が大きくなっている！）

教会内に入る直前にわたしはそう想い、案内係のツキビトさんに聞いてみた。

「ツキビトさん、昨日見た時よりも教会が大きくなっている気がするんだけど。

誰か星力を使った？」

「コメット様。昨夜クラリス様が星力を使って大きくされていました」

そうツキビトさんが答えるのを聞いて

「さすがバイオリン星国の女王ね。クラリスらしいわ」

感心しつつわたしは言った。

「皆様どうぞ右手からお入り下さい。」

とのツキビトさんの声に従って中に入ると、別のツキビトさんが右手前方の席まで

案内してくれた。教会の中はわたしの両親など、三大星国を始めとする王族やホシ

ビト、ツキビトなどで一杯だった。地球から来たと思われる人も何人かいた。

その中の一人、約３ケ月前に結婚式を挙げたマルコさんと共に、左手最前列の証人

席にいたクラリス二世のこころに呼びかけた。

（「クラリス二世、お久しぶり。お母様は元気？」）

（「ええ。元気よ。そちらも元気そうね」）

そうクラリス二世の「こころの声」が届いた後、最前列にいたお母様がわたしに

気づいて

「あ、コメット、久しぶり。元気だった？」

と声をかけてくれた。

「お母様。ええ、あおいちゃんやネネちゃん達もこうして元気です。星国の

みんなは元気？」

そう聞いたわたしにお父様がお母様が答えるより早く

「ああ、もちろん。ヒゲノシタも来たがっていたが、今回は遠慮してもらった

くらいじゃ。コメット、会いたかった〜」

と嬉しそうな顔を向けてきた。

「お父様ったら」

そうわたしが言った直後、

「コメット、久しぶり。東日本大震災以来かしら。元気そうで何よりだわ」

と一列後方の右手にいたメテオさんが近づいてきて言った。

「メテオさん、久しぶり。イマシュンさんやヤベツさんは元気？」

「ええ。ヤベツには私の代わりに彼のコンサートに出てもらっているわ」

「そうなんだ」

「やあ、コメット、久しぶり」

とプラネット王子が恋人のミラさんと一緒に中央通路から入ってきて言った。

「プラネット王子、元気そうね。カロン君は？」

「元気だよ。タンバリン星国からは今回は僕達だけだからね」

「ねえ、プラネット、あなた達、もうすぐ婚約するって本当なの？」

そうメテオさんが聞くと、

「え、ちょっとそれはここでは答えられないから後で…」

とプラネット王子はとまどいながら答えた。しかし、その後すぐに

（「それは本当だ。近いうちに正式に発表すると思うから、それまでは

公表しないで欲しい」）

と「心の声」を通して連絡があった。

「あ、もうそろそろ時間だわ。また後で」

そう言ってメテオさんは自分の席に戻っていった。プラネット王子達も

中央通路よりの席に向かう。

それから間もなく、式が始まり、やがてクラリス達が姿を現した…。

 

16:00

「クラリス。素晴らしい式と披露宴だったわ。ありがとう」

　式と披露宴が終わり、わたしはクラリス達に別れの挨拶をしていた。

「こちらこそ。来てくれてありがとう。」

「クラリスさん、今日はとても楽しかったです。どうもありがとう

ございます」

「あおいさん、元気になって良かったわ。また来てね」

「はい」

「クラリスさん、今日は楽しかったです。クラリスさんは『ドレスの声』

を聴けますか？」

そうネネちゃんが聞くと、

「実は私もネネちゃんと同じようにドレスの声を聴くことが出来るの。

いつからは、ハッキリ覚えていないけど、確か女王になってからだと

思うわ。立場上、毎日のようにドレスを着ているけど、いつの間にか

ドレスの声が聞こえるようになったわ。今では今日のように必要な時

に聴くようにしているわ。今日はありがとう」

とクラリスは答えた。

「クラリスさん、僕も楽しかったです。いつかまた来てみたいです」

「ツヨシさんも来てくれてありがとう。また来て下さいね」

そうクラリスが答えた直後、石の森久美子さんが来て言った。

「クラリス女王、今回はお招き頂き、ありがとうございました。私も

楽しかったです」

「こちらこそありがとうございました。いつかまた石巻に行って

みたいです」

クラリスが応えた後、わたし達を迎えにきた星のトレインの汽笛が

鳴った。

「クラリス、ヒデさん、さようなら、ツヨシ君、ネネちゃん、

あおいちゃん、行くよ」

ネネちゃん達はうなずくとクラリス達に手を振りながら、わたしに

続いて星のトレインの発着場に向かっていったー

その１「星国からのウイルスー失われたもの」に続くー