コメットさんの日記 最終章「いのちの最後の輝き」(最新版)その3

主な登場人物:

コメットさん:13才。ハモニカ星国の王女。「瞳に輝きを持つもの」とさ

れるタンバリン星国のプラネット王子を探しに地球にやってきた。ネメシ

スさん達と一緒にカスタネット星国の病院星に滞在中。

メテオさん:13才。カスタネット星国の王女。コメットさんを追って同じ

くタンバリン星国の王子を探しに地球にやってきた。身寄りのないメネシ

スさんに目をとめ、良き理解者となる。ネメシスさん達と一緒に病院星に

滞在中。カスタネット星国の王宮があるカスタネット星の海底都市、アト

ランティワナで生まれた。

ネメシスさん:65才。星国の人なのに星力を全く使うことが出来ないと

いう、超特殊な性質を持つ。このため両親の死後、故郷のアトランティワ

ナから地球にひとりやってきた。

ヤベツさん:13才。病院星の王族専用エリア内に入院中の少女。入院中にコメッ

トさん達と出会う。

メテオママ:カスタネット星国の王妃。

コメットさんのお母さん:ハモニカ星国の王妃。初代コメットさんでもある。

ラバボー:コメットさんのお供&ペット。

ムーク:メテオさんのお供。

エウロパ教授:120才。カスタネット星国最高の病院ビトで病院星代表。ヤベ

ツさん、ネメシスさんの主治医。

 

輝きの求道者:35才。この日記の作者。ネメシスさんのいた病院の臨床

薬剤師。ネメシスさん達と一緒に病院星に滞在中。

 

1.13  8:00

「ひめさま。そろそろ起きた方がいいボー」

「おはよう、ラバボー」

 わたしはすぐに起きて身支度をし、食堂へ急いだ。丁度8時半に食堂に入った

時には既にメテオさんと輝きの求道者さんが席についていた。

「お早う。コメット。ちょっと遅かったわね。もう少しでお先に頂いてしまうと

ころだったわよ」

「ごめんなさい。メテオさん。30分後に治療を始めるんだったね」

「そうなのよ。ネメシスさん、よく眠れたかしら」

「さっきエウロパ教授から聴いた話だけど、ガン細胞の数はもうかなり減ってき

ているそうだ。この調子でいけば明日にも全部消えるかもしれない、と言ってた

よ。あ、おはよう、コメットさん」

「お早うございます、輝きの求道者さん。良かったですね。やっぱりネメシスさ

んをここに連れてきて」

「そうだね。後23日で退院出来るといいね」

「ええ」

「そういえばコメット、私達、朝ごはんを一緒に食べるのって初めてじゃない?」

「アフガンに行った時はお昼だったし…。確かにそうね。このパンやチーズ、と

ってもおいしいわ」

「まあ〜ここは王族専用のゲストルームよ。カスタネット星国の中でも最高級の

料理ビトが作ってるんだから当然ですわったら、当然ですわ。地球での食事もお

いしかったけれど、やっぱり自分の国のものが一番おいしく感じるわ。このシー

フードサラダもよ」

「そう言えばメテオさん、ネメシスさんは隣のカスタネット星の海底都市出身な

んだってね。エウロパ教授から聞いたけど」

「そうよ。私もそこで生まれたのよ」

「へえ〜。そうなんだ」

「そこはアトランティワナと言って、海のお城があるのよ。私はそこで生まれた

の。ふだんは陸にあるシュテルン城にいるんだけど、カスタネット星国の王妃は

子供を生む時はそこに行く習慣になってるみたいよ。別荘みたいなもんね。ねえ、

ムーク」

「そうです。やはり静かで落ち付いた環境が子供を生むのには最適だからだと思

われます〜。それにしてもメテオ様の生まれたばかりのかわいいお顔、思い出さ

れますな〜」

「何よ、それじゃ今は違うみたいじゃない」

「とんでもございません。そんなことは言っておりませ〜ん。ただわたくしは

「そうか。だ〜からメテオさんは地球にも竜宮城があると思っていたんだボー。

でもホントは

(ラバボー。メテオさんの夢をこわしちゃいけないよ)

(ひめさま、で、でも〜)

(それに、わたし達だって地球の海を全部調べたわけじゃないもの。本当にある

かもしれないわ)

(そう言われれば確かに〜)

「ラバボー。何か言った?」

「え、いや、何でもないボー」

ねえー。メテオさん、わたし、ネメシスさんの病気が治ったら、アトランティ

ワナに行ってみたい〜☆。ねえ、ラバボー

「ボーもその竜宮城、じゃなかった、アトランティワナに行ってみたいボー」(ひ

めさま、ありがとうボー)

(いいの。だって本当に行ってみたいんだもの)

「ええ、いいわ。このわたくしが亀、もとい、星のクルーザーで案内して差し上

げますわよ」

ありがとう。メテオさん

「あれ、もうこんな時間。私、もうすぐ失礼するわ。ムーク、急ぐわよ」

「はい、姫様」

 それから間もなく、メテオさん達はネメシスさんの病室に向った。一方、わた

し達はゆっくり食事をした後、星力を集めに出かけた。戻ってきて自分の部屋に

入ろうとした時、入り口の方から、髪をふり乱した、一人の少女がこちらに駆け

込んできた。

「助けて!お願い、中に入れて!追いかけられているの」「さ、早く」

 わたしがドアを閉めて間もなく、ドアをノックする音が聞こえた。少女が奥に

入ったことを確認してからドアを開けると、2人の病院ビトがいた。

「あ、すみません。ここはコメット様のお部屋でしたか。失礼ですが、少し前

にコメット様と同じ位の歳の少女をご覧になりませんでしたか。王室専用エリア

に入院していらしたのですが、そこを抜け出して、このエリア内に入ったと思わ

れるのですが」

「さあ〜見かけなかったけれど。その少女は何で入院しているの?」

「おかわいそうに、その方は生まれた時から『死にたい病』にかかっていらっし

ゃるのです。これまでに約300回も自殺しようとされました。早く見つけないと、

また自殺を試みられるかもしれません。もし、お見かけになったらお知らせ下さ

い」

「わ、わかったわ」

 わたしは頭をなぐられたような強い衝撃を受けた。「死にたい病」とは原因は多

くの場合不明だが、時々発作のように急に死にたくなってしまう病気で、星国で

は一兆人に一人という、とても珍しい病気だった。地球ではもっと多いらしい。

(ヤベツさんは『死にたい病』で入院していたなんて…)

 急いで奥に行ったわたしは目を丸くした。

ヤベツさん!何をしているの!

部屋の中ではヤベツさんが果物ナイフを自分の胸につき刺そうとしていた!

「お願い!私を死なせて!」

 わたしはすぐに持っていたバトンからピンクの「星の絆」を出し、ヤベツさん

の右手を縛ってナイフを落とさせた。が、少女は左手にバトンを出し、わたしが

近寄る前にそれから出た緑色の光で「星の絆」を切り、窓から飛び下りようとし

た。わたしはすぐに「星の絆」で彼女の体をバトンごと覆い、身動き出来ないようにした。

「ヤベツさん、初めまして。ハモニカ星国王女のコメットです。こんなことをし

てごめんなさい。でも、たった一つしかないあなたのいのちを守るにはこれしか

なかったと思うの」

 わたしは星力を注ぎながらそう言った。顔をよく見ると、何となくメテオさん

に似ているような気もしたが、薄汚れており、体のあちこちには傷あとがあった。

 ヤベツさんは少し落ち着きを取り戻してきたようだった、わたしは言葉を続け

た。

「ヤベツさん、どうしてこんなことをしたの?」

―――

 ヤベツさんは黙ったままだった。

「そうだよね。まだ会ったばかりだもの。と〜ってもつらいことがあったと思う

けれど、そんなのそうかんたんに話せないよね。でも、もう一度聴くよ。

ヤベツさん、どうしてこんなことをしたの?もし良かったら話して」

――

 しかしヤベツさんはまだ黙ったままだった。

「わかったわ。無理に話さなくてもいいのよ。でも、あなたに是非会って欲しい

人がいるの。アトランティワナっていう海底都市で生まれたネメシスさん。とて

も難しい病気でここに入院していて今、星力で治療を受けているわ。彼女は今、

必死で生きようとしているわ。その『いのちの輝き』をあなたにも見て欲しいの」

「アトランティワナ」という言葉を聞いた時、ヤベツさんの顔色が変わったのを

わたしは見のがさなかった。わたしは「星の絆」を徐々に消すと、更に言葉を続

けた。

「ヤベツさん、もしかしてあなたもアトランティワナで生まれたの?」

ヤベツさんは黙ったままうなずいた。

「ヤベツさん、じゃあ、わたしと一緒にネメシスさんの部屋に行ってみない?ネ

メシスさんは昨日わたしと一緒に地球から来たのよ。ネメシスさんは星国の人な

のに、星力を全然使えないの。だから地球で暮らすしかなかったそうだけど、と

ても苦労されたみたい。何度か死にたいと思ったこともあるって…」

ヤベツさんは少し考えてから、

「行くわ」

と小さな声で言った。

「ありがとう。あ、でも、このままじゃまた見つかっちゃうかもしれないわ。そ

うだ、わたしの友達のメテオさんの姿になって見ない?病院ビトさんには後でわ

たしから話しておくから」

「ええ」(メテオさんって、まさか

 わたしはヤベツさんの表情が再び少し曇ったのに気づいた。

「ヤベツさん、どうかした?やめてもいいよ」

「何でもないわ。私をメテオさんにして。生まれ変わりたいの」

 わたしは早速ヌイビトを呼び出し、ヤベツさんをメテオさんの姿にしてもらっ

た。

「よく似合ってるわ。さ、行きましょ」

 わたし達はネメシスさんの病室へ向った。途中、ナースステーションを通過し

たが、ヤベツさんに気づく人は誰もいなかった。

(ラバボー。こうしてみると、ヤベツさんってメテオさんに本当に良く似てるね

ー)

(ツヨシ君とネネちゃんより似てるボー。でも、輝きセンサーで見ると全然違う

ボー。ヤベツさんの輝きはすごく弱いボー)

(そうだよね〜。わたしでもわかるもの)

「あ、コメット様。メテオ様。どちらへ」

 ヤベツさんの病室のドアの前にいた病院ビトが言った。

「ネメシスさんの部屋へ。もうすぐ交替の時間だから…」

「そうでしたね。あ、メテオ様。あなた様位の年の、ヤベツという少女をお見か

けになりませんでしたか?」

ヤベツさんは黙って首を横にふった。

「わたしも見ていないわ。さ、行きましょ。メテオさん」

 わたし達は急いで隣のネメシスさんの部屋に入り、ドアを閉めた。

「ヒ、姫様。どうしてここにって、どうしてここに姫様が2人もいっらしゃる

のですか?」

「え、何?ムーク、あ、もうすぐ交替の時間だわ。コメットはまだなの?」

「メテオさん。ごめ〜ん。遅くなって。実は

「ン?あなた、誰?どうしてカスタネット星国王女のこのわたくしと同じ格好を

しているの?」

 これを聞いたヤベツさんは星力を足にかけるとすごい勢いで部屋の外に出

ていった。

こらあ、待ちなさあ〜い!」

 メテオさんは自分も足に星力をかけると猛スピードで飛び出していった。

「あ、待って、メテオさ〜ん」

 わたしも急いでメテオさんの後を追おうとしたが、ネメシスさんに気づくと、さっきの病院ビトに治療を頼み、星力を足にかけて2人の後を追いかけた。

 その頃、ヤベツさんは廊下の端の壁にせまっていた。廊下は右に続いていた。

メテオさんはバトンから「星の絆」を出し、ヤベツさんを捕まえようとした。タ

イミングは微妙だったが、曲がり角でヤベツさんが減速した分、何とか捕らえる

ことが出来た。

捕まえたわ!さあ、あなたは、誰なの?白状なさいったら、白状なさ

い!

「私はあなたの双子の妹、ヤベツよ」

な、何ですって!そんなはずはないわ。だってお母さまから何も聞いて

いないもの。デタラメを言わないでちょうだい」

「あなたがそういうのも無理はないわ。私は生まれた時から『死にたい病』にか

かっていて、すぐにこの病院に入院させられたんだもの。それから私はずっ

〜とひとりぼっち。『あなたの』お母さんがたまにたずねてくれるだけだっ

たわ。そりゃそうよね。カスタネット星国の王妃なんだもの。こんな私な

んかにかまっているヒマなんてないハズだわ」

 そう言ったヤベツさんから青い光が出て「星の絆」を断ち切った。メテオさん

の顔が真っ青になった。

そして私は7才の時、偶然にも自分がカスタネット星国の王女であるこ

と、『メテオ』っていう双子の姉がいることを知ってしまったのよ。私はシ

ョックを受け、病気も悪くなったわ。その頃から今までに300回位も死の

うとしたのよ。だってこんな自分がなぜ生きているのか、こんなにつらく、

悲しいのに、なぜ生きなきゃいけないのか、わからないもの。私はあな

たを恨んだわ。いや、今でも恨んでいるわ。だってあなたは今、カスタネ

ット星国の王女。トライアングル星雲の未来を担う者として期待され、そ

れにふさわしい輝きを持っているわ。でも私は、カスタネット星国の王女

なのにこんな所に閉じ込められ、ひとりぼっちで、誰からも期待されず、

誰も私が王女であることを知らないのよ。あなたさえいなければ、私はカ

スタネット星国の王女として、もっと違う扱いを受けていたハズよ。さあ、

私と一緒に死んで

ヤベツさんはメテオさんにバトンを向けると氷のように冷たい声で

「シュ・テ・ル・ン」

と言った。するとバトンから緑ではなく、青い光が出てメテオさんに向っていっ

た。と同時に反対側からオレンジと緑とピンクの光がやってきて、メテオさんの

すぐ手前で青い光と衝突し、大きな爆発が起きて建物全体が揺れた。

「2人とも大丈夫か〜」

「メテオさん、しっかりして!」

「どうやら2人とも気絶しているだけで、大丈夫ですね。間に合って良かった」

「エウロパ教授、輝きの求道者さん!どうしてここに

「ヤベツさんから出た光は『デス・ビーム』といって『死の力』から来ているん

だよ。もし我々が間に合わなかったら、メテオさんは死んでいたかもしれない。

何せ3人の星力を破って、更にメテオさんのはった生体バリヤーも破る程強力だ

ったんだから。病気によってこれまでたまっていた『死の力』がメテオさんに

向って一気に放出されたからだと思うけど」

「輝きの求道者さん、申し訳ありませんが、メテオ様を下の階のお部屋へ運んで

頂けますか。私はヤベツ様をお部屋に運びますので」

「わかりました」

「エウロパ教授、わたしはと言いかけてようやくネメシスさんの治療を代わってもらっていたことに気づいたわたしはあわてて「ネメシスさんの治療に戻ります」

と言い直した。

「よろしくお願い致します。ではまた後で」

 

 わたしはネメシスさんの部屋に戻ると治療を交替し、それからネメシスさんに

メテオさん達のことを話した。ネメシスさんのガンは既に半分以下に縮小し、か

らだを少し起こせるまでになっていた。

 

「そうでしたか。ヤベツ様、おかわいそうに。お気持ち、よくわかります。コ

メット様、私に出来ることがありましたら、おっしゃって下さい」

「それでは、ヤベツさんに会って頂けますか。今は直接会うのは無理みたいなの

で、ネメシスさんの心の声を、届けてあげて下さい」

「わかりました」

「でも良かった。ネメシスさんが元気になってきて」

「ありがとうございます。コメット様を始め、皆様のおかげです」

 

 11時近くに、輝きの求道者さんが交替しにやってきた。ヤベツさんとの一件で

星力をかなり使っていたため、有り難かった。

「輝きの求道者さん、メテオさんの具合はどうですか」

「ああ、もうベットから起きあがれるまでに回復しているよ。でもかなり精神的

ショックを受けているようだから、『一緒にいて』あげてくれるかな」

「わかりました」

「じゃあ、君もちょっと疲れているようだから、星力をあげるよ。私の愛力を

星力に変えて、アガパオー」

「輝きの求道者さん、ありがとう。元気になったわ」

「じゃあ、また後で」

「ネメシスさん、失礼します」

 わたしはメテオさんの部屋に向った。中に入ると輝きの求道者さんの言う通り、

メテオさんは既に起きていたが、いつもの元気はまだなかった。

「コメット、私、どうしたらいいの?」

 メテオさんはそう言って泣き出してしまった。

「メテオさん。メテオさんが悪いんじゃないよ。知らなかっただけだもの」

「コメット、だって私

 わたしはメテオさんの手をやさしくとって言った。

「だいじょうぶだよ。わたしがいっしょにいてあげるから

「コメット。ありがとう。少し元気が出てきたわ。でも、お母様はどうしてあ

の娘のことを話してくれなかったのかしら

「それはね、メテオ。あなたを守りたかったからよ」

「お母様!」

「エウロパ教授からの連絡で、あなたがあの娘に殺されそうになったと聞いて、

急いで来たのよ。メテオ、あなたはとうとうあの娘の秘密を知ってしまったのね。

私から話さなくてご免ね。いずれ話そうと思っていたことだけれど、よく聞いて

ちょうだい。

 あの娘はへその緒が首にからまって生まれてきたの。苦しそうだったわ。

それですぐ病院星に運んで治療をさせたわ。そこで『死にたい病』である

ことがわかったのよ。あの娘があなたを恨んでいることはわかっていたわ。

あの娘のことをあなたに話せば、あなたはきっとあの娘に会おうとするハ

ズ。そうなれば、さっきみたいにあの娘に『殺されて』しまうかもしれな

い。そんなの絶対にイヤだわ。メテオ。私がこれまであなたに厳しく接し

てきたのは、あなたにはトライアングル星雲の未来を担うにふさわしい、

たくましく、強い女性になって欲しかったからなのよ

「お、お母様、私のこと、そこまで

「でも、今あなたは家族以外ではエウロパ教授と輝きの求道者さんしか知

らない秘密を知ってしまった。これも星の導きかもしれないわ。メテオ。

今のあなたなら、もしかしたらあの娘を助けられるかもしれないわ。心配

だけど

 メテオさんのお母さんはそう言うと、今度はわたしの方を見てこう言った。

「コメット王女。今朝はメテオを守ってくれて有難う。2人の母として、またカ

スタネット星国王妃としてあなたにたのみます。もし今後同じような事があった

ら、あの娘からメテオを守ってやって下さい。それからこれはカスタネット星国

の王妃としてたのむけれど、あの娘の病気が治るまではこのことは誰にも言わな

いで無用な混乱を与えたくないの」

「わかりました。大丈夫です。わたしがメテオさんといっしょにいますから

あ、このことはネメシスさんには話しちゃいました」

「有難う。彼女は大丈夫よ。では、私はこれからあの娘の様子を見に行ってくる

わ」

「お母様、ひとつ聞いていい?生きるってどういうこと?死ぬってどういう

こと?

「それはとても難しい質問ね。私はカスタネット星国の王妃として、これまでた

くさんの生、そして死に出会ってきたわ。『不思議で、予測のつかないこと』

かしらね。私達は自分がいつ生まれていつ死ぬのか、わからないんだもの。

私だってあの娘が『死にたい病』になって生まれてくるなんて、夢にも思

わなかったわ。それから、『一人で歩くこと』いい、私達はたった一人で生

まれてたった一人で死ぬのよ。そして自分の人生はたった一つだけ。自分

の人生は結局自分で切り開くしかないのよ。私達のような、人をまとめる

立場の者は特に孤独だわ

 そう言ってメテオさんのお母さんは部屋から出ていった。

 それからしばらくして戻ってくると、

「あの娘はまだ眠っているわ。病院ビトの話しでは、夕方には目を覚ますみたい

よ。ではまたね」

と言って再び去っていった。

 

 わたし達はそれから色々話をし、12時半過ぎに治療から戻ってきた輝きの求道

者さんと食事をしに出かけた。

 

「そうかメテオさんのお母さん、いいこと言うね」

「ほんとだよね。わたし、メテオさんのお母さん、尊敬しちゃった。強くて、で

もほんとはとてもやさしくてメテオさん、ほんとにいいお母さんだね」

「もう、コメットったら〜☆。照れるじゃないの〜まあ、それ位じゃなきゃとて

もこのカスタネット星国の王妃はつとまらないってことだと思うけど

「メテオさんもすっかり元気になって良かったね」

「ええ、コメット達のおかげよ。ねえ、この後どうする?」

「エウロパ教授の話ではヤベツさんは17時位には目が覚めるそうだ。ネメシス

さんは既にガンは7割位小さくなっていて、立ち上がれる位には回復していたか

ら、その頃には歩いて隣りの病室に行ける位にはなっていると思うけど、まだ時

間があるね」

「とりあえず、星力をもう一度集めに出かけてコメット、街へ出てみない?」

「いいね。案内して」

「そう言えば〜あなた家に連絡した?って私もまだだけど…」

「いけない!忘れてた。沙也加ママや景太郎パパが心配しちゃうわ。じゃあまた

後であ、輝きの求道者さんは?」

「私はエウロパ教授達と話があるんで。ネメシスさんの病気のことで、ちょっと

気になることがあってね。今の段階ではまだはっきりしたことは言えないんだけ

ど」

「そう。じゃあ、夕食の時に」

「ああ」

 

 わたし達は食事を終えると輝きの求道者さんと別れ、それぞれの家に電話した。

わたしはハモニカ星国にも連絡して母と話をし、スピカおばさまにしたのと同じ

質問をしてみた。

「コメット。それはとてもいい質問ね。生きるってとってもすばらしいことよ。

私は生まれてから地球に行ったり、恋をしたり、王妃になってあなたを生

んで育てたりいろんな経験をしてきたわ。そしてたくさんの輝き☆と出

会ってきたのよ。でもこれはメテオさんのお母さんが言うように、私だけ

の、かけがえのない人生ひとはみんなそれぞれの『いのちの輝き』を持

っているのよ。ひとは誰かと一緒に輝くため、『輝きを共有するため』に生

きているんじゃないかしらそして妹の言うように、誰かにその輝きを渡

して死ぬのよ。ひとが死ぬのもみんなそれぞれ違う意味を持っていると思

うわ」

「ありがとう、お母さま。また電話するね」

「からだに気をつけてね」

 母は電話を切ると、

「コメットあんなことを聞くなんて、あなたもずい分成長したわね。これだか

ら生きるってすばらしいことなのよ

とつぶやいた。

 

 それからわたし達は病院を出て、近くの街に行き、鳥ビトさんやマジカルキノ

コさんなど色んな星ビトさん達と会ったり、一緒に遊んだりした。とてもいい気

分転換になったみたい。それから星力を集め、17時頃、病院に戻った。早速ネメ

シスさんの部屋に行ってみたが、少し歩けるまでに回復していて、かなり元気に

なったようだった。治療中の病院ビトに心の声を聞くと、既にガン細胞は一部に

残る程度になり、明日朝までには完全に消滅するだろうとのことだった。しかし

無理をさせてはいけないと思い、車椅子でヤベツさんの部屋に行ってもらうこと

にした。

「やっぱりメテオさんも行く?」

「ええ。もちろんよ。今度は大丈夫よ」

「でも、やっぱりわたしが呼んでから中に入ってくれる?あなたのお母さんに頼

まれてるし

「わ、わかったわ。(それを言われるとつらいわね)」

 

 結局わたしが車椅子を押して中に入った。ヤベツさんは目が覚めたばかりのよ

うだった。部屋にある電気スタンド代わりの発光植物が明るい緑色の光を放って

いた。

「こんばんは。ヤベツさん。こちらは今朝、わたしが会って欲しいと言っていた。

ネメシスさんです」

「初めまして。ムー・ヤベツ・カスタネット王女様。アトランティワナ出身のネ

メシスと申します。おかげんはいかがですか」

「あなたがネメシスさんね。さっき目が覚めたばかりでまだ眠いけど、大分元気

になったわ。ネメシスさん、あなた死にたいと思ったことある?」

「ヤ、ヤベツさん」

(コメット様。よろしいのですよ)

(わたしは気配を察して車椅子から手を離すとそっと入り口近くまで離れた)

「ええ。もちろんございます」

「今でも?」

「いえ、今は違います」

「なぜ?どうしてそう思わなくなったの?」

「それは、あなた様のお母様、そしてお姉様のメテオ様がこの私に目を止め、支

えて下さったからなのです

 そう言って、ネメシスさんはヤベツさんの手をとり、キスをした。

ヤベツさんは、「な、何をするのと言いかけたが、雷に打たれたようにショ

ックを受けたようだった。

その時、何かが変わった

 その時、初めて、ヤベツさんはネメシスさんの「いのちの最後の輝き」

をもらったのだと今では思う。

 

ヤベツ様。私は自分がどうして星力を全く使えないのか、わかりません

でした。この事を恨んだこともございます。どうしようもない寂しさに耐

え切れなくなったこともございます。でも、今日、こうしてヤベツ様とお

会い出来て、ようやくその答えが分かりました。ヤベツ様。私が星力を使

うことが出来ないのは、こうして今日、あなた様とお会いするためそし

てあなた様にこの私の『いのちの輝き』を分けて差し上げるためもし私が皆と同じように星力を使う事が出来ていたら、一平民にすぎない私がカスタネッ

ト星国王妃であられるあなた様のお母様や、お姉様のお目にとまることもなく、

こうしてお会いすることは決してなかったハズですのでだと思います」

 ヤベツさんはそれを聞いて、泣き出してしまった。わたしがふと横を見ると、

メテオさんがいつの間にか来ていて、2人をじっと見ているのに気づいた。

 わたしにはわかっていた。メテオさんは今、あの時の自分の姿を思い出

していることを「メテオさんの涙」で風岡夫妻に抱きついて、泣いてい

る自分の姿を

 

「メテオ」

「お母様」

「あの娘が目覚めると聞いて、もう一度来てみたのよ。でも、ちょっと遅かった

ようね」

(王妃様!すみません、私のような者が

(いいのよ。娘と同じように苦しんできたあなただからこそ、出来たことだと思

うわよ)

(イイエ、やはりここはお2人のお母様であられる王妃様こそ最ふさわしいハズ

です。私はこれで

(ありがとう。わかったわ)

 メテオさんのお母さんがバトンをふると、ネメシスさんと入れ替わってヤベツ

さんをしっかりと抱きしめた。

「ほら、メテオさん」

 わたしの声に押されてメテオさんはためらいがちに進んだが、

「おいでメテオ」の声に促されてお母さんの元に行くと、ヤベツさんと同じよう

に泣き出した。

 

そんな親子の姿を見ながら、わたしの胸は熱くなった。

 

 

1/12   19:00

 

 わたしはメテオさん、ヤベツさん、そして輝きの求道者さんと一緒に夕食をと

っていた。メテオさんとヤベツさんはすっかり仲良くなったようだった、2人は

ふたごだけあって、本当によく似ていた。

 

というように、地球の人も輝きを持った人がたくさんいるのよ」

「お姉様。私も地球に行ってみたい」

「そのうちきっと行けるわよ」

「お食事中失礼します。輝きの求道者様。エウロパ教授からの伝言です」

 そう言って看護婦ビトは星力で心に話しかけた。

 

何!

と輝きの求道者さんの声が聞こえた後、

 

「では失礼します」

との声を残して看護婦ビトは去っていった。

「輝きの求道者さん、どうしたの」

とわたしが聞くと、

「ネメシスさんの容態が急に悪くなったんだ。もうガン細胞はほとんど消滅した

ハズなのに今、原因を調査中だそうだ」

と答えた。

「私のせいだわ。だって私と会ってすぐ後だものあんなに元気そうだったのに

「ヤベツさんのせいじゃないよ」

「私もお姉様のようにネメシスさんの治療をお手伝いしたい」

「ヤベツ。あなたの気持ちはよくわかるわ。でも、あなたの病気はまだ完全に治

ったわけではないと思うし

「お姉様。私もあなたと同じカスタネット星国の王女です。お姉様程高い感受性

はないかもしれないけれど、私だって一時間位は星力をあて続けられると思うわ。

お願い。私もネメシスさんのお役に立ちたいの。だってあの人は私を『ひとり

のひと』として愛して下さり、私に『いのちの輝き』を分けてくれたんだ

もの

「わかった。私からエウロパ教授に20時から治療に参加出来るように話してみ

よう」

「輝きの求道者さん、ありがとう」

 それから輝きの求道者さんはエウロパ教授に連絡し、ヤベツさんはネメシスさ

んの治療をすることになった。そして20時少し前にヤベツさんはネメシスさん

の病室に向った。

 わたしは20時過ぎにみんなと一緒に星力を集めに行った後、自分の部屋に戻

り、ティンクルホンから自分の番組のファンサイトにアクセスした。このサイト

はちゃい25%さんが運営している大きなもので、輝きの求道者さんが時々書き込

んでいた。わたしは書き込むことはほとんどなかったが時々チェックしていた。

わたしはこれまで「生きるってどういうこと」、「死ぬってどういうこと」につ

いて、メテオさんやわたしの母等に聞いてきたが、答えが得られたのはなぜか女

性ばかりだった。そこでもっと色々な人、特に男性の意見を聞きたい、と思い、

下記の質問を書き込んだ

 

 みなさん。こんばんは。コメットです。わたしは今、ネメシスさんやメ

テオさん、輝きの求道者さん達と一緒にカスタネット星国の病院星にいま

す。わたしはネメシスさんの病気などを通して、『生きるってどんなこと』、

『死ぬってどんなこと』って考えるようになり、メテオさんやわたしのお

母さん、ネメシスさんやスピカおばさまに聴き、それについて考えること

の大切さと様々な考えのあることを知りました。そしてもっと色んな人の

意見を聴こうと思い、ティンクルホンから書き込んでいます。皆さんのご

意見をこの掲示板におよせ下さい。よろしくお願いします。ハモニカ星国

王女コメットより

 

「これでよしっと」

「ひめさま、どんな答えが来るか、楽しみだボー☆」

「ホントだね。わたしも胸がワクワクするわ」

 

 それからわたしはネメシスさんの病気について詳しく聴くためにエウロパ教授

に連絡して、会いに出かけた。

 

「失礼します」

「よく来て下さいました。こちらへお座り下さい。ネメシスさんの病状について

ですが、先程ヤベツ様と一緒に行った際にはガンはほぼ完全に消えていました。

しかし、ネメシスさんの体の状態は昨夜と同じか、若干悪くなっている位です」

「ど、どうして

「現在、色々調べておりますが、まだはっきりしたことは申し上げられません。

ただ、輝きが不足してきて、しかも不安定になってきているのは確かです。丁度

ロウソクの火が風にゆらいでいるように

「ってことはもしかして

「病院ビトとしては大変申し上げにくいことなのですが、私がこれまで多くの人

の死を観てきた経験上、これはおそらくご本人の寿命から来る輝き不足症ではな

いかと思われます。我々も全力を尽しますが、もしそうだとすると、残念ながら

回復させることはほとんど不可能と思われます」

その寿命が来たらネメシスさんは死んじゃうってこと?

 エウロパ教授は黙ってうなずいた。

「そ、そんな星力で何とか出来ないの」

「残念ながら、それは出来ません。否、正確にはしてはならないのではないか、

と私は考えております」

「どうして」

「よく聴いて下さい。これはあくまでも病院ビトとしての私個人の意見ですが、

星力を無理に使えば、あるいは寿命を伸ばすことも可能かもしれません。

ですが、必ず『輝き自然度』が失われ、その人はその人らしくない、『不自

然な生』を生きなければならなくなるでしょう。それがその人にとって本

当に幸せと言えるのか難しいことだと思いますが、私としてはうしない

方が良いのではないか、と思います。

 私は死とは『いつか必ず訪れるもの』であり、『それを避けるのではなく、

しっかりと受けとめて、それに向って精一杯生きるもの』ではないかと思

っております。私は病院ビトとして、たくさんの人の死を見てきました。もち

ろん、全ての人が自分の死を受け入れることが出来るわけではありません。

事故等で、あっと言う間に死んでしまう場合もありますし、そうでなくと

も特に始めは避けようとするのがむしろ自然です。しかし、私が見たある

人々は、死の直前も『すごく輝いて』いました。その方々は例外なく自分

の死を受け入れた方々でした。それを見て私は、『いのち、生、』だけでな

く『いのちの最後=死』にも輝きがある、ことを知りました

『死』にも輝きがある

「そうでございます。もちろん、全てがそうではないと思いますが

「エウロパ教授、カレンさんから『ある人が死んだ時、その「いのちの最後

の輝き」がその人から出ていくのを見たことがある』と聴いたけど、その輝

きがどこへ行ったのか、知っていますか?」

「私も、何人か見たことがありますが、追いかけたことはないので、残念ながら

わかりません。でも、私が見た人達は例外なく、自分の死を受け入れていました」

「それではわたし達はネメシスさんのためにどうしたらいいの?」

お言葉ですが、コメット様。これはとても大事なことでございます。こ

れは病院ビトとしてではなく、一人のヒトとして申し上げますが、それは

ご自身で御考えになられ、ご自分で決められるべきことだと思います。私

が仮にあなた様のお父様だとしても、同じ事を申し上げたでしょう。今の

あなた様には、もうそれがお出来になるハズです。でも、一つ申し上げて

おきましょう。私達は一人一人違います。ですから、『なすべき事』も一人

一人違っているハズです。必ず、『自分にしか出来ない、なすべき事』があ

るハズです」

「エウロパ教授、本当にどうもありがとう」

「こちらこそ。あ、一つ忘れておりましたが、まだ診断が確定したわけではない

ので、このことは誰にも話されないようよろしくお願いいたします。また、たと

え私の思った通りだったとしても、その寿命が明日なのか、10年後なのか、ある

いは100年後なのか、誰にもわかりません。よってこの件に関しては慎重に行動

されますようお願い申し上げます」

「わかったわ。では失礼します」

 

「さすがエウロパ教授。言うことが違うボー」

 わたしは部屋に戻ると、早速、ちゃいさんのサイトに接続した。あれから30

分くらいしかたっていなかったが、既に3件の返事が来ていた。

「ひめさま、返事が来てるボー。うれしいボー☆」

「わたしも☆」

以下のレスをわたしは読み、華心さんのレスに衝撃を受けた。

 

 人の死は突然やってくる物だと自分は思っています・・・。

 

 人はいずれ何らかの形で「死」を迎える物です。その日がくるまでどれ

だけ精一杯人生に輝きを残せるか?多分「生きる」と言うのはそういう物

ではないかと思います。それがどんな形にせよ、いい意味で輝きを残せた

ら人は安心して死を迎えられると思います・・・。(青連者さんからのレス

より)

 

 私の個人的な意見としては、死そのものも生きるための大事な要素のひ

とつだと、あらためてそんなふうに思いました。死があるから一日いちに

ちを大事に生きられるのではないかと(雪山雪男さんからのレスより)

 

 ひめさまにお送りします。

 

・・・何故?

 答えを知ってるのに何故に他人に問うのか?

 

他人の答えが自分と同じだったなら安心かね?

それとも、もっと高次元の意見を他人が教えて

くれるとでも?

迷いを得たいと言うのならそれも良いでしょう…。

 

ならば、一生懸命生きてる人間に

「生きるとは、死ぬとはどういう事ですか!?」

と尋ねてみなさい。

 

「邪魔だバカッ!」

 

と力一杯怒鳴ってくれますよ。

ただし、

その人がとっても親切で、

あなたを愛し、そしてとても心配してくれる人ならね。

 

「生きるとは、死ぬとはどういう事ですか!?」

判らない事、知らない事に疑問を持ち、教えを乞う事は大切な事。

この質問を投げかける事で、いつか答えを得れたのなら

それはそれで良いでしょう、でもそれは他者から得た答え(知識)でしか

無い。

 

箱根山

駕籠に乗る人担ぐ人

捨てた草鞋を拾う人

 

覚悟をもって一生懸命“死”に向かって“生きる”

覚悟して、御自分でお確かめなさい。

それだけがひめさまが求める答えの全てでしか無いのですから。

(華心さんのレスより)

 

 わたしは思わず以下の返事を書き込んだ

 

青連者さん、質問に答えて下さってどうもありがとう。

 わたしもいつかは「死」を迎えるけど、それまで精一杯輝きたい、と思

います。

 

雪山雪男さん、質問に答えて下さり、どうもありがとう。

>死があるから一日いちにちを大事に生きられる

 本当にそうだと思います。わたしも一日いちにちを大切に生きていきた

い、と思っています。

 

華心さん、質問に答えて下さってどうもありがとう。

 

>判らない事、知らない事に疑問を持ち、教えを乞う事は大切な事。この

>質問を投げかける事で、いつか答えを得れたのなら

>それはそれで良いでしょう、でもそれは他者から得た答え(知識)でし>か無い。

 

 このお言葉にわたしは衝撃を受けました。スピカおばさまも

「これはあなた自身で答えを見つける必要があるのよ」

と言ってましたが、その時のわたしには今一つピンときていなかったみた

い。これを読んで、自分自身の経験を通し、(知識としてではなく)実感と

して、答えを見つけていく必要があるんだな、と思わされました。わたし

はまだ13才。ようやくこのことを考えはじめたばかりで、華心さんやここ

に書かれているその他の方々に比べて人生経験もまだまだ足りません。だ

からわたしは皆さんのご意見も今の時点での一つの「答え」を見つけるた

めの参考としたいと思っています。たぶんその「答え」は変わっていくも

のだと思うし、一生涯その「答え」を探し続けるのでしょうけど

 

22:00

 わたしはメテオさんと交替するためにネメシスさんの病室に向った。メテオさ

んはわたしの顔を見ると、

(コメット!、さっき感受性チェックをしてもらったけど、私の星力はほとん

ど効いていないらしいのよ。ガンに対してはとてもよく効いていたのに

エウロパ教授から聴いたけど、ネメシスさん、このままじゃ私、どうしたら

いいの?)

と聴いてきた。エウロパ教授も一緒だった。

(メテオさん、良く聴いて。たとえそうだったとしても、ネメシスさんの

寿命が明日なのか、10年後か、100年後なのか、わからないんだから。そ

れに、輝きの求道者さんやスピカおばさま達から言われたことだけど、こ

れは、とても大切な事なの。だからメテオさんが自分で考えて決める必要

があると思うわ)

(そう言われればそうね。私、部屋に帰ってもう一度考えてみるわ)

「コメット様。もう一度感受性テェックをしたいと思います」

「わかりました、エウロパ教授。エトワール!」

(ん〜やはりほとんど効果がないようです。先程までのメテオ様の治療により、

ガンは完全に消滅しているのですがコメット様、どうされます?病院ビトとし

ては、これ以上このまま星力を当て続ける必要はないかと思うのですが

(他の人はどうなの?)

(ヤベツ様に弱い効果がみられるだけで、他の方は私を含めて全て効果がほとん

ど、または全くありませんでした)

 

―――

 わたしが考えていると、

 

(そうだ、恋力があるボー)

とラバボーが言ってきた。

(エウロパ教授、恋力を試してみたいんですけど

(わかりました。一般的には輝き不足症の方にはかえって逆効果のことが多いの

ですがよろしくお願いします)

 わたしはラブリン変身すると、恋力を照射した。がしかし、

(やはり、逆効果のようですね)との声に、すぐに止めざるを得なかった。

(ひ、ひめさま、どうするボー)

(ケースケ、助けて

 わたしは思わずそうつぶやいた。

(バカ、いつまでもオレにたよってんじゃねえよ!輝きの求道者さんや華

心さんから言われたことをもう忘れたのか?これはお前が自分できめなき

ゃいけないことなんだぞ!お前にはきっと出来ると信じている。オレはお

前のことをいつも見守っていることを忘れるなじゃあな〜)

ケースケ!エウロパ教授、しばらく、2人だけにさせて下さい)

(わかりました)エウロパ教授が出ていくと、わたしはネメシスさんをじっと見

ながら、これまでのことを振り返った。そして、ふと、

そうだ、ネメシスさんと一緒にいよう)

と思った。そして、そうしてみると、「死」というものと、「一緒にいる」こと

に気づいた。不思議なことに、思った程恐くはなかった。だんだんそれ

は近付いてきて、わたしのこころに触れた。

「あっ」

 わたしは思わず声をあげ、胸がキュンとなった。

イイ気持ち

 わたしはある「決心」をし、それをネメシスさんに伝えた。驚いた事に、

ネメシスさんはそのことがわかっていたようだった。彼女は次のように話

してくれた。

コメット様。そのことは私がヤベツ様の治療を受けた時に思ったことと

同じでございます。今を逃したら、2度と行くチャンスはないかもしれま

せん。よろしくお願いいたします)

(わかりました。あした、みんなに話してみます)

 

 23時ごろ、輝きの求道者さんが交替しに来た。わたしを一目見るなり、わたし

の決心がわかったようだった。

私も同じことを考えていたんだ。よく決心したね

ええ、わたし、

自分の力でネメシスさんのために何かをしなくてもいい、

ということに気づかされました。わたし、

最後までネメシスさんと一緒にいたいんです。

否、「そのように導かれて」いるらしいことに気づきました。

ありがとう、輝きの求道者さん

こちらこそ。それじゃおやすみ)

 

 わたしは部屋に戻り、そのまま寝てしまった。

その4へ続く

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