新コメットさんの日記 第2章「ミラさんと星国の断食大会」

 

プロローグ

 

コメットさん:21才。ハモニカ星国の王女。「星力」を使う事の出来る「星

使い」でもある。17才から「愛力」も使えるようになる。ハモニカ星国に

留学しているツヨシ君、ネネちゃんのお世話をするために星国に滞在中。

「第一回トライアングル星雲チャリティー断食大会」主催者。

ミラさん:20才。カロン君の姉。タンバリン星国王家侍女長の娘。プラネ

ット王子の主任侍女。タンバリン星国に一時帰国したプラネット王子と一

緒に滞在中。

プラネット王子:23才。タンバリン星国の王子。コメットさんが星国に帰

ったのを機に一時帰国する。

コメットさんのお母さん:ハモニカ星国の王妃。

コメットさんのお父さん:ハモニカ星国の王様。

ステラさん:ハモニカ星国王家専属料理ビトの長。32才。(地球年齢28

才)

ニック君:18才。ハモニカ星国の見習い料理ビト。星のお城で新人研修中。

ラバボー&ラバピョン:コメットさんのお供&ペット。

剛(ツヨシ)くん:12才。景太郎パパ達のふたごの兄。ハモニカ星国に留学中。

輝きの求道者の娘のユキちゃんと出会い、恋力が使えるようになる。

寧々(ネネ)ちゃん:12才。同じくふたごの妹。同じくハモニカ星国に留学中。

 

2009 5/11 1100

 

「ツヨシ君、ネネちゃん、とっても良かったよ。今日はこれでおしまいにしよ」

 バトンの練習を終えるとわたしは2人に言った。大会が終わってからはバトン

の練習は午前中だけとなったが、2人は更に上達していた。

「え〜コメットさん、もう少し練習したい」「私ももう少し練習したい」

「またあした練習しよ。次は『お勉強の時間』だよ。今日は星国の食べ物や料理

について勉強するの」

「へ〜おもしろそう、ツヨシ君、早く勉強したい!」「ネネちゃんも早く勉強した

い」

「じゃ早く着替えてわたしの部屋にいこ」

「は〜い!」

 10分後、わたしは「お勉強の時間」を始めた。ここでハモニカ星国の食べ物に

ついて紹介しよう。

 

 星国の食べ物は地球と良く似たものが多く、わたし達星使いはごはんやみそ汁、

うどんやおもちなどを良く食べている。父はおもちが大好きで、食べ過ぎないよ

う母から注意される位だった。この他に、魚や、枝豆など野菜も食べるが、星国

には地球の動物に相当するものがほとんどいないので、肉を食べることはあまり

なかった。わたしはウシビトさんの作るチーズが大好きだが、ウシビトさんを食

べることはもちろんしないし、とても出来ない。しかし、肉料理そのものは、(牛

などを殺さなくても)星力で作ることが出来るので、時々食べてはいた。一方、

魚は川や海からとったものや星力で出したものを料理して良く食べていたが、わ

たしは表面が全て海のアクエリアス産のものが一番好きだった。カスタネット星

国や地球のものも、これとよく似た味でおいしかった。一方、ラバボーなどのホ

シビトはゼリーのようなプルプルごはんやプルプルチョコなどが主食で、地球の

食べ物とは少し違っていた。わたし達星使いも食べることはあるものの、全体的

に甘味が強く、あまり好きではなかった。

「ねえ、コメットさん、他の星国の食べ物はどうなの?」

「それは

「私がお答えしましょう、ツヨシ様」

「カゲビトさん」

「食べ物に関しては3大星国間では大きな差はございません。ただ、ハモニカ星

国では地球の日本食やフランス料理に相当するものが好まれるのに対し、タンバ

リン星国ではパスタなど、イタリア系のもの、カスタネット星国ではドイツとい

う国の料理が比較的好まれるようです。ちなみにプラネット王子はパスタがお好

きなようです。おっとそれから、大事な事を忘れていました。星国にはビールや

ワインなど地球のお酒によく似たものはありますが、全て星力で発酵させている

ので、飲むと気分はよくなりますが、いくら飲んでも地球の酒類のように、酔っ

ぱらったり、眠りこんでしまうなどの害はありません。よって星国では大人も子

供も一緒に飲む事が出来るのでございます」

「へ〜そうなんだ。あ、そっか。歓迎会(「星国のバトントワリング大会」より)

で飲んだのは星国のお酒だったんだね」

「そう。だから、星国のひとは地球のお酒をそのまま飲んでしまうと、すぐに眠

っちゃったり、酔っぱらったりしてしまうの。だから飲む時は必ず星力をかける

のよ」

「そうか。だ〜からコメットさんはいくらお酒を飲んでも平気なんだ〜」

えへ☆

 わたしは初めて地球のお酒を飲んだ時のことを思い出していた。あの時は一

口飲んだだけで、すぐに眠ってしまった。以来、地球のお酒を飲む時は必ず星力

をかけるようになり、今では「酒豪」で通っていた。

「あ、もうすぐお昼だね。おしまいにしよ」

「あ〜食べ物の事を勉強したら、お腹すいちゃった」

「ネネちゃんも、すいちゃった」

「わたしもお腹ペコペコ〜。さ、早く下にいこ」

「は〜い!」

 

 わたし達は食堂に向った。今日は珍しく、母だけが来ていた。

「お母様、こんにちは。あれ、お父様は?」

「ヒゲノシタと一緒に出かけたわ。そろそろ戻ってくると思うけど

「こんにちは、王妃様」「こんにちは」

「ツヨシ君、ネネちゃん、こんにちは。今日は何を勉強したの?」

「わ〜おいしそう!実はこれなんです」

「え?」

「今日は星国の食べ物についてお勉強したの。だからもうお腹ペコペコ〜」

とわたしが言った時、

や〜すまん、スマン。ちょっと遅くなってしまったな」

との声が聞こえた。

「お父さま」

おお、コメット。もう来ておったか。いや実は近くで料理ビト長のステラと

会ってしまってな。話がはずんでつい遅くなってしまったのだ。ツヨシ君、ネネ

ちゃん、こんにちは」

「王様、こんにちは」「こんにちは」

「そうだったの。ツヨシ君、ネネちゃん。ごはんを食べた後はステラさんが星国

の料理の仕方なんかについて教えてくれることになっているのよ。そして夕食は

自分で作って食べるの」

「そうなんだ。ツヨシ君とっても楽しみ」

「ネネちゃんはも〜っと楽しみ」

「ハハハ〜」

 みんなの笑い声が食卓にこだました。

 

1300

 

 わたし達は一旦わたしの部屋に戻った。すると間もなく、

「ひめさま。料理ビト長のステラです。お迎えに参りました」

と星力で呼びかける声がした。

「ちょっと待ってて。今行くから。ツヨシ君、ネネちゃん、これからお城の厨房に行くよ」

「ハ〜イ!」

 

 それからわたし達はステラさんの案内で城の下部にある厨房に向った。実はわ

たしはこれまで厨房には入ったことはなかったのでワクワクしていた。

「そうですか。やはりさすがのひめさまも厨房にはおはいりになったこ

とがないのですね」

「ええ。だからとっても楽しみ

「こちらです」

 ステラさんは白いドアの前でそう言った。わたし達が中に入ると、あまり広くない部屋の中に四角いテーブルと椅子があり、テーブルの上にはメモリーボールがセットされていた。

「ひめさま、何だかとってもいいにおいがするボー」

「そうだね。厨房はこの奥なのかな」

「はい、ここは厨房の前室となっていて、献立について話し合ったり、新

しく来た料理ビトの教育をしたり、あるいは今日のひめさま方のように、

ここを見学にこられた方々にご説明する部屋なのです。本日はまず、この

厨房について、それから星国の料理の仕方についてここで簡単にご説明し

た後、この奥の厨房をご覧になって頂きながら詳しくご説明申し上げる予

定でございます。そして本日のご夕食も作って頂くことになっております。

それではまずこちらにお座りになって下さい」

 わたし達が席につくと、ステラさんが口を開いた。ステラさんは32才だそう

だが、背が高くてかっこ良く、地球で言うと20才代に見える男性だった。地球

年齢に換算すると28才になるためだろう。

「コメット様、ツヨシ様、ネネ様。ようこそ、星のお城の厨房へお出で下

さいました。本日は特に地球からのお客様もお迎えする事が出来、大変光

栄に思っております」

ステラさんはここでメモリーボールを起動させ、映像も示しつつ、説明を始めた。

「星のお城には現在、王様方をはじめ、約5000人の星使いがいらっし

ゃいます。その方々のお食事をお作りするためにこの厨房には約50人の

料理ビトがおります。星国の料理は主に次の3種類の方法で作られており

ます。まずは料理そのものを材料も含めて全て星力で作ってしまう方法。

これはこうしないと作るのに非常に時間がかかってしまう場合や同じもの

を大量に作る場合等に使われます。次に採ってきた、あるいは星力で出し

た材料を星力を使って調理する方法で、同じ人が作る場合は全て星力で作

る場合よりおいしく出来ることから、ここでは大部分がこの方法で行われ

ております。そして全て星力なしで調理する方法、これは簡単な料理や新

人の料理ビトの研修の時にとられるものです。私達料理ビトは星力で料理

する時は、このティンクルナイフを用います」

 ステラさんはそう言って刃渡り30 cm位で細い、地球の包丁によく似たもの

 (挿し絵参照)を取り出した。

「これは私達にとってはひめさまのバトンに相当するものです。こちらの

映像をご覧下さい。これは星ヘを集める時のものです。星力はこのように

刃の先端に集まります」

「なるほど〜確かにバトンみたい」

「そして、星力を使う時はこうやってナイフを振ったり、あるいはこれで

切ったりいたします。幾千億の星の子達、キラ星の輝きを。そしてあまた

の力を。どうか私の星力に変えて。エトワール!」

 ステラさんがティンクルナイフを振ると、テーブルの上にスフレに良く似たも

のが3つ現れた。

「わあ〜おいしそう〜。ステラさん、スゴイ〜☆」

「これはティンクルスフレと言って、地球のスフレに良く似たお菓子です。

おやつの時間には少し早いかと思いますが、これは出来たてが一番美味し

いので、お早めにお召し上がり下さい」

「ステラさん、ありがとう。いただきます〜」

「いただきま〜す!」

「う〜ん、おいしい!」

「ほんとだ、あまくて、フワフワしててとってもおいしいね」

「ホ〜ンと、ほっぺたが落ちそうだわ」

「ありがとうございます。このように星力で全て作る場合は作ろうとする

ものをいかに上手にイメージ出来るかがポイントとなります。私達料理ビ

トは星力を使う前に形や焼き具合、固さや甘さ等を頭の中にイメージしま

す。そして星力を使うとその通りに出来るのです。自分の思う通りのもの

を上手にイメージするためには、やはりまずその料理を星力を全く使わず

に作り、形や焼き具合、固さや甘さ等を体に覚え込ませる必要があります。

もちろん、そうしなくてもそれなりのものは出来ますが、皆様に最高のも

のをお出ししようとしている私達料理ビトは、そのために新人の時に1年

間の研修が義務づけられております。更にその後、星力も使いながら2年

間の研修が行われ、試験に合格したものだけが、一人前の料理ビトになれ

るのでございます」

「そうなんだ。料理ビトって大変なんだね。あ〜おいしかった。ごちそうさま」

「ごちそうさま」「ごちそうさま」

「以上で簡単ですが一旦ご説明を終わらせて頂きます。それでは次に厨房

に入って頂いて実際に料理を作っている所をご覧になって頂きます。その

前に皆様には料理ビトの姿になって頂きます。ツヨシさま、ネネさま、お

二人はこれをどうぞ」

 ステラさんはそう言って2人にティンクルナイフを渡した。

「うわ〜。カッコイイ」「ネネちゃんのもステキ」

「これをお貸しいたします。私の後について呪文を言った後、ナイフを振

って下さい。『幾千億の星の子達、キラ星の輝きを。そしてあまたの力を。

どうか私の輝きに変えて。エトワール!』」

 ツヨシ君、ネネちゃんがナイフを振ると、料理ビトの姿に変身した。

「お二人ともよくお似合いですよ。ひめさまはどうされますか?」

「わたしはヌイビトさん達、お願い。わたしを料理ビトにして」

「わかりましたデスの〜」

「やはりそうでしたか。さすがはひめさま、よくお似合いです。ではこち

らへどうぞ」

 

 料理ビトに変身したわたしにステラさんはそう言って、部屋の奥のドアを開け

た。中からはとてもいい香りがただよってきた。中に入ると、大きな鍋や釜がた

くさんあり、たくさんの料理ビトが働いていた。あちこちから湯気があがり、う

っすらともやがかかっっているように見えた。

「ここがメインキッチンルームになります。ほとんどの料理はここで作ら

れます」

「うわ〜。スゴイ。大きな鍋や釜がたくさんあるね」

 あたりを見回しながらツヨシ君が言った。

「ここがサブキッチンルームです。ここでは主に星力を使わない料理を作

ったり、新人の研修をしたりしています」

 ステラさんはそう言うと、中にいた少年に声をかけた。

「おいニック、ひめさまがいらしたぞ。早くこっちへ」

「はい!」

との声と共に17,8才の少年が現れた。

「先月、ここに配属されたばかりの見習い料理ビトのニックです。今日は

研修の一貫とて私のアシスタントとして同行いたします」

「ニック君。初めまして。王女のコメットです。よろしくね」

「地球から来たツヨシです」「ネネです」

「ニックです。こんな所でコメット様に御会い出来るなんて、夢のようで

す。まだここに来たばかりで、失敗ばかりしているけれど、よろしくお願

いします」

「ニック、みなさんを貯蔵庫にご案内してくれ。それからメインキッチン

ルームのデモンストレーションコーナーに来てくれ。私はそこで待ってい

るから」

「はい、わかりました。コメット様。どうぞこちらへ」

わたし達は大きな扉の前に来た。

「この中が貯蔵庫になります。どうぞ」

「うわ〜。食べ物がいっぱい!」

「お兄ちゃん、これは牛みたいだよ」

とネネちゃんは幾つものぶら下がっている大きな肉のかたまりを見て言った。

「これは地球の牛肉ですね。これは多分地球から輸入してきたんだと思います」

「そうなんだ」

「ニック君、この中寒くないね。ここって冷蔵庫じゃないの?」

「あ、地球の冷蔵庫のことですね。星国では輝きによって守られているので、も

ともとものは腐りにくいのですが、長期間保存する時は普通冷やすのではなく、

星力を使います。この貯蔵庫は材料を新鮮に保つための一定量の星力が出るよう

になっていて、ここに入れておけばいつも新鮮な材料を使うことが出来ます」

「あ、そっか〜だから。星国の食べ物はどれも新鮮でおいしいんだ」

とツヨシ君は感心して言った。

「そうなの。それに地球みたいに保存料や添加物などの余計なものを入れる必要

もないからより安全でもあるのよ」

「フ〜ン。あ、今度は樽がいっぱい」

「ティンクルワインの樽です。ネネ様。このあたりはビール等、お酒が貯蔵され

ています。そろそろ戻りましょう」

 わたし達は貯蔵庫を出てメインキッチンルームに向った。しかし、しばらく行

った時、ニック君が急に立ち止まり、辺りを見回して言った。

 

「あれ?こっちだと思ったのに

「ニック君、どうかした?」

「いや、あの〜すみません。実はデモンストレーションルームにはまだほとんど

行ったことがないんで、場所が良くわからなくなってしまったんです」

「だいじょうぶ。バトンに聞いてみるから。おねがい。デモンストレーションルームはどこ?」

 

 わたしがそう言ってバトンを投げると、左を指し示した。

「ありがとう。こっちだって」

 少し進むと

「どうもすみません。あそこです」

と、ニック君が申し訳なさそうに言った。

「ニック、ちょっと遅かったな」

「すみません

 そう言いかけたニック君をさえぎるように

「気にしないで。わたしが色々質問しちゃったものだから

とわたしは言った。(ひめさま。すみません)(いいの。ニック君はまだここに来たばかりだし〜)

「みなさん。どうぞこちらへ。ここが、見学に来られた方々に材料を星力

を使って調理する所をお見せするデモンストレーションルームです。今回

はビーフストロガノフを作ります。ニック、あそこからティンクルフライ

パンとボウルを取って来てくれ」

「はい。どうぞ」

 

「まず、材料は牛肉肩ロース脂身つき、にんにく、玉ねぎ、赤ピーマン、

マッシュルームで、いずれも地球からのものです。最初にこれらを適当な

大きさに切って、塩、こしょう、赤ワイン、サラダ油、食酢とまぜ合わせ

ます。幾千億の星の子達、キラ星の輝きを。そしてあまたの力を。どうか

私の星力に変えて。エトワール!」

 

 ステラさんがそう言ってティンクルナイフを振ると、そこから分離したナイフ

が次々と材料を切り、次にかき混ぜる棒のようなものに変化し、材料をボールの

中に入れて混ぜ合わせた。

「次に、牛肉を炒めます。エトワール!」

 すると牛肉がティンクルフライパンの中に入れられ、炒められた。

「次に、野菜と小麦粉を炒めます。エトワール!」

 するとティンクルフライパンがもう一つ現れ、にんにく、ピーマン、玉ねぎが

炒められ、次に小麦粉が炒められた。

「それから、炒めた野菜と小麦粉を牛肉の入ったなべに入れ、水を入れて

30分位煮込みます。エトワール!」

 ステラさんがティンクルナイフを振ると、牛肉の入ったティンクルフライパンが鍋に変化し、次に野菜が入れられて煮込まれた。約30分後

「そして、マッシュルームとサワークリーを入れて10分位煮込んで出来上

がりです。エトワール!」

 とステラさんは言ってナイフを振り、やがておいしそうなビーフストロガノフ

が出来上がった。

「うわ〜スゴイ〜。おいしそう〜」

「そうだね。ネネちゃん。早く食べてみたいね」

「さあ、どうぞ」

 3人の目の前に料理の入った小さな皿が置かれた。

「いただきま〜す!」

「う〜ん、おいしい!」「ほっぺたがとろけそう〜」

「ほんとだね。ステラさん、とってもおいしい」

「ありがとうございます」

 

 ステラさんは嬉しそうに言った。みんなが食べ終わった後、

「それでは次にみなさんに実際に今夜の夕食を作って頂きます。まずは食

べたいものをお決め下さい。作り方は私とニックがお教えいたします」

とステラさんが言った。

ツヨシ君は、カレーライス!」

「ネネちゃんはハンバーグステーキ!」

「わたしは何にしようかな。あ、そうだ、マーボーナス!

「みなさん決まられたようなので、次に材料をそろえましょう。どうぞこ

ちらへ」

 わたし達はステラさんの案内で貯蔵庫に向かった。

「材料がそろったので、次に星力を使って料理を作ります」

 デモンストレーションルームに戻ったわたし達にステラさんが言った。

1830

「あ〜おいしかった

「ハンバーグもおいしかった」

「わたしもおいしかった☆。やっぱりじぶんでつくって食べるのっておいしいよ

ね。ステラさん、ニック君。色々教えてくれてどうもありがとう。あなた

達の教え方が上手だったから、おいしく出来たと思うわ」

「ひめさま。ありがとうございワす。しかし、ひめさまもなかなかの腕前。

良いセンスを御持ちです。さすが星国の王女でございます。こちらこそ、

勉強させて頂きました」

「ひめさま。こちらこそ色々助けて頂いてどうもありがとうございまし

た」

「ニック君、修行がんばってね」

「ハイ、頑張ります」

「あ、そうだ、ニック君は明日から開かれる『断食大会』にエントリーし

てたんだよね?」

「ハイ。私の夢はもちろん『一人前の料理ビトになること』です。でもこの

一ケ月、なかなか思うように行かなくてでもこれで優勝出来ればそうなれると

思ってこれも修行の一貫として挑戦して見ようと思いました。頑張りたいと思

います」

だいじょうぶ、きっと一人前の料理ビトになれるわ。それじゃ

「ひめさま、さようなら」

「さようなら。またおこし下さい」

「ええ。今日はありがとう。ラバボー、ツヨシ君、ネネちゃん、行くよ」

「ひめさま〜待ってダボー」「待ってなのピョン」

「ハ〜イ!ステラさん、ありがとう!」

「どういたしまして。お気をつけてお帰り下さい」

「ニック君、今日はありがとう。断食大会には僕達も出るからよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いいたします。ツヨシ様」

 わたし達は厨房を後にした。

 

1845

 

 わたしが自分の部屋に戻ってまもなく、ティンクルホンが鳴った。

もしもし、コメット様ですか?タンバリン星国のミラです。実はお話しし

たいことがあるのですが、これからそちらにお伺いしてもよろしいでしょう

か?」「ええ」

「ありがとうございます。では、また後で」

「ひめさま。誰からの電話ダボー?」

「ミラさんから。でも何だろう。わたしに話しって」

 

 19時過ぎ

「コメット様いらっしゃいますか?タンバリン星国のミラです。おじゃま

してよろしいでしょうか?」

という声が聞こえた。

 

「は〜い。どうぞ」

「失礼します。こんな時間にすみません」

 

 顔を少し曇らせながらミラさんが中に入ってきた。

「ミラさん、少し元気ないみたいだけどネ〜に、わたしに話しって?

「実は、明日の断食大会のことなのですが。やっぱりやめようかと思ってノ」

 ミラさんはゆっくり話し始めた。それを聴いて、この時まで、自分が実はミラ

さんのことをタンバリン星国の人でプラネット王子に仕えている、という以外あ

まりよく知らなかったことに気づいた。

 

「私は代々タンバリン星国王家の侍従を勤めるフィレンツェ家に生まれました。

私の母は侍女長をしています。もともと食べることが好きだった私は大きくなる

と共にたくさんの物が食べられるようになり、2度目に地球に行ってからは初め

て大食い大会に出ました。そこで優勝してからこれまで私は色んな大会に出て優

勝することができました。そこで色んなひとと出会い、競い合い、励まし合い

とても楽しかった。私は大会の中で食べることがイヤになったことは一度もあり

ません。私がこれまで優勝することが出来たのも楽しく食べ続けることが出来た

からだと思います。でも、私が優勝するようになると、まわりの人達から 『大食

い』と思われるようになりました。そして話に尾ひれがついたりしてそれはだん

だん私のイメージから離れて行きました。それで最近ではあまり大会にも出てい

ません。『大食い』だけじゃないのに…私はそんな自分につけられてしまったイメ

ージを変えたいと思って、今度の『断食大会』に出てみようと思ったのです。で

も今まで出たことがないし、やっぱり自信がなくて…」

「そうだったの。話してくれてどうもありがとう。でもだいじょうぶだよ。ミラ

さんならきっとその夢をかなえられるよ」

「ほんとですか?」

「ええ。大会の詳しいやり方は今はまだ話せないけど、きっと楽しんでもらえる

と思うわ。わたしはミラさんの輝きを信じているもの。明日会場で会えるのを楽

しみにしているわ。カロン君も出るんでしょ?」

「はい…」

 

 ミラさんは少し元気を取り戻したようだった。しかし、まだ迷っている様子だ

ったので

「ミラさん、わたしがなぜこの『第一回トライアングル星雲大会チャリテ

ィー断食大会』の主催者になったのか、わかる?」

 

と聞いてみた。

「いえ…」

 

「その最初のきっかけはアフガンに行ったこと。わたし達は今星国にいて、食べ

物には不自由しないけれど、地球ではアフリカやアフガンなどの中東、南アメリ

カなどに住む人達を中心に何億人もの人がその日に食べるものにも困っているの

よ。わたし、アフガンに行ってから、『ものが食べられる』ってことがどん

なに素晴らしく、ありがたいことかが少しずつわかるようになってきたわ。

この大会を通して、食べ物に困っているひとの気持ちが少しでもわかれば

否、そういう人がいっしょにいる、ってことを感じることが出来れば

そして、ものを『食べる』ってことがどういうことなのか、もっと深く知

りたい、知って欲しい、と思っているの。もちろん、この大会を通して集

まった星力や物やお金なんかは食べ物に困った人達のために使われること

になっているけどだからミラさん、あなたにはぜひ参加して欲しいの。

この大会を通してあなたはきっとたくさんの事を教えられるんじゃないか

しら」

「わたしもそう思うよ」

「か、輝きの元である方!」

 

「ミラさん。初めまして。わたしが『輝きんお元である方』じゃ。君はこの大会

を通して自分の夢を実現すると思うが、それよりももっと大事なことを経験する

と思うよ。それから、君が愛力を使えるようになる時が来たようじゃ。わたし

の力をあなたの愛力に変えて、アガパオー!君はもう愛力を使えるよ」

「『輝きの元である方』初めまして。キレイどうもありがとうございま

す」

 とミラさんは白とオレンジを基調とした清楚なアガペードレス(挿し絵参照)を見ながら言った。

「良かった。良く似合ってるわ、そのドレス」

「コメット様。ありがとうございます。私、大会に出ます。おかげ様で元

気になりました。明日会場でお会い出来るのを楽しみにしています。それ

では失礼します」

「では私も

「さようなら。ミラさん、輝きの元である方」

 

 輝きを取り戻したミラさんの顔を見ながらわたしは言った。しかし、まだ少し

心配でもあったので、ミラさんが部屋を出るとすぐ、わたしはカゲビトに後を追

わせた。そして、明日の大会の準備を最終テェックした後、眠ってしまった。

 

20:00

 一方、そのころミラさんは王宮に着いていた。王宮は100階建ての、カマボ

コ型の建物で、最上階がプラネット王子を始めとする王族の部屋で、その下がミ

ラさんなどの侍女や侍従等の部屋になっていた。

 

「お母様。ただいま戻りました。私、明日の大会に出ます。私、愛力が使

えるようになったの」

 

「そうそれは良かったわね。そのドレス、よく似合っているわよ。でもミラ、

仕事中は私をそう呼ばない約束でしょ、ってあら、もうそんな時間じゃないわね」

「お母様。殿下はどちらに?」

「プライベートルームでお待ちだよ」

「ありがとう」

 ミラさんはプラネット王子の部屋に入ると、バトンをふって、その一角の星の

トンネルの入口を開け、中に入った。この入口は王族を除いてはミラさんとカロ

ン君、そのお母さん、そして侍従長のヘンゲリーノしか知らないもので、王宮の

近くにあるらしい、王子のプライベートルームにつながっていた。しかしその正

確な位置はミラさんにも分からなかった。

「ミラです。失礼します」

「やあ、待っていたよ。君のそのドレス、とっても素敵だね」

「私、今日輝きの元である方とお会いしました。それで、愛力が使えるようになったんです」

 ミラさんはちょっとはずかしそうに答えた。

「それは良かった。その様子だと、明日の大会には出るんだね」

「はい。コメット様にもお話を聴いて頂けてようやく決心がつきまし

た」

「僕も期待しているよ。君がきみの夢をかなえるのを」

「殿下

「ミラ、ここはプライペートルームだよ。もう『プラネット』って呼んで欲しいな」

と王子がやさしく語りかける。

「殿下。いえ、プラネット様。でも私のような者がそんな

 ほほを真っ赤にしながらミラさんが答える。王子はそんなミラさんのひとみを

まっすぐ見つめながら

「ミラ、君が好きだ」

と言った。

「殿下!私もいつまでも殿下のお側にいたい〜☆」

 ミラさんは思わず王子の懐に飛び込んで言った。ひとすじの涙がそのほほを伝

った。

「ああ〜。僕も☆」

 プラネット王子はミラさんの肩をやさしく抱きながら答えた

その1「予選」へつづく

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