コメットさんの日記 第8章「アフガンの輝き2」(最新版)エピローグ

主な登場人物:

コメットさん:13才。ハモニカ星国の王女。「瞳に輝きを持つもの」とさ

れるタンバリン星国の王子を探しに地球にやってきた。かつてバーバラさ

ん、ムハンマドさん達の依頼でアフガニスタンに行き、暫定行政機構の会

議を成功させた。

メテオさん:13才。カスタネット星国の王女。コメットさんを追って同じくタン

バリン星国の王子を探しに地球に滞在中。かつてアフガニスタンに行き、暫定行

政機構の会議を成功させようとしたが失敗。

 

バーバラ・カーライルさん:28才。NYタイムスの新聞記者。アフガン復興支

援会議を取材するため東京に向かう。

ソフィア・ムハンマドさん:30才。アフガニスタン暫定行政機構教育相。

 

ムシャラク・アブドラさん:52才。暫定行政機構運輸相。コメットさんの命の

恩人。

ハリー・アブドラくん:12才。ムシャラクさんの息子。

ハミド・カイザル:暫定行政機構議長。アフガン復興支援会議に参加するため東

京に向かう。

 

景太郎パパ:コメットさんがお世話になっている藤吉家の主人。

沙也加ママ:景太郎パパの妻であり、ツヨシくんとネネちゃんのお母さん。

剛(ツヨシ)くん:4才。景太郎パパ達のふたごの兄。

寧々(ネネ)ちゃん:4才。同じくふたごの妹。

 

2002 1/20 9:30

 わたしはアフガニスタン復興支援国際会議に先立って行われるアフガニスタン

復興支援NGO会議の会場である都内のホテルに着いた。

 

「お早うございます。バーバラさん、お元気ですか」

「エエ。コメット、久しぶり」

「お早う。コメット」

「ムシャラクさん!早かったですね。会いたかった。」

「ああ、私もだ。今日は私もオブザーバーとしてこの会議に参加することになっ

ているんだ。こいつがどうしても来たいというんで、ここまで連れてきたんだが、

一緒に参加するわけには行かないから―」

「おはよう。コメットさん。僕も早くコメットさんに会いたかったもん」

「ハリーくん。お早う。あ、そうだ。うちに来ない?ツヨシ君やネネちゃんと遊

ぼ。会議が始まるまでにはまだ少し時間があるから星のトンネルで行けば間に合

うよ」

「いく、いく」

「じゃあ、決まりね。バーバラさん、わたしササッと行って来ます。すぐ戻って

きますから」

「わかったわ」

 

「ハリー。会議が終わったら迎えにいくから、それまで待ってるんだぞ」

「はい。おとうさん」

「ハリー君行こ」

 わたし達がそこを立ち去ってすぐメテオさんがやってきて言った。

「お早うございます。バーバラさん。あれ?コメットはまだ来ていない

の?」

「あなたより先に来てたけど、さっきハリー君と一緒に一旦家に戻ったわ」

「もう、コメットったら。会議が始まってしまうわよったら、しまうわよ」

「会議には間に合うと思うわ。悪いけど、取材の準備、手伝ってくれない?」

「ええ」

 

 わたし達は藤吉家に戻り、ハリー君をみんなに紹介した。ハリー君はすぐにツ

ヨシ君達と仲良くなり、わたしも安心してホテルに戻ることが出来た。

 予定通り、10時から59団体が参加して会議が始まり、アフガニスタン及び国

NGOが特に教育の分野で重点を置いて活動することが、アフガン復興のため

に必要である事などで合意し、明日の復興支援国際会議に報告されることになっ

た。

 ところが会議が無事終了してから、バーバラさんがわたしの所に来て

「コメット。また困ったことが起きたの。今日の会議に出席する予定だった2

NGOが外務省から参加を拒否されたの。どうやら誤解があったらしいわ。こ

れからNGO代表に話しを聞きに行くんだけど、一緒に来て欲しいのよ」

と言った。

「少し待って下さい。ムシャラクさんと一緒に家に一旦戻りますから」

「わかったわ。」

 わたしはムシャラクさんと一緒に藤吉家に戻り、それからハリー君も一緒に再

びホテルに戻った。

「それじゃ、ハリー君、またあした」

「コメットさん。ありがとう。楽しかった」

「ムシャラクさん、わたし、バーバラさんと一緒に行ってきます」

「両者が和解出来るよう祈っているよ」

「コメット。行くわよ」

「はい!」

 わたし達はNGO代表の大石さんに会い、話しを聴いた。

すると、大石さんは最初、NGO代表として会議に参加することが決まっていたが、

19日に突然外務省から連絡があり、外務省の信頼を損ねるような発言があったた

め、参加を認めないと言われた、と話してくれた。

私はそんなことを言ったつもりはないし、どうもある国会議員から外務

省に圧力がかかったのではないかと思っているのだが―

「わかりました。外務省の人にも話を聴いてみたいと思います」

とバーバラさん。

明日の会議にはちょっと難しいと思うけれど、あさっての会議には参加

出来るよう、わたしからたのんでみます

とわたしが言うと、

君は本当にいい人だね。コメットさん

ありがとう。お会い出来て良かったわ」

こちらこそ

 わたし達は外務省に連絡して担当者から話を聞こうとしたが、明日からの会議

の準備で時間がなく、明日の会議が終わってからにして欲しい、と言われてしま

った。やむなく、明日まで待つことにして、わたし達は家に戻った。

「バーバラです。初めまして」

「ようこそ、藤吉家へ。私が主人の景太郎です。アフガンではコメットさ

んがお世話になりました」

「いえ。こちらこそいつも助けてもらって」

「初めまして。沙也加です。あなたのことはコメットさんから聞いていま

した。思った通りの人だわ」

「ありがとう。お世話になります」

バーバラさん、こんばんは

こんばんは

 

こんばんは。あなた達がツヨシ君とネネちゃんね。かわいいわ」

 それからみんなで一緒に夕食を食べ、夜はわたしの部屋でバーバラさんとこれ

までのことを色々話した。―

「ウサマ・ヒン・ラディンの行方はまだわからないわ。でも私はきっとどこか

で彼が生きているような気がするの」

「わたしもそう思います」

「あしたは10時から今日と同じ場所で会議が行われるわ。もう寝ましょ」

「おやすみなさい」―

 わたし達はすぐに眠ってしまった―

 

1/21 9:50

 わたし達はアフガン復興支援国際会議の会場内に入った。中には大勢の人が集

まっていた。

「ムハンマドさん、お久しぶりです。会議の成功を祈ってます」

「コメット。元気そうね。じゃあ、また後で」

 ムハンマドさんは急いで前の方の自分の指定席へ向った。予定通り、10時ちょ

うどに会議が始まった。緒方定子議長、小泉淳一朗首相、アナン国連事務総長の

スピーチの後、カイザル議長のスピーチが始まった。

これから話すことには情緒的なくだりは一切ない。私が今から話す演説

より、現実はもっとひどいのだ。―この国には何もない。あるのは貧困、

暴力、戦争だけだ」

 

 議長は一瞬言葉につまったようだった。目には涙がにじんだように見えた。

しかし、たった一つだけ持っているものがある。それは輝

きだ。ここにいる全ての方々、また世界中からもらったもの

だ。私は暫定行政機構が出来たばかりの時、意見の相違から副議

長と深刻に対立したことがあった。そのため閣僚会議の開催も危

ぶまれた程だった。当時我々を和解させようと様々な試みが行わ

れたがことごとく失敗し、我々もあきらめかけていた。しかし、

ひとりの女性が我々に輝きをくれ、相手の輝きを尊重するこ

とを教えてくれた。そのおかげで我々は会議に出席することに

したんだ。でもまだ和解したわけではなかった。ところが閣僚の

ひとりが自分のいのちをかけて、会議に出席しようとしたそ

の女性と我々をテロリストの攻撃から守ってくれた。我々は

彼から『いのちの輝き』をもらい、和解することが出来た

 我々はこれからもっと輝き、そしていつか、この輝きを他の国

にも分けてあげたいと思っている。この会議がそのための助けに

なることを期待している」

議長がここまで話した時、会場内は大きな拍手で包まれた。―

 1日目の会議が無事終了し、会場から出て来たカイザル議長にバーバラさんが

話しかけた。

「カイザル議長、おつかれ様でした。今日の演説はとても素晴らしかったですわ」

ありがとう。ここまで来れたのも、君達のおかげだよ

「カイザル議長、お久しぶりです。明日の会議もがんばって下さいね」

ああ。もちろんだ。あしたもよろしく

「コメット。外務省に行くわよ」

「はい!」

 

 わたし達は早速外務省に行き、担当者から話を聞いた。

 担当者の話では、「外務省として会議を進める上でふさわしいNGOを選んだ。

決定に際し、国会議員から圧力があったとは聞いていない」とのことだった。

わたしが大石さんから聞いた話を伝え、明日の会議に出席を認めてもらうよう言

ったが、その時は「上からの指示がまだないので約束出来ない」という回答だっ

た。

お願いです。お互いの間に誤解があったかもしれないけれど、アフガン

の人達のことを考えて、参加を認めてあげて

 わたしがそう言った直後、担当者の携帯が鳴った。

田中牧子外相からだった。

 

野党やカイザル議長から明日の会議への参加を認めてNGOと和解する

ように言われました。これからすぐに大石代表に連絡し、明日の会議への

参加を認めることで和解しなさい

「はい。今、コメットという新聞記者と話しをしていたのですが、彼女も同じよ

うなことを言っていたのですが―」

何ですって!その人こそ、カイザル議長達を和解させたひとなのよ!今

日のカイザル議長の演説には感動しました。あのアフガンの人達でさえ和

解出来たのだから、あなた達に出来ないわけないでしょ!しっかりしなさ

い!!

「は、はい―」

 それから担当者のわたしを見る目が変わり、彼は早速大石さんに連絡し、お互

いの意志を確認するのに2時間位かかったが最終的に明日の会議にオブサーバー

として参加が認められた。

 わたし達は外務省を後にした。

「良かったですね。参加出来ることになって」

「ええ。でもまだ完全に和解したわけではなかったようだけど。とにかく明日が

最終日だわ」

「わたし、お腹すいちゃった。早く帰ろ」

「ええ」

 わたし達は星のトンネルで藤吉家に向った。

 

1/22 10:00

 大石さん達も参加して2日目の会議が始まった。そして22項目からなる共同

議長最終文書がまとめられ、無事閉幕した。会議が終わった後、わたしはムシャ

ラクさんに以前から気になっていたことを聞いてみた。

「ムシャラクさん。聞きたいことがあるんだけど」

「何かい?」

「あの時どうしてわたしを助けたの?あなたは会議を妨害しようとしたん

でしょ?」

「妨害しようとしたのは確かだ。でも誰も殺すつもりはなかった。あれは

ウサマ・ヒン・ラディンの命令で、私は知らなかった。あの時はたまたま、

いや星の導きで君が狙われているのがわかったら、自然にからだが動いて

いた―どうしてか自分でもわからない」

「そうだったの―ありがとう」

「こちらこそ。ではまたいつか、さようなら」

「コメットさん。さようなら」

「ハリー君も元気で。さようなら〜」

 わたしは2人に別れを告げると星のトンネルで藤吉家に向った。バーバラさん

は取材のためもう2,3日滞在することになっていた。

―アフガニスタンの輝きは徐々に、しかし確実に増してきている。この国

が他の国に輝きを分ち合うことが出来るようになるのも、そう遠いことで

はないのかもしれない―わたしはそう思った。―最終章「いのちの最後の輝き」

に続く―

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