コメットさんの日記 最終章「いのちの最後の輝き」その2

主な登場人物:

コメットさん:13才。ハモニカ星国の王女。「瞳に輝きを持つもの」とさ

れるタンバリン星国のプラネット王子を探しに地球に滞在中。ネメシスさ

ん達と一緒にカスタネット星国の病院星に向かう。

メテオさん:13才。カスタネット星国の王女。コメットさんを追って同じ

くタンバリン星国の王子を探しに地球に滞在中。身寄りのないメネシスさ

んに目をとめ、良き理解者となる。ネメシスさん達と一緒に病院星へ向か

う。

ネメシスさん:65才。星国の人なのに星力を全く使うことが出来ないと

いう、超特殊な性質を持つ。このため両親の死後、カスタネット星国から

地球にひとりやってきた。

ヤベツさん:13才。病院星の王族専用エリア内に入院中の少女。

メテオママ:カスタネット星国の王妃。

ラバボー:コメットさんのお供&ペット。

ムーク:メテオさんのお供。

エウロパ教授:120才。カスタネット星国最高の病院ビトで病院星代表。ヤベツ

さん、ネメシスさんの主治医。

 

輝きの求道者:35才。この日記の作者。ネメシスさんのいた病院の臨床

薬剤師。ネメシスさん達と一緒に病院星へ向かう。

 

 1/11 19:30

 

「コメット。後5分でワープアウトよ」

とメテオさんがわたしに言った。わたしはメテオさん、輝きの求道者さんと一緒

にメテオさんのお母さん主催の夕食会に出ていた。星国の食べ物は3大星国間で

あまり差がなく、地球の食べ物ともよく似ていた。そしてどれもがすごくおいし

い!さすがカスタネット星国最高の料理ビト達が作っただけのことはあるな、と

思う。

「お母様、病院星まであとどれ位?」

「そうね、後数分でワープアウトだから、あと10分くらいかしら」

と言ってメテオさんのお母さんは赤いワインのような飲み物を口にした。

 わたしはカスタネット星国には何度も行ったことがあるが、病院星に行くのは

初めてだった。病院星は各星国に一つづつあって、カスタネット星国の病院星は

カスタネットエネルギー星系の第4惑星で直径は地球の0.85倍、表面の85%

海である。その隣にはカスタネット星国の王宮がある第3惑星のカスタネット星

があって、表面の95%が海でおおわれている。カスタネット星の直径は地球の

1.01倍、公転周期は366日、自転周期は24時間1分と、海の面積が広いほかは

地球にとてもよく似ていた。

「本船は間もなくワープアウトし、1分後に病院星に向けて小ワープします。到

着まで後約7分です」

と船内アナウンスがあった。

「さあ、皆さん、ブリッジに上がって。下船の準備を」

「ハイ。お母様。ムーク。コメット。行くわよ。輝きの求道者さんも」

「ハイ。姫様」

「ラバボー。行くよ」

「ウン、ウン、このデザートはホントにおいしいボー。え、ひめさま、待ってだ

ボー」

 

 わたし達はブリッジに通じるエレベーターに乗った。ドアが開くと目の前の窓

にカスタネット星国の緑色の渦巻きが大きく広がっていた。それからすぐに小ワ

ープし、約3分後、地球より少し小さい病院星の姿が見えてきた。

 

1/11 19:45

 病院星に着いたわたし達は100階建てのこの星最大の病院に向った。ネメシス

さんはすぐに100階の王族専用エリア内の個室に運ばれた。一方、わたし達はこ

この病院ビトの長で、この星の代表のエウロパ教授の部屋に案内された。

 

「これは、これはメテオ様。お久しぶりです。ようこそ、お出で下さいました」

「相変わらず元気そうね。紹介するわ。こちらが私の友達でハモニカ星国

のコメット王女、そしてこちらがネメシスさんが地球で入院していた病院

の臨床薬剤師の輝きの求道者さん」

「初めまして。コメットです。わたし、カスタネット星国には行ったこと

があるけれど、ここに来るのは初めてです」

「初めまして。エウロパです。コメット様のことはメテオ様から聞いておりまし

た」

「初めまして。エトワール鎌倉病院の臨床薬剤師の輝きの求道者です。カ

スタネット星国、いやトライアングル星雲医学界最高権威にお目にかかれ

て光栄です」

「輝きの求道者さん、初めまして。病院ビトという立場から、薬剤師というお仕

事について、あなたに是非一度お話しを伺いたいと思っていました」

 

 星国では病気を治すのには薬ではなく、普通星力が使われる。まれに薬草が使

われることもあるが、それは病院ビトが扱うため、星国には薬剤師という職業は

存在しないのだ。病院ビトが薬剤師を兼ねている、と言っていいだろう。

 

「ありがとうございます。がしかし、それは後でということにして、まずはこれ

が当病院でのネメシスさんのカルテ及び検査データーです」

と言って輝きの求道者さんはエウロパ教授にメモリースティックを手渡した。

「どうもありがとうございます。早速治療の参考にさせて頂きます。それから、

今後の予定ですが、これから明日にかけて、様々な検査を行います。その結果を

元に治療方針を決めたいと思います」

「エウロパ教授、ネメシスさんは治りますか」

「検査結果を見ないと何とも言えませんが、ここには最高のスタッフがそろって

います。彼等の星力できっと治せると思いますよ」

「よろしくお願いします」

「お2人はネメシスさんの病室に行かれますか。輝きの求道者さんはここで私とお話しがありますので」

「ええ。もちろん」

「それでは君、お2人をネメシスさんの病室まで案内してくれ」

「わかりました。どうぞこちらへ」

「それでは失礼するわ」「失礼します」

「またおいで下さい」

 

 部屋を出たわたし達は看護婦ビトの案内で、ネメシスさんの病室へ向った。カ

スタネット星国の看護婦ビトはハモニカ星国と違い、地球の看護婦さんとよく似

た服装をしていた。ただし、色は白ではなく、明るい緑だった。わたしはこの色

もなかなかいいな、と思った。100階に通じるエレベーターに向って歩きながら、

わたしは看護婦ビトに聞いてみた。

「看護婦ビトさん、ちょっとお聞きしていいですか。ひとが亡くなる瞬間を見た

ことがありますか

「私はこの病院に来て5年になりますが、もう何度も見ました」

「死ぬってどういうことだと思いますか」

「難しい質問ですね。でも、私が見たほとんどの人はとても穏やかに死んでいき

ました。不思議です。もっと苦しむものだと思っていたのに…。そしてみんな『

のちの最後の輝き』を持っているんです」

いのちの最後の輝き

「言葉で説明するのはとても難しいのですが、ひとによって強弱はあるのですが、

ひとが亡くなる直前に見せる輝きのことです。私は一度だけ、ある人が亡くなっ

た時、その輝きが出ていくのを見たことがあります」

「その輝きはどこへ行ったの?」

「わかりません。もしかしたら、他の人の所に行ったのかもしれませんが…」

「ありがとう。とてもいいお話しだったわ。お名前は」

「カレンと申します。よろしくお願い致します。もうすぐエレベーターです」

「こちらこそ」

 わたし達はエレベーターで100階に登った。エレベーターホールのすぐわきに

はナースステーションがあり、その先にはたくさんの病室があった。カレンさん

の話ではこの病院には約1万人の患者が入院しているという。

「ここは王族専用のエリアで、病室は全て個室となっています。今この階にはネ

メシスさんの他にはもう一人、ヤベツさんという少女がいるだけです」

「ヤベツ?聞いたことのない名前だわ。どこの星国の王女かしら。まあ、カスタ

ネット星国には小星国が250もあるからさすがの私でも全部は覚えてないけど

ムーク、聞いたことある?」

「いいえ、ございません。もしや小星国の王女様ではないのでは〜」

「カレン。その子は何歳なの?」

13才と聞いています」

「私と同じじゃない。本人は何と言っているの」

「それが…あ、ここです」

 そう言ってカレンさんはドアを指差した。

 わたしがふとその部屋の隣を見ると、小さい明かりがついていて、誰かがいる

ようだった。

「カレンさん、あれがヤベツさんの病室なの?」

「そうです」

「後で行っていい?」

「今日はもうおやすみになられると思いますので明日にされた方がよろしいかと

思います」

「わかりました」

「どうぞ、お入り下さい。まだ検査中ですが、大丈夫です」

とカレンさんがドアをあけてくれた

「失礼」「失礼します」

 わたし達が中に入ると、白い台のようなものに寝かされ、大勢の人に囲まれた

ネメシスさんが見えた。からだのあちこちにセンサーのようなものがつけられて

おり、2人の病院ビトが手をかざしていた。

「あの病院ビトは何をしているの?」

「あの2人は診断ビトと言って、患者さんの身体の状態を調べることが特に優れ

ている病院ビトです。病院ビトにはこの他に病気を治すことが特に優れている治

療ビトがいます。治療ビトは得意分野によって更に内科、外科、精神科の3つに

大きく分かれます。でも優れた病院ビトはこの4つが全てうまく出来るそうです。

院長のエウロパ先生は診断ビトとしても、治療ビトとしても最高の輝きを持って

いると思います」

 

「何か、わたし達にお手伝い出来ること、ありませんか?」

 それを聞いた診断ビトの一人がこちらに来て言った。

「コメット様。はじめまして。今、予備的な診断がほぼ終わりました。これから

『星力の感受性チェック』を行います」

「星力の感受性チェックって?」

「星力で病気を治療する際、患者さんによって、また病気によって、最も効果の

ある星力はそれぞれ異なります。場合によってはある人からの星力では全く効果

がなく、別の人からの星力では非常に良く効く、ということもございます。つま

り、予備的診断の結果、効果のありそうな星力を持つ何人かの治療ビトに、患者

さんに星力をあててもらい、その中から最も効果のある星力を持つ人を選び出す

ことなのです」

「ということは私達も試していいってこと?」

「もちろんでございます。メテオ様。お二人は星国の王女として、ここの治療ビ

ト以上の星使いでいらっしゃいます。是非お願いいたします」

「そうと決まれば、早速星力を集めに行くわよ。ムーク、いらっしゃい」

「はい」

「ラバボーも行くよ」

「わかったボー」

「あ、メテオ様」

「わかってるわよ。エレベーターで屋上に行けるんでしょ」

 わたし達は部屋から出ると、早速屋上へ向かい、そこから上空に飛び上がった。

 

「これで十分だと思うわ。コメット、お先に〜」

「メテオさん、あ、こっちももういいと思うわ。ラバボー、戻るよ」

「ハイ、ひめさま。これでネメシスさんが早く元気になればいいボー」

「そうだね」

 

 星国では地球よりも早く、より多くの星力を集めることが出来る。わたし達は

ほぼ同時に星力を集め始めたが、ここはカスタネット星国なのでメテオさんの方

が少し早く星力を集めることが出来たようだ。

 病室に戻ったわたし達は早速集めた星力をネメシスさんに試してみた。まずは

メテオさんがバトンを胸の辺りに向けて星力を照射した。

「シュテルン!」

 すると、「おお!」という診断ビトの声があがった。

「さすがはメテオ様。これまでで最も高い感受性です」

「まあ、そうだと思ったわ。コメット、次はあなたの番よ。でも一つ言っとくけ

ど、ここはカスタネット星国だし、ネメシスさんはカスタネット星国の人だから、

普通に考えると、わたくしの星力のほうがあなたよりも感受性が高いはずだわ。

でも、まあ、一応やってみて」

「それじゃ〜。ヌイビトさん、わたしを看護婦ビトにして」

とわたしは言ってヌイビトを呼び出し、カスタネット星国の看護婦ビトと同じ姿

になった。

「ひめさま。その手があったかボー」

「幾千億の星の子達。キラ星の輝きを。そしてあまたの力を。どうかわたしの星力に変えて。エトワール!」

と言ってバトンをネメシスさんに向けると、ピンク色の輝きが胸の辺りに注がれ

た。

「コメット様の星力もメテオ様に次いで高い感受性です」

「やっぱり私の方が感受性が高かったようね。これで試験は終わりなの?」

「いや、次は私がー」

「輝きの求道者さん!あ、星力を集めに行かれてたのね」

「いや。まずは愛力を試してみようと思ってね。輝きの元である方。私に力を下

さい。あなたのもっている力をどうか私の愛力に変えて。アガパオー!」

 輝きの求道者さんのバトンからオレンジ色の光が放たれた。

「おお、これはメテオ様とほとんど同じ感受性!しかし、メテオさまにはわずか

に及ばず

「ということはわたくしの星力は輝きの求道者さんの愛力より感受性が高いって

こと?」

「その通りです。メテオ様」

「エウロパ教授」

「それでは私も一つ試してみましょう。シュテルン!」

 エウロパ教授の手から緑色の光が放たれた。

「さすがはエウロパ先生、とても高い感受性です。がしかし

「やはりメテオ様にはわずかに及ばず、ですか

とエウロパ教授は星力の照射をやめて言った。

「すご〜い!メテオさん、カスタネット星国最高の病院ビトのエウロパ教授より

感受性が高いなんて」

「まあ〜。当然ですわ。わたくしのネメシスさんへの思いがそれだけ強いってこ

とネ。エウロパ教授、これで試験は終わりかしら?」

「はい。今日の検査はほぼ終わりました。ネメシスさんの病気はかなり重いこと

がわかりましたので、これから一日中交替で星力による治療を行います。そこで

申し訳ありませんが、メテオ様、コメット様、輝きの求道者さんの順で、お一人

最大一時間づつ。ネメシスさんに星力をあてて頂けないでしょうか」

「もちろんよ。それでネメシスさんが治るのなら、一時間でも二時間でもやるわ

よ。ねえ、コメット」

 わたしは黙ってうなずいた。

「星力による治療はかなり体力及び星力を消費しますので、時間はお一人一時間

以内にして下さい。決してご無理をされないように。ご負担を感じられたらすぐに交替して下さい」

「わかったわ」

「エウロパ教授、私は一時間半はいけると思いますが」

「輝きの求道者さん、そうですね。あなたなら大丈夫かもしれませんね。それ

では最大一時間半でお願いします」

「わかりました」

「では、メテオ様、よろしくお願いいたします。先程と同じように、胸の辺りを

中心に星力をあて続けて下さい。一時間後に交替して頂きますが、必要ならそれまでにお知らせ下さい。集中力がそがれるといけませんから、私達は席をはずし

ますので

「じゃあ、始めるわ。シュテルン!」

「メテオさん、がんばってね」

「ええ」

 

 わたし達はエウロパ教授の案内で99階の王族専用のゲストルームに向った。

「ここは王族方がこの病院に滞在される時に使われます。こちらがコメット様、

その隣が輝きの求道者さん、そしてあの一番奥の部屋がメテオ様のお部屋です。

今は21時すぎですので、明日は9時ごろからお3方に治療をして頂くことにな

るかと思います。よろしくお願い致します。それから明日朝のお食事はゲストル

ーム内の食堂でとられますか?ルームサービスも可能ですが」

「わたしは食堂に行くわ」

「私も」

「かしこまりました。それでは失礼いたします。あ、225分前にはお迎えの者

が参ります」

「自分で行けるからいいわ」

「では何かあればこちらからご連絡します。では」

「わかったわ」

「じゃー僕もひとまずこれで」

「あ、待って、輝きの求道者さん。聞きたいことがあるの」

「何かい?」

「生きるってどういうこと?死ぬってどういうこと?ってことなんですけど」

「悪いけど、今、僕の口からそれを言うわけにはいかないんだ」

「どうして?」

「これは君にとってとても大切なことだから、自分で答えを見つけて欲しいんだ。

これも星の導きでね、今僕が言ってしまうと君が自分で見つけるのを邪魔してし

まう可能性があるんだ。だから多分もう少し後で君に話すことになると思う。で

ももちろん色んな人の意見を聞くことは大切なことだと思う。でも最終的には自

分で見つけて欲しいんだ。いや君にはきっと出来ると信じている」

「そう

「でもヒントくらいは話しておこう。その答えのカギはネメシスさんとヤベツ

さんが持っていると思うよ」

「ヤベツさんて、どんな人?どうして入院しているの?」

「明日会えばわかるよ。じゃ〜また後で」

「もう、輝きの求道者さんたら

 

 わたしは部屋に入った。王族専用だけあって結構広かった。わたしはベットの

はしに座ってもの思いにふけっているといつのまにか眠ってしまった

 

その頃メテオさんは何とか星力による照射を続けていた。

(星力を照射し続けるのがこんなに大変だとは思わなかったわ。エウロパ教授の

言う通り、星力による治療はかなり体力を使うわね。でもネメシスさん、苦しそ

う。それに比べれば、これ位

(メテオ様。本当にありがとうございます。わざわざここまで来て頂いた上にこ

のようなことまで。メテオ様からの星力、身にしみます。でもご無理はなさら

ないで下さいね)

(ネメシスさん!起きてらしたのね。私は大丈夫よ。今どんな感じ?苦しくな

い?)

(メテオ様の治療が始まってから、胸の苦しさが少しラクになったような気が致

します)

(そう、良かったわ。このわたくしがきっと治して差し上げますわ。ねえ、ネ

メシスさん、生きるってどういうこと?死ぬってどういうこと?)

(メテオ様。あなた様がそのようなことをお聞きになるとは思っておりませんで

した。生きるとはつらいことでございます。もちろんそれだけではございま

せんが私のこれまでの人生はそうでした。カスタネット星国の王女でいらっし

ゃいますメテオ様にはお分かり頂けないかと思いますが、私はこれまでたくさん

の別れや肉体的、精神的苦しみ、寂しさ、悲しみ、劣等感を経験してきました。

もう死んでしまいたい、と思ったことも何度かございます。そしてどんなに現実

が厳しくてもそれを受け入れて前に進まなければなりません)

 

「ひめさま。電話だボー」

 わたしははっと目を覚ました。急いで内線電話をとる。

「コメットです」

「コメット様。後5分で交替の時間となります」

「わかりました。カレンさん。すぐ行きます」

 わたしは急いでネメシスさんの病室に行き、メテオさんと交替した。メテオさ

んはかなり疲れた様子で

「ああ〜疲れた。もう寝るわ。コメット、これは思ったより体力を使うわ。気を

つけてね」と言った。

「メテオさん、大丈夫?」

「ええ。何とか一時間もったわ。一時はどうなるかと思ったけど、ネメシスさん

のおかげよ。じゃーね」

 

 わたしは星力をあてながら、ネメシスさんをじっと見た。まだ苦しそうだけど、

さっきよりは少し穏やかになったような気がした。そして星力でこころに聞いて

みた。

(ネメシスさん、生きるってどんなこと?死ぬってどんなこと?)

(コメット様。メテオ様も先程同じことを聞かれてました。あ、これは誰にも言

わないという約束でしたね。今のは聞かなかったことにして下さい)

(メテオさんも同じことを聞いていたなんておかげんはいかがですか?)

「この治療が始まってから、胸の苦しさが少しラクになりました。

 生きるとはつらいことでございます。もちろんそれだけではございませんが

私のこれまでの人生はそうでした。私はこれまでたくさんの別れや肉体的、精神

的苦しみ、寂しさ、悲しみ、劣等感などを経験してきました。もう死んでしま

いたい、と思ったことも何度かございます。一番つらかったのは両親が死んだ

時でした。それまで両親が支えてくれたお影で何とか星国で暮らしてこれました

が、他に身寄りのない私はたった一人で地球に行くしか生きることは出来ません

でした。この時程自分が星力を使えないことを恨んだ事はありません。ほんとう

に自分が惨めで、なさけなく思えました。当時の私にとって両親の死は「絶望」、

「不安」、「孤独」、「恐れ」以外の何物でもありませんでした。

 でもしかし、コメット様。それでも私はこうして生きていくことが出来た、

否、生かされているのでございます。こんな私に目を止め、支えて下さる方々

によってもちろん、こうして今、星力を注いでいらっしゃるコメット様もその

お一人です。私はメテオ様とお会いしてから、「私が星力を使えないのは、も

しかしたら何か意味があるのかもしれない」と思うようになりました。どん

な意味かはまだわかりませんが

(ありがとう。とても大事なことを聴いたと思うわ。おやすみなさい)

 

 わたしは星力をあて続けながら再びネメシスさんをじっと見た。まだ苦しそう

だった。時々咳きこんだりしていて、見ているこちらでつらくなってきてしま

った。

(どうすればいいんだろう)

と思った時、

(ネメシスさんと一緒にいてみてごらん。君には出来るハズだ)

との声が聞こえた。

「輝きの求道者さん!」

とわたしは思わず言ってしまったが、もちろん、部屋の中にはネメシスさんの他

には誰もいなかった。

(そうだわ。ネメシスさんとただ一緒にいればいいんだわ)

 わたしは一旦目を閉じ、ネメシスさんの輝きを感じ、「一緒にいて」みた。する

と、

自分が星力を出しているのではなく、星力がネメシスさんによって

「引き出されている」のを感じ、ラクになった。

(メテオさんの言っていた「ネメシスさんのおかげ」ってこれのことね)

「ラバボー。これなら一時間当て続けられそうよ」

「ひめさま。スゴイボー。でもカレンさんの話ではエウロパ教授は2時間も当て

続けられるそうだボー。さすがカスタネット星国最高の病院ビトだボー」

「そうね」

 

 23時ごろ、輝きの求道者さんが現れ、交替したが、わたしはまだ後30分は出

来そうに思えた。それから自分の部屋に戻ったが、やはりそれなりに疲れてはい

たようで、すぐに眠ってしまった。その3に続く

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