コメットさんの日記 3章「アフガンの輝き」

主な登場人物

コメットさん:13才。ハモニカ星国の王女。「瞳に輝きを持つもの」とさ

れるタンバリン星国の王子を探しに地球に滞在中。バトンによって「星力」

を使う事の出来る「星使い」でもある。鎌倉に住んでいる。かつてアフリ

カに行き、そこで人々の「心の闇」を見る。

メテオさん:13才。カスタネット星国の王女。コメットさんを追って同じ

くタンバリン星国の王子を探しに地球にやってきた。「星使い」でもあり、

鎌倉に住んでいる。

ラバボー:コメットさんのお供&ペット。

ムーク:メテオさんのお供。

スピカおばさま:コメットさんの母の妹。長野県八ヶ岳山麓のペンションを経営

している。コメットさんの良き相談相手でもある。

ミラさん:12才。タンバリン星国の星使い。王子を探しに地球にやってきたこと

になっているが本当はコメットさんとメテオさんの調査。鎌倉在住。

カロン君:9才。ミラさんの弟。

 

バーバラさん:28才。NYタイムスの新聞記者。

マフード大佐:56才。北部同盟の司令官。

ムハンマドさん:30才。マジャリシャリフ近郊の村に残った女性達のリーダー。

三島圭佑(ケースケ):15才。コメットさんの大切な友達。世界一のライフセイ

バーとなる夢をかなえるためにオーストラリアに向かう。

景太郎パパ:コメットさんがお世話になっている藤吉家の主人。

 

11/2  20:00

 

 夕食の後、景太郎パパが読んでいる新聞に目が止まった。そこにはガレキの山

に群がる人々と黒い煙が映っていた。

「これは何?どこなの?」

「ああ、これはアフガニスタンという国の病院だよ。でも戦争で破壊されて大勢

の人が死んだんだ」

「どうして。ひどいわ。戦争とは何の関係もないはずの所を」

「アメリカという国から間違って攻撃されたらしい。―あれ、コメットさん―?

まさか今度はあそこに行くって言うんじゃないだろうな―」

 

 わたしは前にロケットにして飛んだ木の所に既に向っていた。

「姫様、あそこはとても危険だボー。毎日のようにミサイルや爆弾が落とされて

いるって話だボー」

「だいじょうぶ。きっと星の子達がわたしを守ってくれるわ。どうしてあんなひ

どいことをしているのか確かめに行くの」

 

 ティンクルドレスに変身後、わたし達は木のロケットでアフガニスタンに飛ん

だ。

「あの辺りに輝きが見えるボー。あそこに降りるボー。た大変だ、ひめさま、

ミサイルがこっちに向ってくるボー!

と言われた方を見ると、2発の地対空ミサイルが迫ってきていた。

「お願い、星の子達、わたし達を守って!」

と言ってバトンを振った次の瞬間、目の前でミサイルが爆発した。わたし達をだ

円型のピンク色のバリヤーが包んでくれていた。

「ありがとう。星の子達」

 

 一方その時、もう一機の木のロケットが猛スピードで迫ってきていた。

「コメット、今度はどんな作戦を立てているのかしら。あなただけに行かせない

わよ〜」

「メテオ様。こちらにもミサイルが」

「そっちがミサイルならこっちもミサイルよ。ムーク、迎撃ミサイル発射!

「は、はい」

 迎撃ミサイルは向ってきたミサイルに見事に命中した。

ホーホッホ。まあザットこんなもんよ

とメテオさんが言った直後、ステルス爆撃機が木に接触し、ロケットはバランスを失っ

て墜落していった。

「どうしていつもこうなの〜」

「ヒメ様それは〜」

 

「メテオさん。だいじょうぶかな」

「だいじょうぶダボー。メテオさんもバリヤーをはれるボー」

 

 わたし達はアスガニスタン北部のマジャリシャリフ近郊のある村に降りていった。それ

からすぐにヌイビトさん達に頼んで新聞記者の姿にしてもらった。この姿ならアフガニス

タンを始め、地球のあらゆる国のことばを話すことが出来るためだった。

 

11/3

 

 次の日、早速わたし達は取材を始めたが、そこで見たものは予想をはるかに超

えるものだった。

 壊れた家や車。傷つき。希望を失った人々。空爆を行う飛行機やヘリコ

プターの爆音。遠くでミサイルや爆弾が炸裂する音。地雷で足を吹き飛ば

された子供達―。  

 アフリカに行く前のわたしならとっくの昔に逃げ出していただろう。でも、あ

れ以来わたしは、人の「心の闇」が前より見えるようになっていた。悲しみ

といかりに身をふるわせながらも何とか真実から目を背けないだけの強さが与え

られていた。しかし、初めて目の前に「死体」を見た時、あまりのショックに思

わず、

「ひどい、ひどすぎる!わたしはこんな物を見るために地球(ここ)に来たんじゃ

ない!」

と叫んでしまった。その時、

「これは夢じゃない。現実から目をそらすな。それがおまえにとってどん

なにつらく、悲しくても―。おれはたくさんの人から勇気をもらって、目

の前でオヤジが死んだ、助けることが出来なかったという現実を受け入れ、

それを乗り越えることが出来たんだ。おまえなら、この現実をしっかりと

受けとめ、それを乗り越える勇気を持つことが出来る。自分の輝きを信じ

るんだ」

という、あのなつかしい声が聞こえた。

「ケースケ、ケースケなの!」

 わたしはようやく我にかえってあたりを見回したが、もちろんケースケの姿は

どこにもなかった。

(ありがとう。ケースケ、わたし2度とあんなこと言わないわ)

そうこころに誓った時、いきなりタリバンの兵士が近寄って来て、

「許可証を見せろ」

と言った。

「どうしよう」

とわたしが困っていると、

「あら、すみません。この娘は私の社の者なんだけれど、今日はウッカリ許可証

を持って来るのを忘れたみたいだわ。今回はこれで見のがしてね」

と、サングラスをし、カメラをかかえた女性が兵士にドル紙幣を渡しながら言っ

た。

「こりゃどうも。今度からは気をつけるんだぞ」

と兵士は言って足早に去っていった。

「ありがとうございます。おかげで助かりました」

「当然の事をしたまでよ。あ、私はニューヨークタイムズのバーバラよ。あの事

件の直後からここにいるの。あなたは?」

「コメットです。昨日、日本から来ました」

「そう。じゃまだここのことはそんなに知らないわよね」

「わたし、どうしてこんなひどいことになっているのか知りたくて。こんなひど

い事、やめさせなきゃ。でも、どうしたらいいのかよくわからなくて―。実はわ

たし、ここがアフガニスタンのどこなのかもよくわからないんです」

「あなたそれでも新聞記者なの?―昨日きたばかりじゃしょうがないか―ねえ、

これから、この村を囲んでいる北部同盟の司令官にインタビューするのよ。一緒

に来ない?あそこに私のジープがあるわ」

「ええ」

 わたし達は村を出て、北部同盟の陣地に向った。途中、バーバラさんはこの村

のことを色々教えてくれた。

 ここはマジャリシャリフという重要な町の近くにあり、そこを攻略するための

拠点とするため、近く総攻撃が予定されていること。村には1000人位のタリバ

ン兵士の他に女性や子供を中心に、まだ、4,5百人が取り残されていることなど

「だから、この村の人を助けるために何としても総攻撃の時間を聞き出したいの。

あ、もうすぐ検問所よ。あなた許可証を本当に持っていないの?最近チェックが

厳しくなって、これがないとほとんど取材が出来ないのに―」

「持って来たハズなんだけど〜。―そうだわ、それ、ちょっと貸して下さい」

「いいけど、どうするの」

「これを見たら許可証の場所を思い出せそうなんです」

「わかったわ。ハイ」

「ありがとう。バーバラさん。―見つけたわ。これでいいでしょ?」

と星力で作った許可証を見せながらわたしは言った。

「そうね。なんだあなた、うちの日本支局じゃない。どうしてそれを早く言わな

いの」

「すみません。まだ会ったばかりで、とても信じてもらえないと思って」

「さ、着いたわ」

 わたし達は北部同盟の司令官、マフード大佐に話しを聴いた。なぜ、この村を

攻めるのか。なぜ、幼い子供や女性など、兵士ではない人まで殺そうとするのか。

など―大佐は紳士的な人で、わたし達の質問に丁寧に答えてくれた。

「われわれがなぜこの村を攻めるのか―それはこの村に住むタリバンの兵

士から私達の家族を守るためだ。もちろん兵士の中には家族を殺された者

もいる。私もその一人だ。」

「でも、そのためにこの村の人達を殺すなんて―やめて下さい。いのちの輝き

を消さないで。

とわたしは言ったが、

「輝き?そんなものはこの国にはない。ただ暗闇と苦しみ、悲しみがある

だけだ」

「いいえ、確かにこの国には苦しみ、悲しみもたくさんあるけれど、わた

しはこの国の人に輝きを見ました。ここにいるバーバラさんの中にもで

す」

「おまえ達の家族が敵に殺されたらどうする!家族を殺された者の気持ち

がお前達にわかるか!もういい、出ていってくれ」

「マフード大佐!」

「もういいのよ。コメット。わかったわ。私達は明日この村を出るわ」

「バーバラさん!」

「そうか。じゃついでに教えておこう。これは誰にも言うなよ。我々はあ

さっての午前0時にアメリカ軍と共に総攻撃を開始する。早く逃げるんだ

な」

「わかってるわよ。コメット、何をグズグズしているの。早く行くよ」

「は、ハイ」

 わたし達は直ちに村に戻り、今度はタリバンの守備隊長に話しを聴いた。なぜ、

戦うのか、の問いには、彼もマフード司令官と同じ答えだった。

 わたしはどうしても納得出来なかった。帰りの車の中で考えこんでいると、

「コメット。どうしたの?」

とバーバラさんが話しかけてくれた。

「わたし、マフード司令官も守備隊長のこともどうしても理解出来ないんです。

もっとお互いに理解出来れば、戦争なんてなくなるのに―」

「そうね。でも、私はこう思うわ。私も初めはあなたと同じ、人は必ず理解し

合う事が出来る、そう思っていたわ。でも記者として、色んな人の話を聴いて

いるうちに、中にはやっぱりどうしても理解出来ないこともある、ってこと

に少しずつ気付いていったの。人にはその人にしか理解出来ないことが多か

れ少なかれあって、その事を認めてそれを尊重すること、これがあなたの言

『輝きを大切にする』ってことじゃないかしら」

「『その人にしか理解出来ないこと』がある―」

「そう、でも不思議なことに、それを認めることが出来るようになると、か

えってお互いの理解がすすむことにも気付いたの」

「ありがとう。バーバラさん。何だか少しすっきりしたような気がするわ」

「さあ、着いたわ。ここが今お世話になっている、ムハンマドさんの家よ。彼女

は私の協力者で、ここに残っている女性達のリーダーなの」

「ようこそ。私がムハンマドよ」

「初めまして。コメットです。よろしくお願いします」

「ひめさま、この人すごい輝きだボー。センサーに反応したのはこの人に違いな

いボー」

「シッー。ラバボー。静かにして」

「え?」

「いえ、ムハンマドさん、何でもありません」

「さあ、中に入って―」

 わたし達は泥の壁で出来た家に入っていった。

 

 三人で色々話した後、わたしは寝袋に横になったが、なかなか寝付かれなかっ

た。しかし、これまでの疲れで、ようやく眠りに落ちたわたしは夢を見た。―

 

―カスタネット星国がハモニカ星国に攻めてきて、わたしの両親が住んでいる星

のお城を攻撃している、という知らせを聞いて、帰ってみると、既に城の大部分

は破壊され、両親は崩れた壁の下敷きになっていた。

おとうさま!おかあさま!

わたしがかけよると、メテオさんが現れて言った。

「コメット!とうとう2人の間に決着を付ける時がきたわね。あんたの親

を殺したのはこのワタクシよ。どう、にクイ?クヤシかったらわたくしを

倒してごらんなさいよ」

 わたしはその時はっきりと自分の「心の闇」を見た。でもそれは一瞬で消えた。

 わたしは

「メテオさん。ごめんなさい。わたしは今まで無理をしてあなたのことを

理解しようとしてきたみたいなの。確かにあなたのしたことはわたしには

理解出来ない。でも今はあなたにしか理解出来ないことがあることがわか

ったわ」

とメテオさんをまっすぐ見ながら言った。

「コメット、何を言っているの?。そっちが攻撃しないんならこっちから

いくわよ!勝った方が王子様と結婚出来るんだから」

とメテオさんが言った瞬間、真上の天井が爆発し、爆風が襲ってきた―次の瞬間、

わたしはメテオさんを抱きかかえて少し離れた床の上にいた。

「よかった。助かって」

「どうして―私を助けたりしたの」

「だから、人には自分にしか理解出来ないことがあるって言ったでしょ」

 

11/4 5:00

そこでわたしは目が覚めた。ようやく夜が明けかけていた。

「おはよう。よく眠れた?」

「イイエ。こわい夢を見てしまって―。両親が殺された夢なの」

「そう。私の父親もあのテロ事件の日に死んだけれどね」

「バーバラさん!すみません。わたし、バーバラさんのこと、ちっともわかって

なかった―」

「あら、いいのよ。昨日会ったばかりだもの。それより、後20時間以内に総攻

撃が始まるわ、何とかしなくっちゃ。オオー寒い。ここは標高が高いからもうす

ぐ本格的に雪が降ってくるのよ。」

「雪―。ここは雪が降るんですか」

「そうよ。真冬だと-20度以下になって外での活動はしにくくなるわ」

 その時、わたしはある「作戦」を思い付いた!

「ねえ、バーバラさん。わたし、この戦争を止めさせるいい方法を思い付いたの。

聞いてくれる?」

「ええ。いいわよ。」―わたしは「作戦」の内容と自分の本当の姿を話した。

「ちょっと待って。あなた本気でそんなことが出来ると思っているの?」

「ええ。星力さえ十分に集めることが出来れば。きっとできます。お願い。あな

たの輝きを分けて下さい」

「信じられない。でもこれはあなたにしか理解出来ないことネ。やってみるわ」

ほんとですか!じゃお礼にわたしの本当の姿を見て下さい」

と言ってわたしはバトンを出すと、変身した。

「ワオー。あなた本当にまだカワイイ子供だったのね。信じるワ」

「ありがとう。これから星力を集めにいってきます。もうすぐ夜が明けてしまう

から―」

 とそこに「コメット〜ここで何やってんのよ」とムークさんに乗ったメテオさ

んがやってきた。

「メテオさん。丁度よかった。実は―」とわたしが「作戦」のことを話すと、

「これはカスタネット星国の王女として放っておけないことだわ。やらせて頂く

わ」

「じゃーお願いね。わたしはこれから星力を集めにいくから」

「わかったわよ―ムーク、日本に戻るわよ。タンバリン星国の姉弟とコメットの

おばさんを連れてくるんだから」

「ハイ―」

「ラバボー。わたし達も行くよ」

「ハイ、ひめさま」

わたし達が去った後、バーバラさんは

オーマイゴット!私、どうかなりそうだわ」と言っていた。―

 こうして「暖かい雪」作戦が始まった。まず、バーバラさんがネットやラジ

オなどを通じて全世界に呼びかけた。

「アフガンに平和を取り戻すため、今夜、皆さんの力を下さい。アフガン

の人々のことを想うだけでいいの―」

 それから、わたしと、メテオさん、ミラさん、スピカおばさまの4人も手分け

して人々の心に同じメッセージを届けた。攻撃開始の約2時間前、わたし達はア

フガニスタン上空に集まった。

「星力、集まるかな」

「大丈夫よ。コメット。さっき、あなたのお母さんから連絡があって、みんなの

星力を乗せた星のトレインがもうすぐ到着するそうよ」

「おばさま。」

「タンバリン星国からももうすぐ届くと思います」「もちろん、カスタネット星国

からもよ」

「ミラさん、メテオさん。ありがとう」

「さあ、コメット。始めて。時間がないわ」

「ハイ、おばさま」

 わたし達はバトンを合わせて言った。

「幾千億の星の子たち。わたしに力を下さい。みんなの平和を愛する気持

ちを一つの輝きにして。エトワール!シュテルン!ステラ!エトワー

ル!」

 すると、輝きが上からだけでなく、下からも、横からも集まってきた。

「これはバーバラさん、ムハンマドさんの輝き―下からよ。まだこんなに輝きが

残っていたなんて。これはジョン君!アフリカからだわ」

「コメット、あなた、輝きがどこから来たかわかるの?」

「ええ。メテオさん。わかるものもあるわ。輝きはみんな違うんだもの。ほら、

これは日本からね。ネネちゃんやツヨシ君、景太郎パパや沙也加ママ―。あ、ケ

ースケのもあるわ」

 アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニア―世界中から輝きが集まってきて

いた―

 

「コメット様。星力、足りますか?」

「ちょっと足りない気がするけど、わからないわ、ミラさん。あ、来たわ。これ

でもう大丈夫よ」

 ようやく星のトレインが到着し、星力を届けてくれた。続いてタンバリン星国

からも。

 そして、カスタネット星国の星のクルーザーからは

「さあ、わがカスタネット星国からの輝きを受け取って頂戴。カスタネット砲発

射!」

との声と共に緑色の光が放たれた。

「カスタネット星国らしいわね。メテオさん」

「もう、お母さまったら。―コメット。もうそろそろいいんじゃない」

「ええ、もういいみたいだわ。みんな、分かれて」

 わたし達はアフガニスタンの国境線沿いに、東西南北に分かれた。わたし達が

バトンを振ると、赤、黄、緑の光がそれぞれ出て、アフガニスタン全土を囲む白

い一つの輪となった。

「光が白くなったわ」

「そうよ。コメット。色々な色の光が一つになると、白く見えるのよ」

「おばさま、そしてみんな。用意はいい?」

「ええ!」

 わたし達は一斉にバトンを中央に向けると

「幾千億の星の子たち。キラ星の輝きを。あまたの力を。そして世界中み

んなの輝きを。どうかわたし達の星力に変えて。エトワール!シュテルン!

ステラ!エトワール!」

と言った。すると、バトンから白い光が放たれ、中央で一つとなり、たちまちア

フガニスタン全土をおおう雲となった。そして雪が降り始めた。戦車が、地対空

ミサイルが、こわれた家や人々の死体が―みるみる白い雪に覆われていった。

 その頃、地上では

「雪よ!信じられない!あの娘達やったのね。さあ、ムハンマドさん。今

のうちに避難するわよ」

とバーバラさんが興奮した様子で言った。

「わかったわ。さあ、みんなこっちへ」

とそこに

「こんばんは。あなたがバーバラさんですか。」とカロン君が来て言った。

「そうよ。あなたがカロン君ね。話はコメットさんから聴いているわ」

「難民キャンプまでの雪のトンネルはもう出来ています。僕がそこまで案内しま

すから、この村の安全が確認されるまで、そこにいて下さい」

「ありがとう。」

 バーバラさん達は雪のトンネルの中を進んでいった。一人の子供が言った。

「この雪、冷たくない」

「そうよ。みんなの暖かい心がつくり出したものですもの。だから冷たくないの。

さ、行きましょ」

 そう言ってムハンマドさんは子供の手を優しくとって歩きだした。雪は激しく

降り積もっていた。―

「マフード大佐。ただ今、アメリカ軍から作戦中止の連絡が入りました」

「よし、わかった。我々も作戦を中止する」

「はっ!」

 マフード大佐は窓の外の雪を見ながら、

「これがあの娘の言った『輝き』なのか―」

とつぶやいた。

 やがて、朝が来ると、全土が雪に覆われたアフガニスタンが白く輝いているの

が見えた。----------------------

「そうか。あいつもずい分成長したんだな。でも、オレがこうして時々様子を見

ていることにはまだ気づいちゃいないみたいだけど。おっと、この記憶はあいつ

が持っている貝殻で読まれないように封印しなきゃ、ってドウするんだ―」

とケースケは白い貝殻を耳から離して言った。

 

第4章「メテオさんと北風ピープー」に続く―

 

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