コメットさんの日記(最新版)第8章「アフガンの輝き2」―その1

 

主な登場人物:

コメットさん:13才。ハモニカ星国の王女。「瞳に輝きを持つもの」とさ

れるタンバリン星国のプラネット王子を探しに地球に滞在中。「星力」を使

う事の出来る「星使い」でもある。バーバラさん、ムハンマドさん達の依

頼で暫定行政機構の会議を成功させるためにアフガニスタンに来た。

メテオさん:13才。カスタネット星国の王女。コメットさんを追ってアフ

ガンに来た。

ラバボー:コメットさんのお供&ペット。

ムーク:メテオさんのお供。

キュービト:カスタネット星国のホシビト。矢を当てることにより人を仲直りさ

せることが出来る。かつてイマシュンとラバボーをラブラブにする。

 

バーバラ・カーライルさん:28才。NYタイムスの新聞記者。

 

12/22 20:00(アフガン時間)(日本時間12/23 0:30

 

 わたし達は首都カヴールを目指して南西に飛んでいた。隣国のタジキスタンか

ら既にアフガン国内に入り、雪におおわれたヒンズークシ山脈が暗闇の中に見え

ているが、この前のように対空ミサイルが飛んでくることもない。この標高三千

―四千メートルに達する山脈を超えるとやがて、前方に明かりが見えてきた。

「首都カヴールだわ。ラバボー。高度を下げて」

「ハイ、ひめさま」

その時、後ろから

「コメット〜待ちなさ〜い。私を一人で置いていくなんて―」

との声と共に、もう一機の木のロケットが近づいて来た。

「メテオさん、わたし、これから北部同盟のマフード大佐とカイザル議長

を仲直りさせにカヴールに行くのよ―あれ、メテオさん、大丈夫?星力、

なくなりかけてるみたいだけど―」

「え?」

と言って慌てて後ろを振り返ったメテオさんはロケットの後ろから出ていた火が

消えるのを見た。次の瞬間、

「なんでまたこうなるのよ〜」

との叫び声を残して、ロケットは急降下していった。

アフガンの地図

 

「二人とも英語うまいわね。今度は是非直接お会いしたいわ」

「ええ。2人ともとてもいい人です」

「そういうあなたも。―ところで、明日の事だけど、あなた、本当に通訳出来る

の?」

「ハイ。この姿でいる時はヌイビトさん達の力で地球上の全てのことばを話せる

ようになってます。」

とわたしは答えた。もちろん英語でである。ちなみに、ハモニカ星国ではハモニ

カ語とトライアングル星雲共通語であるタンバリン語が公用語だが、星国内では、

ほとんどハモニカ語しか使わず、他の星国の人と話す時は、言葉ではなく、星力

を使って相手の心に直接呼びかけるのが普通だった。その方が自分の意志をより

正確に、しかも内密に伝えられるからだった。よって大人数での公的な会議や集

会等を除いて、この方法がよくとられた。話の内容が重要で他人に知られてはまずい場合は自国の人ともこの方法で話すこともあった。わたしがかつてイマシュ

ンやケースケにタンバリン星国の王子かどうか尋ねたのもこの方法だった。

25日午後3時から暫定行政機構の閣僚会議が大統領官邸であるのよ。だからそ

れまでに何とか北部同盟とローマ・グループの人達を和解させて会議を成功させ

て欲しいの」

「え!?後3日しかないわ。出来るかな―そんなこと」

「あ〜らそんなの簡単よ!コメット。このキュービトがいれば」

「メテオさん、どうしてここに?」

「あの後、地上に落ちる前にムークに乗り換えてあなた達の後を追って来

たからに決まってるでしょ、話は聴いたわ。やっぱり思った通りね。こう

いうこともあろうかとあらかじめキュービトを呼び寄せておいて良かった

わ。後はキュービトにカイザル議長とマフード大佐に矢を打ち込んでもら

えばOKよ。オーホホホー。じゃ私はこれで〜」

 

「今のがメテオさん?いい性格してるわね。私好きよ」

「ちょっと強引な所があるけれど。本当はやさしくて、いい人です。わたしより

『心の闇』を見るのが上手みたい。でも、本当に大丈夫かな―キュービトなんか

使っちゃって」

「あ、その『キュービト』って何?」

「ごめんなさい。まだ説明してませんでしたね。キュービトはラバボーみたいな

小さなホシビトさんで、人を好きにさせる力のある矢を持っています。これを2

人の人に刺すと、ラブラブになっちゃうんです。」

「要するに仲良くなるってことね、いいじゃない」

「で、でも、前回はわたしの友達のイマシュンと、わたしの代わりに刺されたラ

バボーがラブラブになってしまって…完全に2人の世界に入ってしまって、もう

大変でした。だから―」

「ちょっと、チョット、コメット!私の計画にケチをつける気?私だって

あの時の失敗はよく覚えてるわ。ダ・カ・ラ、今度はそれをふまえて完璧

な計画を作ったのよ!見て見て、このキュービトの新しい矢を。今度は恋

力が徐々に働くようにセンサーをつけたのよ。このリモコンでコントロー

ル出来るようになってるわ。もちろん、いざとなったらすぐ抜けるように

なっているわ。オーホホホー」

「メテオさん、すご〜い。それ、いつ作ったの?」

「ここにくる少し前よ。でも、そのお蔭で、星力、ちょっと使いすぎちゃ

ったみたい」

「そっか、だからあそこで星力、なくなっちゃったのね。でもほんとにこ

れ―」

「すごいね―ちょっと見せて。意外と小さいんだ。ね、試してみない?」

「ええ。バーバラさん。喜んで。行くわよ。キュービト

「キュ、キュ―」

「2人とも待って〜」

 わたしは慌てて2人の後について行った。一階に降りると、ロビーの隣に食堂

があった。入り口で1人の少年とホテルの従業員が言い争っているのが見えた。

「調度いいわ」

2人を見てバーバラさんは言った。

「そうね。キュービト、あの2人をやってチョウダイ」

キュ、キュー!

とキュービトは言うと、あっという間に2人に矢を命中させた。

「さあ、やるわよ」

 メテオさんがリモコンを操作すると、少年の胸ぐらをつかんでいた従業員はた

ちまち手を離し、

「あれ、何で私がこんなことをしたんだっけ?」

と言った。

「ごめんなさい。僕が食い逃げをしようとしたから〜」

「まあ、今回は見のがしてやるから―お、そうだ、今度うちで働いてみないかね。

支配人に紹介してあげるよ」

「ありがとうございます。明日また来ます」

「じゃあ―おっと、君の名前は?」

「ハリーです。よろしく」

「パダルだ。こっちこそ。じゃあな」

 

「す、すご〜い!メテオさん」

「あなたやるわね。これならうまくいくと思うわ」

 少年が出て行った後、わたし達が感心して言うと、

「まあ、ざっとこんなもんよ。わかった?私の計画の完璧さが。後はこれ

をどうやって2人に刺すかが問題だけど―」

とメテオさんは得意そうに英語で答えた。覚えたのか、星力でそうしているのか

わからないけど。

「そうだわ。明日10時から2人に会いに行くことになってるから、あな

たもカメラマンとして一緒に来ない?2人が話しに夢中になってる間にや

ればいいと思うわ。今夜はどこに泊まるの?良かったらここにいてもいい

のよ」

「ありがとう。でも私はこんな所ではなくてワタクシにふさわしい、雪と氷のお

城を少し離れた所に作ってあるわ。それじゃ〜また明日〜。おっと、そろそろ、

あの二人の矢を抜かなきゃ―これでOKムーク、キュービト、帰るわよ

「はい、姫様」

「キュ、キュー」

 そう言ってメテオさんは、小雪が舞い始めた中をムークさんに乗ってさっそう

と飛び出していった。

「ほんとに大丈夫かな〜」

「何言ってんのよ。あなたらしくないわ。さ、もう寝ましょ」

「そうだよね〜」

 わたしはバーバラさんの隣のベットにもぐり込んだが、なかなか寝つかれなか

った。

「ねえ、ラバボー。起きてる?人のこころって、星力で操作出来るものな

のかな―」

「え?何だボ?」

「人のこころって、星力で操ることが出来るのかな、そんなことしていい

のかな〜って」

「ボーにはよくわからないボー。でも、平和のために使うんだから、いい

んじゃないのかボー」

「それはわたしもわかってるつもりよ。でも、いくら平和のためとは言え、

何か違う気がするの」

「そうかボー。でもひめさま、もう寝た方がいいボー」

「あ〜もう眠れないったら、眠れないわ!」

と思わず言ってしまったわたしにラバボーはびっくりして

「ひ、ひめさま、どうしたのかボー。メテオさんみたいな言い方してるボ

ー」

と言った。わたしは我に帰って

「え?わたし、どうしちゃったんだろう」

と辺りを見回しながら言った。

「大丈夫かボー。またメテオさんと輝きが入れかわってしまったかと思っ

たボー。さっきのひめさまはちょっとおかしかったボー。もしかして、メ

テオさんの方法が思っていたよりうまくいったから、しっとしてるんじゃ

ないのかボー」

「ラバボー!そんなことないよ!明日の事でちょっと気持ちが高ぶってい

るだけ」

「本当にそうかボー?。まあ、イイボー。ボーはもう寝るボー」

「おやすみ―」

と言ったものの、わたしは、ラバボーの言うことも案外当たっているかもしれな

い、と思いつつ、まだ眠れないでいた。バーバラさんは既にぐっすり眠り込んで

いる。

 

(ああ、こういう時、ケースケがいてくれたら、わたしのこの気持ち、きっとわ

かってくれると思うのに―いつもなら、ここであの『声』が聞こえてきても良さ

そうなのに―ねえ、ケースケ、返事して!)

とわたしはこころの中で叫んだ。部屋の中がそれまでより真っ暗に見えた。

その2に続く―

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