コメットさんの日記 最終章「いのちの最後の輝き」その1

主な登場人物:

コメットさん:13才。ハモニカ星国の王女。「瞳に輝きを持つもの」とさ

れるタンバリン星国のプラネット王子を探しに地球に滞在中。「星力」を使

う事の出来る「星使い」でもある。かつてメテオさんを探しているうちネ

メシスさんのいる病院に行き、そこで彼女と出会う。

メテオさん:13才。カスタネット星国の王女。コメットさんを追って同じ

くタンバリン星国の王子を探しに地球に滞在中。身寄りのないメネシスさ

んに目をとめ、良き理解者となる。「星使い」でもある。

ネメシスさん:65才。星国の人なのに星力を全く使うことが出来ないと

いう、超特殊な性質を持つ。このため両親の死後、カスタネット星国から

地球にひとりやってきた。

ラバボー:コメットさんのお供&ペット。

ムーク:メテオさんのお供。

スピカおばさま:コメットさんの母の妹。日本に住んでいる。コメットさんの良

き相談相手でもある。

 

輝きの求道者:35才。この日記の作者。ネメシスさんのいる病院の臨床

薬剤師。

沙也加ママ: コメットさんがお世話になっている藤吉家の主人、景太郎パパの妻

であり、ツヨシくんとネネちゃんのお母さん。

剛(ツヨシ)くん:4才。景太郎パパ達のふたごの兄。

寧々(ネネ)ちゃん:4才。同じくふたごの妹。

 

 1/11 15:00

 わたしが街を歩いていると、黒い車が一軒の家の前に停まっているのが見えた。

その車には金色の屋根がついていた。

「ラバボー、あの立派な車は何?」

「ひめさま、あれは確か霊きゅう車といって死んだ人を運ぶための車だボー。こ

の家で誰か亡くなったんだボー。ほら、あの人達みんな泣いてるボー。あ、こっ

ちに来るボー」

 霊きゅう車がわたし達の横を通りすぎていった。

「あの車はどこに行くの?」

「ボーにもわからないボー」

 わたしはさっきの家の人に聞いてみた。

「あの霊きゅう車、どこに行ったんですか」

「この近くにある火葬場に決まってるだろ。そこでみ〜んな灰になってしまうん

だ」

「ありがとう。元気出してね」

「あんたはかわいい顔をしているね。でも、いつかあんたもああなるんだよ。

それじゃ」

と言ってそのおばさんは家の中に入っていった。

 わたしはこの時まで、自分の死について深く考えたことはなかった。わたし達、

星使いの平均寿命は約150才と、世界一長寿の日本人の約2倍である。そしてラ

バボーなどホシビトは更にその倍の300才が平均寿命で、中には500才まで生き

るホシビトもいるそうだ。なぜそんなに生きられるかというと、まず、星国では

戦争がなく、平和である。次に星力でたいていの病気は治るし、かなり重い病気

でも病院星へ行けば治してくれる。それに星国では地球より多くの輝きを受ける

ことが出来、ストレスも少ない。

からではないかと思われる。そのため、星国ではひとが死ぬことが少なく、死

を意識することが地球より少ないのだ。しかし、ホシビトといえども永遠に生き

られるわけではない。いつかは死ぬのだ。わたしは地球に来て、アフガンで初

めて、死んでいる人を見た。またムシャラクさんが目の前で殺されかけるのも見

た。しかし、この時はまだ

死を自分の事としてとらえることが十分出来ていなかった

わたしはこの時、初めて「自分もいつかは死ぬ」という当たり前のことに気づいた。

 

わたしは何のために生きているんだろう。わたしはいつ死ぬんだろう。

死んだらどこに行くんだろう。死ぬってわたしにどんな意味があるんだろ

 

などとわたしが考えていると、

「コメット!大変なの。ネメシスさんがまた倒れたのよ。今度は重い病気

らしいわ。一緒にお見舞いに行きませんったら、行きません?」

と突然メテオさんの声が聞こえた。

 

「それは大変!もちろん行くわ」

 わたし達はネメシスさんのいる病院へ歩いて向った。

「メテオさん、ちょっと聞いていい?わたし達、死んだらどこへ行くのかな

で生きているのかな

「そんなのわかるわけないわ、ったらないわ。考えたこともないんだもの。何で

んなこと聞くのよ〜。今が楽しければそれで十分じゃない」

「わたし、自分がいつか死ぬんだってことに気づいたものだから…でもそうかん

たんにわかるワケないよね」

「着いたわよ」

 わたし達は3階の個室に向った。メテオさんがドアをノックすると、

「ハイ。どうぞ」

という、小さな声が聞こえた。

ネメシスさん。こんにちわ。メテオです。おじゃまします」

と言ったメテオさんに続いてわたしが中に入ると、ベットに横になっているネメ

シスさんの姿が見えた。

「これはメテオ様。コメット様までご心配をおかけして、すみません」

 ネメシスさんはそう言うと、起き上がろうとした。

「こんにちわ。ネメシスさん。お久しぶりですね。無理しちゃダメですよ」

「コメットの言う通りですよ。そうだわ、頭を少し上げましょう。これでいい

わ。どう?」

「本当にありがとうございます。少しラクになりました」

「メテオさん、本当に優しいのね。」

「私、ネメシスさんのことになると、放っておけなくてやっぱり同じ星国の人

だからかしら」

「私もカスタネット星国のホシビトなのですがちょっと扱いが違うかと思うの

ですが

「ム〜ク!何ですって!どこが違うのよったら違うのよ!」

「ふ、2人とも〜。ここは病室だよ。大きな声だしちゃダメだよ」

「わかってるわよ、コメット〜。あ、ネメシスさんが笑ってるわ」

「良かった。ところで、ネメシスさん、どうして入院されたんですか」

「実は私は肺ガンという病気なのです。とても難しい病気で、よい薬がないそう

です」

「でも最近は今持ってきたような新しい薬も開発されてきて治るようにな

っているんだ」

「か、輝きの求道者さん、いつの間にいらしたんですか」

「こんにちは。ネメシスさん。メテオさん、コメットさん、初めまして。

『輝きの求道者』でキ」

「あ、あなたが輝きの求道者さん。この前はどうも」

「いや〜こちらこそ〜。って危うく何をしにきたか忘れるところでしたよ。

ネメシスさん、これが明日の朝までの薬です。こちらのカプセルがDACH

DGという新薬です。今までの薬より水に溶けやすく、副作用が少なくな

るように改良されたものです。それからこの粉薬が解熱剤と抗生物質です。

食後30分以内に飲んで下さい」

「はい」

「それから、検査の結果が出ました。それによると、肺以外の所にもガン

が出来ており、この地球よりも高度な治療が受けられる星国で治療した方

が良いかと思われます。」

「あ、あの〜その『ガン』ってどんな病気ですか。」

「ごめん、星国ではほとんど見られない病気だったね。私達のからだはた

くさんの小さな細胞から出来ていて、肺は肺、肝臓なら肝臓の細胞から出

来ているんだ。細胞は毎日増えていて、古いものは死んで、新しいものに

入れ代わっているんだ。いつもは増え過ぎないように調節されているんだ

けれど、ガンになると、これがうまくいかなくなって細胞が勝手に増えて

いって、からだを壊していくんんだ。星国では輝きによって守られている

からガンになる人はほとんどいないと思うけれど、地球ではガンになる人

が多くて、日本ではガンで死ぬ人が一番多いんだ。」

「じゃこのまま地球にいたらネメシスさんも死んじゃうってこと?」

「それはわからない。でも星国で治療した方が治る可能性は高いと思う」

「でもどうしたらあ、カスタネット星国の病院星なら、治せるかもしれないわ」

「私もそう思う。だからメテオさん。まずカスタネット星国に連絡して、

ネメシスさんが病院星に入院出来るように手配してくれるかな?それから

星のクルーザーも呼んでおいて欲しいんだけど」

「わかったわ」

「輝きの求道者さん、私は地球に来てから今まで一度も星国に帰ったことがあり

ません。私は実は生まれつき星力を使うことが全く出来ません。そのため、星国

では生きていくことが出来ず、40年前、両親が死んでからは身寄りもなく、たっ

たひとりで逃げるようにして地球に来ました。私は星国では『変わった人』と見

られていましたし、自分でも『みんな星力を使うことが出来るのに、どうして私

だけ出来ないんだろう』って、いつも思ってました。それで地球に行けば、みん

なと同じようになれる、と思っていましたが、何とか生きていくのが精一杯で、やはり、ひとりぼっちでした。最初のころは星国と地球の習慣の違いにもとまど

いましたしそんな私が星国に帰っていいのでしょうか」

何を言ってるのよ!このままでは治らないかもしれないのよ。今帰らな

ければ2度と帰れないかもしれないわ!大丈夫、カスタネット星国王女のこ

わたくしがついているんですもの。誰にもじゃまはさせないわ。ねえ、輝きの

求道者さん」

「私もそう思いますよ。転院の手続きは私がしますのでご心配なく」

「メテオ様。ありがたいお言葉、もったいなく思います。ご存じないかと思いま

すが、実はかつて、お母様からも励ましのお言葉を頂いたことがあるのです。そ

のおかげで私も何とか今日まで生きていくことが出来ました」

「何ですって!あ、あのひとが信じられない」

「でも、人は見かけによらないっていうしあ、ごめん。でもメテオさんのお母

さんにもそういう優しいところがあるんだよ。ネメシスさん、わたしも一緒に行

くから、カスタネット星国に帰ろう」

「コメット様…。わかりました。やっと帰る決心がつきました」

「良かった。じゃあ、早速準備しましょう。メテオさん、何時位に出れそう?」

「これから連絡するからまだわからないけれど、多分5時半か6時位だと思う

わ」

「じゃあ、わたし、5時半にまたここに来ます」

「わかったわ。遅れないでね」

「ええ。みんな、また後で」

「コメット様。ありがとうございました」

 

 わたしは病室を後にすると、沙也加ママのお店に向った。ワケを話すと、

「そう、大変ね。気をつけて行ってらっしゃい。保育園には私がお迎えに行くか

ら」

と言ってくれた。

「いえ。まだ時間がありますし、わたしが行きますから…それより、わたし、ち

ょっと聞きたいことがあるんですけど」

「何かしら」

「わたし達、死んだらどこへ行くのかな、何で生きてるのかなってことなんで

すけど」

「それは難しい質問ね。だって誰も見ていないんですもの。死んでから行く所な

んて。でもきっと楽しい所なんじゃないかしら。それから人はやっぱり、自分の

ためじゃなくて、誰かのために生きていると思うの。それが一番自然だから…」

「ありがとう。それじゃあ、また後で」

 わたしはお店を出ると、ラバボーに言った。

「ラバボー。これからスピカおばさまの所に行くよ。今日は時間がないから、す

ぐ戻るけどね」

「ラバピョンにまた会えるボー。嬉しいボー」

 

 わたし達は星のトンネルでスピカおばさまの家に行き、ラバボーはラバピョン

に会いに行った。わたしはこれまでのことをおばさまに話し、早速聞いてみた。

「私達星国の人は死んだら、その『いのちの輝き』を他の人にあげるの。地球

の人も多分同じだと思うわ。だから、死んだら新しく生まれ変わるんだと思うわ。

どこか別の所に行くのか、違う人になるのかはわからないけれど。私は人は『自

分の輝きを誰かにあげるため、誰かと一緒に輝きを探すため』に生きているカゃないかって思うのよ」

「一緒に輝きを探すひと、って?」

「私の場合は今は夫、そしてお腹の中のこの子もよ。そしてあなたの場合は『本

当の王子様』だと思うの。タンバリン星国の王子様かもしれないけれど。あなた

にとってとても大事なことだと思うわ。だからこれはあなた自身で答えを見つけ

る必要があるのよ。あせらないで、ゆっくりでいいから

「あ、もうこんな時間。帰らなくちゃ。どうもありがとう」

「気をつけてね」

 わたしはラバボーを何とか説得してそこを後にすることが出来た。保育園に着

いた時は5時ちょうどだった。わたしは急いでツヨシ君とネネちゃんを家まで送

って行き、それから病院に向った。病院の前に着いた時は、ちょうど5時半だっ

た。

 

「コメットさん〜」

「ハ〜イ!って輝きの求道者さん!」

ちょうど良かった。これからネメシスさんを私の車に乗せて海岸まで運

ぶから手伝ってもらえるかな?」

「ハイ」

 わたしは玄関わきに停めたワゴン車から降りた輝きの求道者さんと一緒にネメ

シスさんの病室まで行き、メテオさんと一緒にネメシスさんをベットごと車の後

ろまで運んで来た。それから、車の中のメテオさんが星力で作ったカスタネット

星国の病院星にあるのと同じベットにネメシスさんを移し、海岸に向けて出発し

た。5分程で海岸に着くと、大きな帆船が現れ、まばゆい光が車を包み、気が着

いたら船内にいた。車を降りたわたし達の目の前に、

「ようこそ。わがカスタネット星国のクイーンエスメラルダス号、もとい、星の

クルーザーへ」

という声と共にメテオさんのお母さんが現れた。

「お、お母様」

「メテオ。よく来たわね。みなさんをデッキへ御案内して。ネメシスさんは船内

の病室へ運ばせるわ」

「ハイ、お母様」

「それではカスタネット星国へ出発!」

 船内にメテオさんのお母さんの声が響き渡った。

その2へ続く

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