コメットさんの日記最新版 第7章「星の絆2

プロローグ

主な登場人物:

コメットさん:13才。ハモニカ星国の王女。「瞳に輝きを持つもの」とさ

れるタンバリン星国の王子を探しに地球に滞在中。バトンによって「星力」

を使う事の出来る「星使い」でもある。かつてタンバリン星国の陰謀で捕

らえられたラバボーを助ける。

コメットさんのお母さん:ハモニカ星国の王妃。

スピカおばさま:コメットさんの母の妹。長野県八ヶ岳山麓のペンションを経営

している。コメットさんの良き相談相手でもある。

ラバボー:コメットさんのお供&ペット。かつて「ひめさまほったらかし

罪」で偽りの裁判にかけられる。

ラバピョン:ラバボーの恋人。スピカおばさまのお供。今は森に住んでいる。

ムーク:メテオさんのお供。かつて偽りの裁判でラバボーの弁護をする。

沙也加ママ:コメットさんがお世話になっている藤吉家の主人、景太郎パパの妻。

 

2001 12/1 14:00

 

 わたし達はその日、スピカおばさまの家に来ていた。ラバボーはラバピョンの

家に行っている。最近ラバボーがラバピョンの所に行く回数が増えていることを

わたしはちょっと気にしていた。

(いいな〜ラバボーはいつでもラバピョンに会えて。それに引きかえわたしは…

ケースケ、いまごろどうしているだろう。あれから2ケ月近く経つのに、手紙の

一つも来ないなんて)

「コメット。どうしたの。浮かない顔をして」

「いえ、おばさま。何でもありません。ちょっと考えごとを」

「ケースケ君のことね。会いたいんでしょ?」

とスピカおばさまはわたしの心を見たかのようにズバリと言ってきた。

 わたしは真っ赤になりながら、

「ええ、まあ、その〜」

というのがやっとだった。

「わかるわ。その気持ち。もうずっと連絡がないんでしょ?」

「ハイ…。でも、わたしが助けが必要な時、ケースケの声が聞こえてくるん

です。おかげで何度も助けられました。この前、メテオさんと入れ替わっ

た時にも。あの声のおかげで、わたし、メテオさんと輝きを一つにする

きっかけをつかんだんです」

 わたしはその時のことを詳しく話した。

「そう、そんなことがあったの。ねえ、もしかしたら、ケースケ君はどこ

かであなたの様子を見守っているんじゃないかしら。前にあなたがケース

ケ君の心の日記を読んだように

「星力がなくても、そんな事出来るんですか。それに、今はわたしの方か

らは出来ないし

「それはわからないわ。でも、2人の心の間に『絆』があれば、恋力で出

来るかもしれないわ。あ、でもまだ彼から告白されてないんだっけ」

ハ、はい…って、お、おばさま!どうしてそれを」

 わたしは動揺を隠せず思わずそう言ってしまった。

「わかるワよ。でも大丈夫。彼の輝きを信じて待ちましょう」

「はい、おばさま」とわたしが言った時、突然

「た、たいへんですピョン!ラバボーがいなくなったですピョン!」

と言ってラバピョンがかけ込んできた。

「ラバピョン、どうしたの?」

とおばさまが言うと、

「2人で鬼ごっこをしているうちにいつの間にかラバボーがいなくなってしまっ

たのピョン」

 わたしはすぐにラバボーが前回ここで捕まった事を思い出し、

「おばさま、大変。もしかしてラバボーはまた捕まっちゃったのかもしれ

ないわ。わたし、ラバピョンと一緒にラバボーを捜しに行きます」

「気をつけてね。コメット」

「ハイ。行こう。ラバピョン」

とわたしが言った時、

「ひ〜め〜さ〜ま〜!」

というラバボーの泣き声が聴こえてきた。

「ラバボー!どこにいるの!」

とわたしは叫んだが、ラバボーの姿はどこにも見えない。わたしはラバピョンに

飛び乗って雲の上を目指した。

  雲の上に出たわたし達は急いで星力を集め変身するとティンクルバトンにラ

バボーの居場所を聴いた。バトンが指す方に目を向けると、キラっと光るものが

見えた。

「あれだわ。ラバピョン、急いで!もしかしたら追いつけるかもしれない

わ」

「行きますピョン!」

 わたし達は光に向って一直線に進んでいった。光がどんどん大きくなる。

「やっぱり、あれは星のトレイン!いや、本当はタンバリン星国の星のバ

ルーンかもれないわ。ラバボー!」

「ひめさま〜!、ボーはここにいるボー!これは本物の星のトレインで、

今度は本当に星国に連れて行かれるんだボー!」

「ラバボー!!」

 そう叫んだわたしが星のトレインを見ると、小さな白いものがちらっと見えた。

「ラバボー、今助けるわ」

 わたしはバトンを振り、星力でラバボーをつりあげようとした。が、あと少し

の所で星のトレインはワープしてしまい、バトンから伸びた「星の絆」は何もな

い空間をむなしく通り過ぎるだけだった。

「ラ〜バ〜ボー〜!!!」

 わたしはショックのあまり、そう絶叫した。

 

☆☆☆

 すかっり元気をなくしたわたしはいつの間にか地上に降りていた。

「コメットさま。元気出すのピョン。ラバボーはきっと私が助けるのピョン」

「ありがとう。ラバピョン。でもどうしたら…」

その時、ティンクルホンが鳴った。

「はい、コメットです。あ、お母様!実はラバボーがまたさらわれちゃったの…」

 わたしは泣きそうになりながら言った。

「そうなのよ。ラバボーは『ひめさまほったらかし罪』で捕まってしまったのよ。

この後臨時裁判が開かれることになっているの。私はこれからカスタネット星国

で大事な会議があるから出席出来ないのだけれど、あなたも証人として裁判に出

て欲しいの。もうすぐ迎えの星のトレインがつくわ」

「証人?」

「ラバボーについて色々聴かれると思うから、正直に答えて欲しいの」

「そんなことより、早くラバボーに会わせて下さい」

「残念だけど、それは出来ないわ。あなたはこの裁判の関係者。裁判が終

わるまでは、たとい王女のあなたでも被告人のラバボーに自由に会うこと

は出来ない決まりなの。それにまだラバボーはこちらに到着していないわ。

ラバボーの様子はあなたがこちらに着いてから知らせるようにするから」

「でも、ラバボーは何にも悪い事をしていません。それはわたしが一番よ

く知っています」

「私もそう思うわ。でもコメット。よく聴いて。だから、あなたが証人と

して呼ばれたのよ。ラバボーが悪い事をしていない事をみんなに納得させ

ることが出来るのはあなたしかいないわ。あなたの答え次第でラバボーを

助けることが出来ると思うの。わかる?」

「わかりました。お母様。やってみます」

裁判にはお父様は出席されるわ。何かあったらお父様に聴いてね。それでは」

と母は言って電話は切れた。

「ラバピョン、わたし、ラバボーを助けるために星国に行くの。もうすぐ

星のトレインが来るからラバピョンも来る?」

「もちろんですピョン。私もラバボーを助けるピョン」

「ありがとう。あ、おばさまに知らせなきゃ」

 それからわたしはスピカおばさまにこれまでのことを話した。

「そう。それは大変ね。裁判はそんなに時間はかからないと思うけれど、心配さ

れるといけないから、一応あちらのご家族にも話しておいた方がいいわ」

「でも、どう言ったらいいのか、わからないわ。本当のことを言っても、

信じてくれないと思うし

「それじゃ、こう言ったらどうかしら」

とおばさまが助け舟を出してくれた。

「わかりました。ちょっと、行ってきます」

「気をつけて」

 わたしは星のトンネルで沙也加ママのお店に行き、おばさまから言われた通り

に沙也加ママに話した。

「そう…。友達の無実をはらしに裁判で証言しに行くんだ…かっこイイ!なんて

言ってる場合じゃないわね。一人で大丈夫?」

「父も一緒に裁判に出てくれることになっています。すぐに戻れると思いますけ

れど、後で連絡します」

「おとうさんや子供達には私から話しておくわ。気をつけてね。それから、ご両

親によろしくね」

「ハイ」

「元気出して、いつものコメットさんらしくないわよ」

「すみません。友達のことが心配で。わたし、裁判なんかに出るのは初めてだ

し、みんなの前でちゃんと話せるかどうか…」

「だ〜いじょうぶよ。あなた、本当はハモニカ星国の王女様なんでしょ?」

「エ、?」わたしは驚いて言った。

「冗談よ。ネネ達が言ってたのをまねしただけ」

「ハ、ハ、ハ、そうですよね。ママったら変なこと言うんですもの」

とわたしはほっとして言った。

「頑張ってね。最後まであきらめちゃだめよ」

「それでは行ってきます」

「早く戻ってきてね。じゃ、また」

 

16:30

 わたしがおばさまの家に戻ると、ちょうど星のトレインが着いた所だった。

「おばさま。それでは行って来ます」

「ご両親によろしくね」

「はい。それじゃラバピョン、行くよ」

 わたしは本当の姿に戻ると、ラバピョンと一緒に星のトレインに乗り込んだ。

すぐに星のトレインは走り出し、やがて雲の上に出た。

「さようなら〜」

 次第に小さくなる地球に向ってわたしは手を振った

 

☆☆☆

 今は星のトレインはワープ中だった。わたしの住んでいたハモニカ星国のある

トライアングル星雲は地球から約4000万光年も離れているが、星のトレインだ

とたった2時間くらいで着いてしまう。星のトレインは一度に一億光年までワー

プすることが出来、2万光年までしかワープ出来ず、148千光年しか離れてい

ないイスカンダルを往復するのに約9ケ月もかかった宇宙戦艦ヤマトの性能をは

るかに上回っているのである(波動砲はついていないけれど)。ヒゲノシタの話に

よれば、ハモニカ星国には恒星だけで約5001000億個の星があり、大きな惑

星だけでもその45倍、生まれたばかりの赤ちゃん星も含めると数えきれない

程の星があるそうだ。そしてカスタネット星国にはその半分位、タンバリン星国

にはその23倍の星があるという。将来、こんなに大きな星国の王妃として、

お母さまのように、みんなをまとめていくことが出来るのだろうかわたしは自

分の存在のあまりの小ささに不安を覚えると同時に今それをしている母の苦労を

思った。

「コメットさま。何を考えているのピョン?」

「ラバピョン、わたし、お母さまみたいになれるのかな、って思ってたの」

「だいじょうぶですピョン!だってコメットさまはアフガニスタンに行った時みんなをまとめることが出来たのピョン!コメットさまはひとりでは

ないピョン!みんなの力を合わせればきっと出来るのピョン!」

「ラバピョン、ありがとう。少し元気が出てきたわ。あ、車掌さん、星国まで、

あとどれ位?」:

(ひめさま。星のトレインは現在トライアングル星雲から約30トレイン分の所

まで来ています。あと30分位で到着予定です)

「ありがとう」

 わたしはそう言うと、再び物思いにふけったちなみに星国では地球のような

「光年」という単位は通常使われず、ある距離を星のトレインが最大スピードで

進んだ時の時間を単位にしている。例えば、地球までは約2時間かかるので2ト

レイン時間、直径約7万5千光年のハモニカ星国の大きさは15トレイン秒、な

どとなる

(ひめさま、後5分でワープアウトです。もうすぐ着きますよ)

「ネコ車掌さん、わかったわ」

5分後ついに目の前に、なつかしい、トライアングル星雲を構成する3つの

星国の渦巻きが広がった。

「ラバボー。必ず助けるからね」

だんだん大きくなる渦巻きを見ながらわたしはそうつぶやいた。

その1「告発」に続く―

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