コメットさんの日記(最新版)第8章「アフガンの輝き2その2

主な登場人物:

コメットさん:13才。ハモニカ星国の王女。「瞳に輝きを持つもの」とさ

れるタンバリン星国のプラネット王子を探しに地球に滞在中。「星力」を使

う事の出来る「星使い」でもある。バーバラさん、ムハンマドさん達の依

頼で暫定行政機構の会議を成功させるためにアフガニスタンに来た。

メテオさん:13才。カスタネット星国の王女。コメットさんを追ってアフ

ガンに来た。キュービトを使って会議を成功させようとする。

ラバボー:コメットさんのお供&ペット。

 

バーバラ・カーライルさん:28才。NYタイムスの新聞記者。

ソフィア・ムハンマドさん:30才。アフガニスタンの暫定行政機構教育

相。

マフード・ファヒム大佐:56才。暫定行政機構副議長兼国防相。

ハミド・カイザル:暫定行政機構議長。

ムシャラク・アブドラ少佐:52才。かつてタリバンの指揮官。現在は暫定行政

機構運輸相。

 

12/23 9:00(アフガン現地時間)(日本時間 12/23 13:30

 

「コメット、起きて。もう9時よ」

「え?もう9時?おはようございます。バーバラさん」

「おはよう、コメット。あまりよく眠れなかったみたいね」

「ええ。昨日のことが気になって」

「でも、それはあなたがするわけじゃないわ。あなたはあなたの出来るこ

とをすればいいんじゃない?」

「そうですね。ありがとう、バーバラさん。わたし、少し元気が出てきました」

「そう来なくちゃ。さあ、準備はじめるよ」

 

 それからわたし達は9時半に、後から来たメテオさんと一緒にバーバラさんの

ジープでムハンマドさんのいるビルに向った。空は良く晴れており、道路には空

爆によると見られるくぼみが所々に開いていた。

「あなた達はカイザル議長に会うのは初めてでしょ、だから議長の所にはムハン

マドさんと一緒に行くことになってるの。10時からカイザル議長にインタビュー

して、40分後に近くの国防省でマフード大佐にインタビューすることになってい

るの」

「わかったわ。バーバラさん、こっちも準備OKよ」

とメテオさん。

「それからコメット。カイザル議長はアメリカに住んでたこともあって英語は上

手いから、通訳はいらないと思うわ。でも、マフード大佐はあまり得意ではない

から、その時はよろしくね」

「わかりました」

「ここよ」

 

 わたし達はジープを降りて内務省の建物に入っていった(挿し絵参照)。ここは

合同庁舎となっていて、10階建ての大きなビルだったが、壁の所々には銃弾の跡

があった。すると、

「コメット!久しぶり!会いたかったわ」

の声とともに運転手を従えたムハンマドさんが駆け寄って来た。

「ムハンマドさん、お早うございます。どうしてわたし達が来るのがわかったん

ですか」

「星の導きよ。窓からあなた達のジープが来るのが見えたものだから。そちらは

メテオさん、でしたね」

「はい。2人の友達のメテオです。カメラマンとして同席することになっていま

す」

「そう。それじゃそろそろ私の車で行きましょ。議長のいる官邸はすぐだけど」

 わたし達は日本製の公用車に乗り換え、官邸に向った。

「え?あの2人を本当に和させられるの?バーバラさん」

「ええ。このメテオさんの考えた方法なら、きっとできると思うわ。詳しくはま

だ話せないけれど」

「そう、頼むわね。私もあさっての会議の成功を心から願っているの」

「まかせて下さい!私の作った完璧な計画通りにいけば、きっとうまくい

くはずです」

「頼もしいわね。どうかしたの?コメット。少し元気がないみたいだけど」

「いえ。ムハンマドさんちょっと気になることがあるだけです」

「もう、着いたわ。みんな降りて」

 

 わたし達はムハンマドさんの案内で、2階建ての官邸の中に入っていった。こ

の官邸は旧王宮の一角にあるが、壁には所々亀裂やくぼみがあり、かつてこの中

であった大きな爆発による損傷が完全には修復されていないようだった。

 

「この右手が議長の執務室、左手の部屋が明後日会議が行われる大会議室よ。議

長は今その奥の応接室にいるわ。ここよ」

と言ってムハンマドさんはドアをノックした。

「教育相のムハンマドです。バーバラ記者達を連れてきました」

するとドアが開いて秘書官が顔を出し、

「議長がお待ちです。どうぞ。」と言った。

 わたし達は部屋の奥に入っていった。入れ代わりに、SPと思われる2人がド

アの外に向っていった。戸口に立つのだろう。部屋の中にはテレビで見たよりや

や細めに見える男性がいた。

「お早うございます。カイザル議長。こちらがインタビューアーのバーバラ・カ

ーライルさん」

「お久しぶりです。カイザル議長。前に1度、お会いしてますね」

「ああ、よく覚えているよ。元気そうだね」

「それから、こちらがNYタイムス日本支社のコメットさん」

「初めまして。カイザル議長。コメットです。よろしくお願いします」

「君の事は教育相からよく聞いているよ。思った以上にかわいい顔をしている

ね」

「そ、そうですか〜」

 わたしはちょっと恥ずかしそうに微笑んだ。

「そして、同じく日本支社のメテオさん。急きょカメラマンとして同席してもら

うことになりました」

「初めまして、メテオです。カイザル議長にお目にかかれて光栄です。私もコメ

ットと一緒に前に一度ここに来たことがありました。よろしくお願いします」

「君の事も教育相から少し聞いているよ。思った通りだ。若くて美しくて、行動

力があって…君たちが世界中から輝きを集めてくれたんだってここまで来れた

のも、君たちのおかげかもしれない

「いえ、そんな私はほんの少しお手伝いしただけですわ〜」

「それでは私はこれで。30分後に迎えにくるわね」

「了解」

「ご苦労だった。ムハンマド教育相」

と議長が言うと、ムハンマドさんは部屋を後にした。

「それでは議長、早速インタビューに入りたいと思います。コメット、テ

ープの準備して」

「ハイ!」

「カメラの方はOKよ」

「それではまず、ハミド・カイザ ル暫定政権議長に伺います。マフード副

議長兼国防相のグループとの意見の対立から、あさって行われる予定の会

議の開催が危ぶまれているそうですが、本当ですか」

「残念ながらその通りだ。しかしまだ延期が決まったわけではない」

「マフード副議長達との最大の対立点はどこですか」

「治安を守るための方法だ。我々はやはり外国の手をある程度借りなけれ

ば無理だと思うのだが、彼らは自分達で何とか出来る、と言って聞かない

んだ。気持ちはわからないでもないが警察官の数も不足している。残念

ながら、現段階では、我々だけではこの官邸の警備すら、十分とは言えな

いんだ。今は海兵隊もいるから問題はないと思うが

「どうしてこうなってしまったと思われますか。少し前までは、いい雰囲気だったと聞いていますが」

「理想と現実の違いだよ。彼等は最大勢力だ。自分達の思うままに暫定行政機構を動かせると思い込んでいる。でも議長は私だ。彼等の好きにはさせない」

「それは、譲歩しない、という意味ですか」

「いや、そういうわけではない。が、しかし、少なくとも彼らが譲歩する

姿勢を見せない限り、こちらから一方的に折れるつもりはない!」

と議長は少し強い口調で答えた。これを見てバーバラさんがメテオさんに目で合

図した。メテオさんはカメラを構えて何枚か写真を撮った。

それからバーバラさんの方を見た。

この間、10秒となかった。

 

「ん?今何か言ったかね」

「いえ。それでは質問を続けます。では、どうすれば良いと思われますか」

「やはり。彼らが譲歩する姿勢を見せるよう、説得を続けるしかないと思

う。彼らは数に頼っているのではないか。もっと我々の意見に耳を傾ける

べきだと思う」

「わかりました。それでは次に

バーバラさんの質問は更に続き、あっと言う間に約束の30分が過ぎてしまった。

「失礼します。ムハンマド教育相が来られました」

「おお、もうそんな時間か」

「それではこれでインタビューを終わります。カイザル議長、ありがとう

ございました。会議の成功を祈っています」

「君達もご苦労様。何とか努力するよ」

「議長、会議には是非出席してくださいね」

とわたしが言うと

「もちろんだ。我々は必ず出席する。向こうはどうかわからんがな」

と議長は答えた。

「また是非お会いしたいですわ。議長」

とメテオさんが嬉しそうに言うと、

「ああ、私もだ。あさっての会議には君達も是非来てくれ」

と上機嫌で議長が言った。

「ええ」

 

「話は終わったようね」

「ムハンマドさん」

「議長、これからバーバラさん達をマフード副議長の所まで案内します」

「わかっている。後で私の所に来てくれ」

「はい。では失礼します」

 わたし達はムハンマドさんの後に続いて部屋を出た。

「どうだった?」

とムハンマドさんが聞いてきた。

「まずはうまくいったわ。あとはマフード大佐から話しを聞くだけだわ。」

「そう

 

「マフード副議長はあそこに見える国防省の中にいるわ。すぐ近くだから歩いて

行きましょう」

官邸を出るとムハンマドさんが言った。

 

わたし達は5階建てのビルの中に入った。

「彼の部屋は5階よ。ここはまだ時々停電することがあるの。このエレベーター

もよく止まるのよ」

「そうなんですか。あ、着いたみたいです」

「副議長の部屋はあそこよ。じゃ、私は議長の所に戻らなくてはならないから、

これで

「あ、ムハンマドさん、もう

「後で迎えに行くから」

 

「やっぱりまだ仲直り出来ていないようね」

ムハンマドさんの後ろ姿を見ながらバーバラさんは言った。

「そうみたいね。でも、さっきはうまくいったわ。バーバラさんのおかげで議長

に気づかれそうになったけど」

「ごめんなさい。いきなりあなたの声が心の中に聞こえたものだから、思わず声

が出ちゃって」

「もう、いいのよ。次はもっとうまくいくはずだわ」

「ええ。さ、行きましょ」

 わたし達は部屋の中に入っていった。マフード大佐はわたしを覚えてくれてい

た。

「マフード大佐、お久しぶりです。コメットです」

「やあ、君はあの時の。この前は失礼なことを言ってすまなかった。君達のお

かげで私はこの国の輝きに気づくことが出来たんだ。感謝しているよ。」

「マフード大佐…」

「やはり君は笑顔が一番似合うようだね。でも、今は大佐ではなく副議長と呼ん

で欲しい。軍人としての肩書きはまだあるが、平和的なこの新しい肩書きの方が

いいと思うんでね」

「そうですよね。マフード副議長。初めまして。コメットの同僚のメテオです。

お会い出来て光栄ですわ」

「君がメテオ君か。うわさには聞いていたよ。行動力があって頭がきれるそうじ

ゃないか」

「い、いえ、それほどでも

 

「それではインタビューを始めます。コメット。通訳をお願い」

「準備OKです」

「こちらもよ」

 

「マフード副議長。カイザル議長との最大の対立点はどこですか?」

 

「我々はこの国をアフガン人の手で復興させたいと考えている。そりゃそ

うだろう?ここは我々の国なんだから。ところが彼等は何かというと外

国人の手を借りたがる。その方が手っとり早いかもしれない。でも、それ

ではいつまでたっても我々は自分達の力で歩むことは出来ないんだ。まあ

我々の力だけでは、どうしても難しいものはあるだろうが、安易に外国に

頼っていてはいけないと思う」

 

「カイザル議長は現状では治安の維持は外国の手を借りない限り不可能だ、

と言われてましたが

 

「それは向こうの考えだ。タリバンの元兵士達はどんどん村や都市に戻っ

てきている。少し時間がかかるが、彼等を教育し、我々の兵士と合わせれば我々だけで何と

か出来ると思う」

 

「では、どうすれば良いと思われますか」

 

「やはり、彼等がもっと我々の言うことに耳を傾け、お互いがもっとフラ

ンクに話し会うべきだと思う」

 

「カイザル議長はあなた方が譲歩する姿勢を見せない限り、こちらから一

方的に譲歩はしない、と言われましたが

 

「我々は譲歩しない、とは言っていない。しかし、今のままではそれは出

来ない。確かに彼は議長だ。しかし、暫定行政機構の中で一番多いのは我々

だし、このカヴールを解放したのも我々だ」

 こうマフード副議長が話した後、メテオさんがカメラを構え、カイザル議長の

時と同じように何枚か写真をとった。その後、わたし達に目で成功を伝えてくれ

た。副議長は全く気づく様子はなかった。

 

「では、次の質問に移ります

 バーバラさんの質問は更に続いた。聞いているうちに、わたしは2人の考えが

それほど違っていないのではないかと思い始めた。でも、なぜその違いを認め、

相手の話を聴こうとしないのだろうわたしは最後に思いきって聞いてみた。

 

「もう時間だわ。コメット、これでインタビューを終わりにするわ」

「あ、最後にわたしから質問があります」

「何だね」

「わたし、副議長と議長のお話を聞いていて、お2人の考えがそんなに違

っていないのではないかと思うのですが、どうして相手の輝きの違いを認

め、相手の話を聴こうとしないのでしょうか」

「それは難しい質問だね。お互いに相手を十分信頼していないからかもし

れないな。まあ、これまで長年対立する考えをもっていたグループどうし

だから、無理もないとは思うがね」

「あさっての会議には出席されますか」

「そうしたいが、保証は出来ない。向こうの姿勢次第だと思う」

「マフード副議長

 

「コメット気持ちはわかるけど、私達からは今はこれ以上は言えないと

思うわ。マフード副議長、ありがとうございました。以上でインタビュー

を終わります」

「失礼します。ムハンマド教育相が来られました」

 

「少し待って下さるようお伝え下さい。すぐ行きますから」

 

「わかりました」

 

「それでは失礼します。コメット、行くわよ」

「はい…」

 わたし達は部屋の外に出た。早速ムハンマドさんが

「どうだった?」

とちょっと心配そうに聞いてきた。

「バッチリよ。まだ全部終わってないけど、これで会議の成功は間違いないと思

うわ」

「よかった。私はこれから内務省へあなた達を送って行こうと思うけど、他に話

を聞く予定はある?」

「まだしなければならないことがあるから、一旦ホテルに戻るわ」

「わかったわ」

 

 わたし達はムハンマドさんと一緒に内務省に戻り、再びジープに乗ってホテル

を目指した。

「さあ、いよいよこれからよ。キュービト、よくやったわ

 そう言ってメテオさんは早速リモコンを取り出し、イヤホンを耳にあて、操作

を始めた。

まずはマフード副議長の方をこうして、次にカイザル議長の方をこれ位

にしてふん、ふんどうやら副議長の考えが変わってきたようね」

メテオさん、副議長の声が聞こえるの?

「ええ。もちろん。あの矢からの信号で2人の居場所もわかるのよ。こう

すればカイザル議長の声も聞けるわ。議長の方も考えが変わってきたみた

いだわ」

「着いたわよ」

 

 わたし達は部屋に着くと、メテオさんの様子を見守った。

 

マフード副議長がカイザル議長の所に向ったわ。それじゃレベルを

これ位にして

メテオさん、ほんと?」

「何ですって?」

テープの編集をしていたバーバラさんが言った。

「マフード副議長がカイザル議長の所に向ったの。きっと仲直りすると思うわ」

「本当?」

「ええ」

 それから10分もたたないうちに、

マフード副議長がカイザル議長と話し始めたわ。なになに、『自分が

悪かった。会議には必ず出席する』ですって!それから『こちらこそ、君

のことを少し誤解していたようだ、我々ももちろん出席するよ。これから

はもっとフランクに話し合おう』ですって!!ついにヤッタワ。これで会

議は成功まちがいなしよ!!どう?コメット!わたくしのこの完璧な計画

は。オーホホホ」

とのメテオさんの勝ち誇った声が聞こえた。

 

「メテオさん、すご〜い。ビックリしちゃった」

「ねえ、もしかして

「ええ。たった今、2人は仲直りして、明後日の会議に出席することを約

束したわ」

「本当に?やったわね。でも後で2人に会って確かめる必要があると思う

けれど」

「その必要もたぶんないわ。今議長がムハンマドさんにこのことを電話で

伝えているもの。じきムハンマドさんからの連絡がここにも入ると思う

わ」

 それから5分とたたないうちにバーバラさんの携帯が鳴った。

「バーバラです。ムハンマドさん、え、本当に!2人は和解したんですね。

良かった!すぐにそちらに行きます!」

「ホ〜ラ私の言った通りでしょ?。もう大丈夫だと思うから、この自動モードに

しとくわ。コメット、悪いけど今回は完全にわたくしの勝ちね

「メテオさん、ありがとう。正直言ってこんなにうまくいくなんて思わな

かったわ。疑ったりしてごめんね」

まあ、いいってことよ。バーバラさん、2人に会いに行きましょ」

「もちろん!」

 

 わたし達は再び官邸に向かい、カイザル議長達と会った。確かに2人は仲直り

したようだった。そしてわたし達を昼食に招待してくれた。日本のものとは違う、

でもおいしい料理を食べながら、わたしはみんなと一緒に楽しく語り合った。メ

テオさんの顔はいつになく輝いていた。でもわたしは、「何か不自然なもの」を

感じていた。

 そしてわたし達が官邸から出た時、入れ違いに駆け込んできた一人の男性とぶ

つかりそうになった。

「あ、君は、あの時の」

「ムシャラク少佐!コメットです。こんなに急いでどうしたんですか」

「もう少佐じゃないよ。今は暫定行政機構の運輸相だ。あの2人が和解したと聞

いて、確かめに行く所だ」

「ご安心下さい。今私達が確かめたわ。あ、初めまして、メテオです」

「どうしてそれをとにかく私は議長に会いにいくんで、じゃあ

「ムシャラク少佐行っちゃった」

 

「さあ、行きましょ。あたな達、これからどうする?会議まではまだ時間がある

けど」

「私は一旦日本に戻るわ。明日はクリスマスイブよ。イマシュンと食事をする約

束なのよ。コメットも一緒に戻るわよね

「わたしはもう少しいたいと思うけど。あの2人の様子も気になるし〜」

「大丈夫よ。コメット。今リモコンは自動モードになってるから、バーバラさ

んに預けるわ。バーバラさん、何かあったらすぐに連絡下さいね。連絡先はこれ

よ。1時間以内に戻れると思うわ」

「わかったわ」

「そっか。じゃ〜わたしも戻ろうかな。パパやママも心配してると思うし」

2人ともどうもありがとう。後は私にまかせて。良いクリスマスを」

「あら、あれは昨日の少年だわ。とめて」

 ホテルの近くの路地裏にしゃがみ込んでいるハリー君の姿を見つけてわたしは

言った。

「みんなは先に行ってて。後から行くわ」

「了解」

 わたしはジープから降りると、ハリー君に近付き、

「こんにちは。ハリー君。はじめまして。コメットです」

と言った。13,4才位の少年は驚いて

「どうしてぼくの名前を?」

と聞いてきた。

「実は昨日、ホテルの食堂前であなたがパダルさんと話しているところを見たの

よ。どうしたの?元気がないみたいだけど。仕事は見つかったの?」

「それがパダルさんは昨日のことを全然覚えていなくて、支配人にも話してく

れていなかったんだ。もう一度頼んだけれど、昨日とは態度が違って『タダ食

いするようなやつに仕事はさせられない。』と言われて逃げてきたんだ。ここ何日も満足に食べていないからお腹がすいて

「はい、ハリー君。元気出して。わたし日本から来たの。これは日本のメロンパ

ンといって、おいしいのよ。食べたら、もう一度頼んでみよ」

「ありがとう。コメットさん」

 

 わたし達は再びホテルに向かい、バーバラさんと会った。メテオさんはなぜか

既に戻った後だった。バーバラさんに事情を話すと、

「そう。こっちの方は今の所大丈夫よ。これで何とかなると思うわ。もしだめ

だったら私に言ってね」

とお金を渡してくれた。

「どうもありがとう。バーバラさん。働いて必ず返します」

「いつでもいいのよ。当分ここにいるつもりだから」

 

 わたし達は下に降り、もう一度パダルさんに会いに行った。パダルさんは最初

は浮かない顔をしていたが、わたしが話しているうちに、そんなに熱心に言うな

らと、支配人に話すことを約束してくれた。更に昨日払わなかった分と言って借

りたお金を差し出すと、正式に採用されるまで見習いとして働くことを許してく

れた。

「ありがとう。コメットさん。本当にありがとう」

「ううん、こちらこそ。輝きをありがとう。わたしが元気になれたのも、ハリー

君のおかげだよ。じゃーまたね、あさってまでには戻ってくるわ。あ、せっかく

だからお礼にわたしの本当の姿を見せてあげる。ラバボー、いくよ

とわたしは言って変身し、星のトンネルの入り口を開いてラバボーと一緒に中に

入った。ハリー君は驚きのあまりしばらく座り込んでいたが、ようやく我に返り、

「て、天使だ

とつぶやいた。

 

 再び木のロケットの所に出たわたし達は、星国に連絡して、帰りのために星の

トレインを呼んでもらうようたのみ、次に家に連絡して戻ることを伝えた後、日

本に向った。

「ラバボー、メテオさんの方法、もしかしたら失敗するかもしれないわ」

「その時はひめさまの出番だボー。それよりあしたはクリスマスイブだボ

ー。楽しみだボー」

「そうだね。さ、急ご。みんな待ってるよ」

 ロケットは白く光り輝く山々を超えて進んでいったその3へ続く

 

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