「コメットさんの日記新たなる旅立ち地球(テラ)

第3章「被災地に花開く友情」その1「マンガ館へ」

 

コメットさん:26才。ハモニカ星国の王女。雪の下保育園先生。11月に

石巻マンガ館で行われる予定の復興イベントに招待される。

あおいちゃん:11コメットさんのいとこ。スピカおばさまの娘。鎌倉

に「留学」中。コメットさんと一緒に石巻マンガ館に向かうことになる。

石森凪さん:12才。巻マンガ館の近くに住んでいた少女。両親を津波で

失い、伯父夫婦と共に高台に住む。かつてコメットさん達に助けられる。

石の森久美子さん:31才。コメットさんが震災時にお世話になNGO

「石巻フィレオの会」代表。震災の時に助けられたことをきっかけに

石の森カイトさんと結婚。

石の森カイトさん:46才。石巻マンガ館館長。ご当地ヒーローでもある。

沙也加ママ:コメットさんがお世話になっている藤吉家の主人、景太郎パ

パの妻

ツヨシ君:17才。也加ママのふたごの兄。ネネちゃん:17才。同じく

ふたごの妹。

 

ムーブメントさん:「輝きの元である方」の人格の一つ。愛力のであり、姿形

不定形でその正体は謎に包まれている。

ラバボー:コメットさんのお供&ペット。

 

2014 11/1 9:00

 復興イベントの前日の朝、わたしはアガペー変身すると、あおいちゃんと

一緒に外に出て、ラバボーを呼び出してその上に乗った。

「それでは、行ってきます。」

 わたしは見送りに出てきていた沙也加ママ達に言った。

「気をつけてね」

「おみやげ楽しみにしているわ」

「うん。着いたら連絡ます」

「ラバボー、行くよ」

そうわたしがラバボーに向かって言うと、

「ジャンプー」

の声と共にわたし達は勢い良く大空に舞い上がった…。

 

9:30

 わたし達は茨城県と福島県の県境付近を飛んでいた。天気は良く、ほとんど

雲はなかった。眼下には北延びる高速道路があり、周りには森や田んぼや畑

が広がっていた。るか右手には海が広がっているハズだが、まだはっきり

は見えなかった。わたし達は少し高度を下げて、北東に向かった。それから間

もなく、海が見えてきた。それらわたしは、あることを思い出し、ムーブメ

ントさんを呼ぶと同時に、海沿いを飛びながら高度を再び上げ始めた。

それから間もなく、光の玉のような姿をしたムーブメントさんがやってきて、

わたし達の周囲を周りながら話しかけてきた。

「おはよう。もうすぐ福島第一原発が見えてくるわ。もう少し高度を上げて」

「おはようございます。わかったわ。ラバボー、もう少し高度を上げて」

「わかったボー」

との声と共に、高度が上がるペースが早まった。ほどなく、はるか前方に福島

第一原発の高い煙突が見えてきた。

「あれが福島の原発?」

「そうよ。周囲の放射線量は1時間当たり約1マイクロシーベルトよ。もう上

昇しなくていいわ」

そうムーブメントさんがあおいちゃんに応えるのを聴いて、わたしはラバボー

「ラバボー、上昇をストップして」

と言った。

「了解ボー」

との声の直後、水平飛行に移った…。

…原発に近づく間、わたしはいつの間にか3年8ケ月前の事故当時のことを

思い出していた…

「コメットさん、福島にある原発が大変なの。すぐに福島に向かって」

地震から3日後の朝、ムーブメントさんが突然現れ、その頃石巻にいたわたし

に呼び掛けたのでびっくりした。

「ムーブメントさん、どういうこと?」

わたしがそうムーブメントさんに聞くと、

「詳しくは後で話すけど、原発には動いていた原子炉が3つあって、自動的に

停止したけど、1号機と3号機で原子炉や燃料プールを冷やすための冷却水を

動かすポンプが止ってしまって、燃料棒が露出してしまったの。このままでは

原子炉が空焚き状態になって、外部に大量の放射能が漏れる恐れがあるわ。

既に燃料が溶け出してしまったみたいだし、(今は大丈夫だけど)2号機や

原子炉は停まっていた4号機の燃料プールでも同じようなことが起こりそう

なの」

と答えがあった。

「エ、それは大変」

わたしはすぐにカイトさん達に事情を話し、福島第一原発に向かった。途中、

ムーブメントさんが詳しい状況を話してくれた。それを聴いてわたしは愕然と

した。

「…もし原子炉の格納容器が爆発したり、燃料プールの水がなくなって燃料棒

が溶け出してしまったら、最悪、鎌倉を含む東日本全体住めなくなって

しまう恐れがあるわ。それだけは絶対に防がなければならないけれど、現場に

は東京電力や自衛隊の人達もいるし、出来ることは限られているわ。

「どうすればいいの?」

「既にあなたのお母さんや叔母さん、クラリス女王、メテオ王女とヤベツ王女

が現場に向かっているわ。あなたたちには主に3つのミッションをしてもらう

ことになると思うわ…」

ムーブメントさんは言葉を続けた。

「詳しくは現場で話すけど、あなたとスピカさんはまず、もうすぐ建屋内で

爆発が起こりそうな4号機の隣りにある燃料プールが干上がらないように、

原子炉上部にある水をプールに移して欲しいの」

「わかったわ。でもどうやって?」

「原子炉上部とプールの間にあるしきいを少しずらして隙間をつくればいい

わ…」

それから間もなく、わたし達は現場に到着した。すぐ後に来たおばさまと共に

風になったわたしは建屋内に入り、実体化して4号機と燃料プールとの間に

あるしきいに愛力を注いで隙間を造った後、再び風になって建屋外に出た。

「良くやったわ。後30分位で起こると思われる、建屋内の水素爆発で隙間が

広がるハズだから、これで大丈夫よ」

上空で再び実体化した直後のわたし達にムーブメントさんがねぎらいの言葉を

かけた時、

「あらコメット、早かったのね」

メテオさんがヤベツさんと一緒にやって来て言った。

「メテオさん。わたし達はミッションが一つ終わったけど、あなた達は?」

「あの2号機が爆発しないように、なだめに行くのよ。失敗したら、東日本

全体が高濃度の放射能に汚染されてしまうから、気が抜けないわ」

そう真剣な表情で話すメテオさんの様子に事の重大性を改めて感じた。

「で、あなた達は?」

「コメット王妃とクラリス女王が到着したら、この周辺で発生する放射能が

陸地に向かわず、東海上に向かうようにさせるために、強い西風を吹かせる

ミッションをやってもらうわ」

とムーブメントさんがわたし達に代わって答えてくれた。

「そう。頑張ってね。行くよ。ヤベツ」「ハイ。お姉様」

「そっちも頑張ってね」

とわたしが言うと、メテオさんは右手を上げて応えつつ,2号機の方に向

かって降りて行った。

「わたし達はどうすればいいの?」

「後15分位で2人が来ると思うから、その前に愛力を集めて欲しいの。この

ミッションにはとてもたくさんの愛力がいるわ」

「わかったわ。おばさま、行きましょう」

「ええ。」

それからスピカおばさまとわたしは更に高度を上げ、愛力を集めた。そして

地上に降りて母とクラリスに合流して間もなく、大きな音とともに4号機内で

水素爆発が起きた。

「4号機の燃料プールに水が移ってきたわ」

とムーブメントさんが言った。「これで燃料プールの方は大丈夫になったけど、

今の爆発は3号機から漏れ出た水素ガスによるものであって、周辺の放射能の

濃度が急に上がり始めたわ。これからさっき言ったミッションをやってもらう

わ…」

 わたし達はムーブメントさんの説明に一心に耳を傾けた。それから、原発を

中心に私は北、母は南、おばさまは西、クラリスは東に分かれて上空に舞い

上がった。わたし達は一定の高度に達すると、それぞれのバトンを中心に

向けて言った。

「輝きの元である方。あなたの愛力を、そしてあまたの力を。どうかわたし達

の愛力に変えて。アガパオー!」

するとそれぞれのバトンから光が出て、中心に向かい、一つになった。その

直後、ハート型の光が大きく広がると、強い西風が吹き始めた!その後、

わたし達は分身を出し、自分の分身や他の人と交替しながら2日間に渡って

風を吹かせ続けた…。

 

9:45

「コメットさん、宮城県内に入ったわ。そろそろ高度を下げ始めて」

「エ、あ、ハイ」

ムーブメントさんの声ではっと我に返ったわたしはラバボーに

「ラバボー、宮城県内に入ったから、そろそろ高度を下げ始めて」

と言った。

「了解ダボー」

との声と共に、ゆっくりと高度が下がり始めた。眼下には青い海が広がって

いた。ほとんど波は立っていなかった。間もなくはるか先に陸地が見え始めた。

「石巻湾だわ。ラバボー、このままあの湾に向かって」

「わかったボー」

 ラバボーはそう答えると、更に高度を下げた。海にはさざ波が立ち,右手

には小さな島が幾つか浮かんでいて、濃い緑に覆われていた。私たちは湾の

真ん中付近の1本の細い筋を目指した。その先はマンガ館のわきを流れる川に

つながっていた。高度が下がるに従って、筋が次第に太くなっていった。

「コメットさん、私たち、このままの格好で大丈夫なの?」

「ええ。この町は『マンガのまち』ですもの。ラバボー、マンガ館のわきに

降りて。降りたらすぐにアガペーハートに入って」

そうわたしが話すと、ラバボーは黙ってうなずいた。やがてマンガ館の銀色の

ドームがはっきり見えてきた。マンガ館は地上3階、地下1階建てで、最上階

は窓がほとんどなく、半円形をしていた。ラバボーはマンガ館のわきの駐車場

に着陸すると小さくなり、アガペーハートの中に入った。ふと、まわりを観る

と、わたしは一人の少女が少し離れた所に下を向いて座っているのに気づいた。

その少女からの輝きの少なさに驚いたわたしは近づいて

「こんにちは。どうしたの?」

と声をかけた、少女が顔を上げた瞬間、わたしは驚いて

「凪さん、久しぶり」

と言った。

「…コメットさん、こんにちは、そっちの人は?」

凪さんは少し顔を明るくして聞いてきた。

「いとこのあおいよ。あなたより一つ下だわ」

「はじめまして。柊あおい、5年生です。今はコメットさんといっしょに住

でいます」

「初めまして。石巻市立大河小6年の石森凪です。よろしく。あおいさんも

星国の人なの?」

「母は星国の人だけど、父は地球人です。私も地球で生まれました。よろしく

お願いします」

「こちらこそ。…あ、あおい、一つ上だけど、『なぎ』って呼んでもらっても

かまわないわよ」

凪さんは笑顔を向けながら言う。わたしも嬉しくなった。

「え、なぎ…さん、いいですか?」

「ええ。あなたは、やっぱり星国の人ね。あなたといると、ふしぎと楽しく

なるのよ〜」

凪さんは笑いながら言う。わたしも思わず笑いながら言った。

「凪さん、どうしてここにいるの?さっきは顔色が良くなかったみたい

だけど?」

すると凪さんの顔の輝きが失われたので、わたしは凪さんの目をまっすぐ

見つめながら

「ごめんね。無理に話さなくてもいいよ。でも、もし良かったら話して…」

と言った。すると凪さんは少し間をおいてから、ゆっくり話し始めた‥

「実は…私、友達がいないの…

あの後、親戚の家を転々として、結局高台にあるおじさんの家に住むことに

なったの。おじさん達はとても良くしてくれているわ。でも、学校も変わって

それまで仲の良かった友達ともほとんど別れてしまったわ。先月、残ったたっ

た一人の友達も引っ越してしまって…」

凪さんは時折、肩を震わせながら話し始めた。これまで抑え込んできた感情が

一気に湧き出てきたようだった。「何とも言えないあたたかいもの」が周囲を

包んでいるのを感じた。しばらくして凪さんの話しが終わるとあおいちゃんが

渚さんの手をとって言った。

「凪、私で良かったら、いっしょにいていい?」

「もちろんよ。あおい、私たちはもう『ともだち』だもの…」

そう話す凪さんの顔はこれまでになく、輝いていた。

「じゃあ、私と一緒に来てくれる?」

「ええ。」

 凪さんがそう答えると同時にあおいちゃんは右手に持っていたバトンを振り、

星力を足にかけると凪さんの手をしっかり握りながら大空へ飛び出していった…

その2「ほんとうの友」に続く…。

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