コメットさんの日記(最新版)第7章「星の絆2」その1「告発」

主な登場人物:

コメットさん:13才。ハモニカ星国の王女。「瞳に輝きを持つもの」とさ

れるタンバリン星国の王子を探しに地球に滞在中。バトンによって「星力」

を使う事の出来る「星使い」でもある。「ひめさまほったらかし罪」で捕ら

えられたラバボーを助けにハモニカ星国に帰る。

メテオさん:13才。カスタネット星国の王女。コメットさんを追って同じくタン

バリン星国の王子を探しに地球に滞在中。ラバボーの裁判を傍聴しにハモニカ星

国に向かう。

コメットさんのお母さん:ハモニカ星国の王妃。

コメットさんのお父さん:ハモニカ星国の王様。

クラリス王女:13才。ハモニカ星国最大の小星国、バイオリン星国の王女。

コメットさんの星国での一番の親友。ラバボーの弁護人。

ヒゲノシタ侍従長:ラバボーの裁判の裁判長。

ラバボー:コメットさんのお供&ペット。「ひめさまほったらかし罪」でハ

モニカ星国に連行される。

ラバピョン:ラバボーの恋人。スピカおばさまのお供。ラバボーを助けにコメッ

トさんに同行する。

カール:クラリスのお供

ムーク:メテオさんのお供。ラバボーの主任弁護人。

三島圭佑(ケースケ):15才。コメットさんの大切な友達。世界一のライフセイ

バーとなる夢をかなえるためにオーストラリアに向かう。

 

12/1 18:30

 星のトレインはハモニカ星国に入り、小ワープした。そのとたん、わたしは空

気が違うことに気づいた。(あたたかい大分元気が出てきたわ。)

(ひめさま、星のお城まで後4分です。みんなひめさまのご到着をこころまちに

しております。)

「車掌さん。もうすぐ着くのね」

 小ワープがあけると星のお城のある ハモニカ星(β星)が視界に入ってきた。

わたしはなつかしさで胸がいっぱいになった。ここでわたしの住む、β星につ

いて紹介しちゃうと、β星はハモニカ星国の中心にある、地球の太陽とほ

ぼ同じ大きさと温度のエネルギー星の第二惑星で大きさ及び重さは地球の

0. 96倍、よって重力もほぼ同じ。一方、大気の温度はどの場所でも平均

18度、四季に応じて030度になるよう星力で調節されており、もちろ

ん雨の降り方等も全て制御されており、地球のような自然災害はまず起こ

らない。β星の自転周期は24時間6分、公転周期(エネルギー星を一周

する時間)は306日だが、星国の時間や日、年月の単位は現在は地球と同

じ原子時計を元に決められており、地球(西暦)と全く同じである。また、

地球には時差があるがトライアングル星雲内はなぜか日本時間と同じトラ

イアングル星雲標準時間で統一されており、このため、時計は24時間のも

のが普通用いられている。エネルギー星にはこのほかに3つの惑星があり、

1惑星のα星はミルク星とも呼ばれており、第3惑星(γ星)には星国

唯一の「輝き回復所」(地球の刑務所に当たる)があり、「かんごく星」と

呼ばれている。

 星のお城はβ星の赤道上の地上より約200 kmの高さにあり、星力で地

上とつながっている。星国では当然の事ながら、移動したり、食べ物や建

物等をつくったり、などあらゆることをするのに「星力」が使われており、

地球のような排気ガスをまき散らす車や爆音をあげて飛ぶ飛行機等による

公害やエネルギー問題はない。「星力」の大もとのエネルギーはエネルギー

星をはじめとする、恒星たちから供給される。星国には地球のような「お

金」というものはない。欲しいものは星力あるいは他の人にお願いするこ

とによって手に入れることが出来る。つまり、星力さえ使えれば、生きて

いけるのであり、地球人のように生活のために働いてお金を得る必要はな

いのである。これが地球の人とわたし達星使いとの最大の違いかもしれな

い。「星力」は「星の子」達の善意のもとに(ただで)供給されているので

あり、これがもし、地球のように「あなたの今月の星力の使用量は356エ

トワールでした。21548ハモニカを来月末までにハモニカ銀行にお振込下

さい。星力の使いすぎに注意しましょう。ハモニカ星力管理局」なんて請

求書が来たら、星力なんて使う気がしなくなってしまう。(ひめさま、も

う着きましたよ)おっといけない。わたしはラバピョンと一緒に急いで星のトレ

インから降りた。すると突然、「パ〜ン!パ〜ン!」というクラッカーの音とと

もに、

「ワー!」という大歓声に包まれた。わたしはあっけにとられていたが、

「ひめさま御帰還おめでとうございます」

というヒゲノシタの声にようやく我に返って辺りを見回すと、まず、「ひめさまお

帰りなさい」と書かれた横断幕がかけられた星のお城の門が目に入った。反対側

を見ると、数えきれない程の星使いやホシビト達が集まっていた。お城の中にも

大勢の人がいるようだった。

「ヒゲノシタ!」

「みな、一目ひめさまのお顔を見たくて集まっておるのです。本来ならお城まで

星のトレインにお乗り頂くのですが、ここからは王族専用の『星のゴンドラ』で

移動して頂きます。こちらにどうぞ。これにお乗り下さい」

 わたしが言われるままに星形のふたのような物に乗ると、回りがガラスのよう

なものでおおわれ、わたしはゆっくりと舞い上がっていった。たくさんの人が手

を振っていた。どの顔も輝いている。わたしは自然と手を振っていた。

「みんなありがとう」

 わたしは星国に生まれて本当に良かったと思った。

「本当に久々に帰ってこれてよかったのピョン」

とラバピョンも嬉しそうに言った。

 やがてわたしはお城の中に入り、ゴンドラを降りた。周りにはなつかしい顔が

並んでいた。

「おかえり、コメット」

「ただいま〜お父さま〜!」

と言ってわたしは父の胸に飛び込んだ。後で聞いた所では、

父はこの時あまりの嬉しさに、もう死んでもいい、と一瞬思ってしまったそうだ。

今では少しわかる気もする。

「王様、王様!」

というヒゲノシタの声にわたし達はやっと我に返った。

「大変申し訳ございませんが、ひめさまに今後の事をお話ししなければなりませ

んので

「お〜お、そうじゃった。たのむ」

「その前にこちらの方々をご紹介したいと思います」

「コメット様。ヘじめまして。輝きチェックビトの長、マーズでございます。先

日はこちらのヒデが大変お世話になりました」

「いえ、こちらこそ。映像では会っているわね。よろしく」

「お久しぶりです。ひめさま。お会い出来るのを楽しみにしておりました」

「お元気ですか」

「はい。これもひめさまのお蔭です」

ありがとう。ク、クラリス!会いたかった!久しぶり!」

わたしは星国での一番の親友、バイオリン星国の王女クラリスの手をとった。

「コメット、私もよ。明日の裁判には私も行くわ。困ったことがあったら何でも

言ってね」

「ありがとう」

「ひめさま。クラリス様がおっしゃられたように、ここにおられる方々は皆明日

行われるラバボーの裁判に出席されることになっております。それではこの後の

事を申し上げますと、19時より、大広間にてひめさまのご帰還歓迎レセプション

が開かれ、その中で記者会見が行われることとなっております」

「ヒゲノシタ。コメットは長旅で少々疲れておるはず。記者会見はわしが対応す

るから、コメット。おまえはみなに顔を見せたら明日に備えてゆっくり休みなさ

い。ラバピョン、コメットに代わってみなの質問に答えてやってくれ」

「わかったのピョン」

承知しました。そのように手配させます」

「お父様、ありがとう!」

「それから明朝9時より裁判を開始いたします。裁判について簡単にご説

明致します。まず、私が裁判長、それからタンバリン星国とカスタネット

星国から一人ずつ裁判官が来ます。この3人でラバボーが有罪か無罪かを

決めるのです。それから、この裁判には2名の輝き自然度チェックビトが

つきます。1人はマーズ氏、もう1人はリゲル長官です」

「どうして輝き自然度チェックビトが必要なの?」

「ひめさまはまだご存知ありませんでしたな。すみません。星国の裁判で

は裁きが正しく行われているか輝き自然度チェックビトがチェックするこ

とになっております。証人や被告人がウソをついていたり、あるいは星力

を使って不正を行おうとしても見破ることが出来るのです。ですからひめ

さまも質問には正直にお答えになりますよう、重ねてお願い申し上げます。

なお、星力を使った不正を防ぐために、法廷内では輝き自然度チェックビ

ト以外は原則として星力は使えない決まりとなっております。よってティ

ンクルバトンの類いは法廷内に持ち込み禁止となっておりますのでご注意

を」

「わかったわ。ヒゲノシタ」

「輝き自然度チェックビトは普通は一人ですが、今回はひめさまの番組作成のた

めと、より公正に裁判を進めるために、私も加わることとなったのです。少しは

ご安心頂けたでしょうか」

「マーズさん、よろしくお願いしますね」

「それからまず、検察官が被告人のラバボーがどんな悪いことをしたのか、

どうしてそう思うのかをお話しします。その時、ラバボーや証人であるひ

めさワ等に色々質問をいたします。

 次に弁護人、これはムーク侍従長にお願いしてあります。今回はメテオ

様とご一緒に明日来られることになっておりますがラバボーは検察官が

言ったようなことはしていない、どうしてそう思うのかをひめさま達に質

問したりしながらお話しします。

 そしてこれら両方の意見、および輝き自然度チェックビトの意見を聴い

て私達が判決を下すのです。お分かり頂けましたかな?」

「ええ。大体。あ、わたしからラバボーのために何か言うことは出来るの?」

「はい。裁判長の私が許可すればお出来になれます。ただし、ひめさまは

ラバボーを一番良くご存じのはずですから、ひめさまのご発言次第で、ラ

バボーの有罪、無罪が決まるやもしれません。ご発言の際はよく御考えに

なった方がよろしいかと思います」

「ええ、そうするわ」

「あの〜。ヒゲノシタ侍従長」

「何ですかな。クラリス様」

「私も弁護人になっていいですか。ムーク侍従長だけだとちょっと心配で」

「それは

「わしが許可する」

王様!し、しかし〜

「ムーク侍従長が同意すれば問題なかろう」

「わ、わかりました!すぐに確認をとってまいります」

ヒゲノシタは足早に去っていった。

「ありがとう!お父様。クラリス」

 そうわたしが言うと、クラリスの犬型のお供のカールが突然出てきて

「ひめさまお久しぶりです」

と言った。

「カール。久しぶり。元気そうね」

「コメット。この裁判、勝つのは結構難しいと思うわよあ、ヒゲノシタが戻っ

てきたわ」

「クラリス様。ムーク殿の同意がとれました。よってクラリス様はムーク侍従長

の補佐としてラバボーの弁護をして頂くこととなりました。もう間もなくレセプ

ションが始まりますので、みなさまどうぞこちらへ」

 わたし達は大広間へ向った

☆☆☆

 

 その頃ラバボーは城の下層部にある牢屋の中で半べそをかいていたが、

「あ、これはひめさまの輝きだボー!ひめさまはやっぱり助けに来てくれたんだ

ボー!」

と言って起き上がった。そこにバッタ人がやって来て、

「ヒゲノシタ侍従長からの伝言を伝えに来たのであった!。ひめさまは先程到着

され、明日の裁判にご出席されるのであった!では」

と言って帰っていった。

「あ〜もう帰っちゃうの〜」

ひとり残されたラバボーは

「ひめさま〜」

とつぶやいた。

 一方、藤吉家では丁度夕食の時間だった。

「やっぱりコメットさんがいないとちょっと寂しいわね」

と沙也加ママが言うと、

「ツヨシ君もさびしい」

「ネネちゃんもさびしい」

2人が答えた。

「そうだね。今頃どうしてるかな〜。コメットさん」

ちょっと寂しそうに景太郎パパが言った。

「今日は久しぶりにあちらの家に帰っていると思うわ。裁判があるのは明日だと

思うし」

「ネネちゃん、星国にいきたい」

「ツヨシ君もいきたい」

「でもすっごく遠いんだろ〜コメットさんが住んでいる国って」

「うん、でも星のトレインで1日かからないってツヨシ君きいた」

「ネネちゃんもきいた」

「へえ〜。でも、コメットさんの住んでいる国って、どこにあるのかな。ねえ。

ママ」

「『ハモニカ星国』なんて聞いたこともないわね。きっと最近出来た、小さな島国

なのよ」

「『星国』だから宇宙にあったりしてなわけないよな

「パパ、でも、きっと自然が豊かで、星が良く見えるのよ」

「でもコメットさんが来てから不思議な事が良く起こるよな。11月に雪が積もっ

ちゃうし」

「そうね。あの娘は私達にはないものを持っているわ。ホントに星国の王女様だ

ったりして」

「まさか、ハハハ〜」

「冗談よ」そう言って、沙也加ママは窓の外の星を見ながらつぶやいた。

「早く帰って来て

 

12/1 20:00

 レセプションを会場を早々に抜け出したわたしとクラリスはわたしの部屋でこ

れまでのお互いのことを色々話した。わたしのいるハモニカ星国には140の小星

国があり、小星国は更に1001000の星域から成り、星域は100500の星団

を持っており、星団は数千〜数万の恒星から構成されている。

 クラリスはハモニカ星国の14を占める、最大の小星国のバイオリン星国の

王女で、わたしとおない年だが、5年前に両親を事故でなくしてからは摂政であ

る叔父を助けるべく、女王としての勉強をしていた。頭が良く、優しくて、強い

意志を持った彼女にわたしはひかれ、よく相談にのってもらっていた。彼女もわ

たしに何でも話してくれていた

「クラリス。わたし、あなたにそっくりな顔をした人の出てくる映画を見たのよ」

「知っているわ。あなたの番組の『動画ビト』の回で出て来た映画でしょ。ちょ

っとだけしか見てないけれど、確かに私によく似ていたわね」

「ええ。年は違うけれど、名前は同じだし、御両親がいないことまで。そうだ、

この映画のビデオがあったハズよ。見たい?」

「もちろん」

「あなたがそう言うだろうと思って、さっきマーズさんに頼んでおいたわ。わた

しもまだ見ていないパート1と一緒にもうすぐ宅急便で届けてくれるハズよ」

「そう。でもそろそろ明日の準備を始めなきゃ」

「準備って?」

「コメット。さっきも言いかけたけど、明日の裁判に勝つのは簡単じゃな

いと思うわ。あなた、もしかしてラバボーが前回捕まった時の裁判の映像

をまだ見てない?」

「ええ。でもラバボーからその時の話は大体聴いたわ。ひどい裁判だったそうね」

「ええ。これを見ればわかると思うけれど、ムーク侍従長の話しは全然弁

護になっていなかったわ。今回はもう少しちゃんとしてくれると思うけれ

ど、あまり期待は出来ないわ。だから私が弁護人になろうと思ったの」

とクラリスはメモリーボールを取り出して言った。

「それに、あなたがここに来るまでにやっていた番組の緊急アンケートに

よると、ラバボーが有罪と思う人が半分以上の6割もいるのよ。このまま

ではラバボーを助け出すことは出来ないと思うわ」

「どうすればいいの?」

「まず、この映像を見てちょうだい」

わたし達は前回のラバボーの裁判の様子を観た。ラバボーがかわいそうだと思う

と同時に、自分がその場にいれなかったことを悔んだ。

ひどい。こんな裁判にはさせないわ

「エエ。でもコメット、相手はプロよ。子供の私達が勝つのは難しいわ。

でも安心してちょうだい。私には心強い味方がいるの。ねえ、おじさま」

「ク、クラリス様。その呼び方はちょっと〜。あ、コメット様。初めまして。私

はカゲ人813号でございます」

「よろしくね」

「この事件についておじさまに色々調べてもらったの。後は向こうの出方

次第だけど、何とかなると思うわ。ところでコメット。あなたはラバボー

をどう思っているの?」

「確かに最近ラバピョンの所に行く回数が多いな〜とは思っているけれど、

ラバボーはわたしの大切な友だち。それを『ひめさまほったらかし罪』な

んかでつかまえちゃうなんてひどい。今頃ラバボーどうしているか

「大丈夫よ。それを素直に伝えれば、きっとラバボーを助け出せると思う

わ」

「そ、そーよね。あ、もうこんな時間。そろそろ寝よう」

とわたしは言ったが、何となく「イヤな予感」がしていた。しかし、それはす

ぐにティンクルホンの呼び出し音にかき消された。もうすぐビデオが宅急便で着

くという知らせだった。

「クラリス。さっき言ったビデオがここに届くそうよ。見る?」

「ええ。早く見たいわ。あ、来たみたい」

それからわたし達はメモリーボールで再生したビデオを見つつ夜遅くまで語りあ

った

12/2 8:55

 わたし達はヒゲノシタの案内で臨時裁判所に向った。入り口でティンクルバト

ンを預けようとすると、「姫様達はお持ちになっていて結構です。輝き自然度チェ

ックをするまでもなく、法廷内でむやみにお使いになるようなことはなさらない

のは良く存じております」とマーズ輝き自然度チェックビトは言った。

 わたしとクラリスは右側の指定席に案内された。

「お早うございます。メテオ様。お久しぶりです。ムーク侍従長。今日は

よろしくお願いします」

「あ〜らクラリス。久しぶりね。どうしてラバボーの弁護人になろうと思

ったの?ムークでは相手にとって不足だから?ムーク、あんたも見くびら

れたものね」

「姫様それは。クラリス様。こちらこそ。ご安心下さい。前回のような過ちは

もう2度と致しません」

「わかったわ」

「メテオさん。来てくれてありがとう」

「いいのよ。コメット。この前みたいにムークを一人で行かせるわけにはいかな

かったもの。それに、私、裁判なんて出るの初めてだし、ちょっとワクワクして

いるの。あなた達のお手並み拝見といくワ」

「メテオさん…」

とわたしが言った直後、

「皆さん静粛に!それではこれよりラバボーこと、ラ・ヴアルモット・プ

ロボーネの特別臨時裁判を始めたいと思います。今回はコメット王女様も

本件の関係者として出席されることから、特別に国王陛下に開廷を宣言し

て頂きます」

とのヒゲノシタ裁判長の声が法廷内に響き渡った。法廷の中は星使いあるいはホ

シビトでいっぱいだった。入り口近くではヒデさんがメモリーボールが変化した

カメラをまわしている。入り口から見て左側が検察側、右側がわたし達のいる弁

護側で、正面にはヒゲノシタ裁判長とカスタネット、タンバリン両星国の裁判官

の席があった。父はその上にある席から立ち上がって、

「これより、我が娘のツキビト、ラバボーこと、ラ・ヴアルモット・プロ

ボーネの裁判を開始する」

と威厳のある声で言った。いつも父の優しい声しか聴いたことのないわたしは少

しびっくりしたが、同時に(すごい〜)とも思った。

「それでは被告人入廷!」

という裁判長の声とともに、中央に被告人席がせり上がってきて、リゲル長官及

びマーズさんと一緒にいるラバボーが見えた。わたしは思わず、

「ラバボー!」

と叫んでしまった。

「ひめさま〜」

とラバボーがこちらを振り向いて答えた。

「静粛に!それではまず、検察官。ラバボーが『姫様ほったらかし罪』

だと思う理由を言いなさい」

「ハッ。まずはこれをご覧下さい」

と検察官が言うと、被告人席の前にある大きなメモリーボールの中に立体映像が

現れた。

「これは前回ラバボーが捕らえられた時の映像です。タンバリン星国のワナとは

言え、ラバピョンに目がくらみ、簡単に捕まってしまい、ひめさまの必要に答え

ることが出来ませんでした」

「次にこれは今回ラバボーが捕らえられた時の映像です。前回と同じ手に引っか

かり、連行されてしまったのでございます」

正面にはラバボーがニセラバピョンにおびき寄せられて、落とし穴にはまる様子

が映し出されていた。

「ラバボー。被告人は捕らえられる直前、何をしていたのか?」

「ラバピョンと鬼ごっこをしていただボー」

「それは、被告人が地球に来た任務、『ひめさまと一緒にタンバリン星国の

王子を捜すこと』と何か関係あるのか?」

「それはラバピョンとただ遊んでいただけだボー。でもひめさまから許可を

もらっているボー」

「それでは次にハモニカ星国王女、ラ・コメットJr・ハモニカ様にお聴き

します。今のラバボーの言葉は本当ですか?」

「はい。わたしが許可しました」

「わかりました。次にラバボー。ラバピョンと遊んでいた時に被告人はコメ

ット様のことも考えていたか?被告人はたとえすぐお側にいなくても、ひ

めさまに何かあった時、あるいはひめさまが被告人を必要とした時、すぐ

に応えることが出来るよう、備えておく必要があるはずだと思うが」

ラバボーは困った顔をして、しばらく考えていたが、やがて、

「それは〜少しは考えて

と言いかけたが、しかし、それは

「いた、とは言えませんネ。ラバボー。質問には正直に答えて下さい。輝

き自然度チェックをすればすぐにわかりますから。今後このように輝き自

然度チェックに引っ掛かると、あなたの立場が不利になります」

とのリゲル長官の声に制された。

「ワ、わかったボー。本当は何も考えていなかったボー」

「と、このように、ラバボーはひめさまのことなどすっかり忘れて遊んで

いたのでございます」

「次にこれをご覧下さい。これはひめさまの番組のビデオからの映像でご

ざいます」

そこには、ラバボーがメテオさんの誘いに乗ってラバピョンとともに恋力を発動

させ、メテオさんが初めて恋力に目覚めた時の様子が映し出された。

「ラバボー。この時、被告人は一人で行動しているが、ひめさまの許可は

得ていたのか?」

「ひめさまには何も言っていないボー」

「ひめさまにお聴きしワす。このことについてラバボーから何か聞かれま

したか」

「いえ。何も聞いていません」

「つまり、ラバボーはこの時、ひめさまの許可なく、勝手に行動していた、

ということになりますな、ひめさま」

「ハ、ハイー」

そう答えながらわたしは少し不安になった。

「次にラバボー、ワナかもしれないのに、なぜメテオ王女の誘いに乗った

のだ?『ワナでもいい』と映像の中で言っているが本当にそう思ったの

か?」

「そ、それは、ラバピョンと一緒にいたかったからだボー。『ワナでもいい』と言

ったのは確かだボー。でもあの時のメテオ様は悪いことをするようには見えなか

ったボー」

「ということはラバピョンと一緒にいたいばかりに、ひめさまの許可なく、

メテオ王女に恋力を提供した、ということだな。被告人はコメット様の付

き人のはず。ひめさまのお供をし、そのお働きを助けるのが被告人の役目

ではないのか?」

何も答えることが出来ず、今にも泣き出しそうになっているラバボーを見て、こ

ちらも泣きたい気持ちになると同時に、不安が更に大きくなった。

 検察官はリゲル長官の方をチラッと見て、それから再び話し始めた。

「それでは次に決定的な証拠をお見せしましょう。これをご覧下さい」

そこにはラバピョンの家に行ったままなかなか戻ってこないラバボーをわたしが

拡声器で呼び出すシーンが映しだされた。

「ひめさま。この時ラバボーを何と呼ばれましたか」

「最初は名前を呼んだだけでした。それでも返事がないので、『ラバボー。はや

く来ないと「ひめさまほったらかし罪」で逮捕しちゃうよ〜。』と言ったと

思います。でも冗談です。本当にそう思って言ったわけじゃありません

「しかしひめさま、それではなぜ『「ひめさまほったらかし罪」で逮捕しち

ゃうよ〜』と言われたのですか。ラバボーを呼ぶためだけなら、もっと大

きな声で呼ぶとか、星力を使ってラバボーの心に直接呼び掛けるとか、他

にも方法はあったと思うのですが」

わたしはハッとした。

「ですからひめさまは本当はこのままでは本当に『ひめさまほったらかし

罪』になりかねない、いや既にそれに当たるのではないか、と少しでもお

考えになっていたのではありませんか」

「そ、それは

わたしは(やられた、さすがはプロだわ)と思った。

「異議あり!裁判長、今の検察官の質問は自分の都合のいいように相手に

答えさせようとするための、誘導尋問ではないかと思いますが

「リゲル長官、今の主任弁護人であるムー・ヴァイツエン・クネーデル侍従長の

意見についてどう思うかね」

「輝き自然度チェックの結果、この意見を却下致します。また、ひめさまヘ『わ

からない。もしかしたら、そういう思いがあったかもしれない』と答えようとさ

れていたと思います。その通りですね。ひめさま

「ハイ…」わたしはそう答えざるを得なかった。

「それでは次にひめさまにお聴きします。最近ラバボーの様子に変わった

ことはありませんでしたか」

「変わったことそう言えば、ラバピョンの所に行く回数が増えたと思いまし

た」

そう言ってから、(しまった!)とわたしは思った。でももう遅すぎる

「ラバピョンの所にはいつもひめさまも一緒に行かれていましたか」

「いいえ。一人で行かせることも時々ありました。もちろん、全て許可していま

す」

「しかし、そう度々一人で行かれては困る、と思われたことはありません

か。正直にお答え下さい」

「いえ。そんなことはと言いかけたわたしはリゲル長官の矢のような視線に

気づき、あわててこう言い直した。

「え〜。確かにそう思った時も1度か2度ありました」

「ひ、ひめさま〜」

ラバボーが蚊の泣くような声で言った。

「以上のようにラバボーはラバピョンに会いたいという個人的な事のため

にひめさまのお供をするという大切な任務を放棄し、時にはひめさまの許

可なく、勝手に行動することさえし、ひめさまに多大なご迷惑をかけてい

るのでございます。大体ひめさまにわざわざここに来て頂いていること自

体、はなはだご迷惑なことだと思うのであります。しかも、このように思

うのはわたくしだけではございません!まず、昨日放送された『ハモニカ

星国ニュース』の中の緊急アンケートによると、星国の民約15000人のう

ちラバボーが有罪と思う者が60.8%と無罪と思う者の30.2%の倍以上もい

るのです!更にこれはひめさまの番組のホームページの掲示板に書かれた

ものです。

ラバボーの「ひめさまほったらかし罪」について

ココロを鬼にして有罪に一票☆(許せ、ラバボーよ。)

理由:ひめさまのお供は『星国のからの命』であり、いくらひめさまの許しが得られたからといって、簡単にその『役目を放棄』して良いわけがない。

しかもその理由が、大好きなラバピョンに会いに行くという完全な『私事』、とい

う事実。そして幾度となく繰り返される『役目を放棄』。これはもう言い逃れ出来

ない事実です。それはラバボー本人が一番わかっているはず…。

これはもう有罪。有罪で間違いありません。

(凡才・HIDEさんの投稿より)

この他にも昨夜までに同様の書き込みが230件程来ております!このよう

に星国の民の多くもラバボーは有罪であると思っているのです!!これら

も重要な証拠として提出いたします!」

と検察官は大きな声で言った。そして、すっかりしょげているラバボーを見なが

「本来ならここでラバボーに罪を認めるかどうか聞くところですが、これ

だけの証拠および、ラバボーのこの様子を見れば、認めたも同然。これ以

上余計な質問をしてひめさまをわずらわせることもないかと思いまして

 以上でわたくしの説明を終わります」

と検察官は自信たっぷりに言った。

「それではここで一旦休廷とし、1時間後に弁護人の反論を始めることと

します。被告人退廷!」

とのヒゲノシタの声と共に、被告人席は床の下に消えていった。ラバボーは下を

向いたままだった。

「チョット!チョット!あんた達、な〜ニやってんのよ!ヤラレっぱなし

じゃないのよ〜このままラバボーが有罪になってもいいの!」

「メテオ様。次は何とか頑張りますから…」

クラリスもそう答えるのがやっとの様だった。

 わたしは逃げるように法廷から飛び出すと、たまらなくなって一人で泣いた。

自分はラバボーを助けるために来たハズなのに、自分の言葉がかえってラバボー

を追い詰める結果となってしまったことが悔しくて仕方がなかった。もっと違う

言い方は出来なかったのか、自分は何てバカなんだろう、とも思っていた。その時、あの声が聴こえた!

「バ〜カ、いつまで泣いてんだよ。オレはまだあきらめちゃいない。オレ

は、ラバボーの無実を信じてるぜ。『星の絆』でラバボーが星力と一緒にお

まえの方に向って来た時、お前はラバボーをすぐに受けとめることが出来

なかったろ。ラバボーを助けたかったら、あの時どうすればラバボーをす

ぐに受けとめることが出来たかを考えるんだ。お前達が昨日見た映画の1

シーンを思い出せばすぐにわかる。ラバボーとの絆を信じるんだ」

「コメット!今の声は何?」

「クラリス、あなたにもあの声が聴こえたの?あれはケースケの声だわ」

「そう、あれがあなたの恋人の声なのね、なかなかいいこと言うじゃない。私に

もそんな人が欲しいわ、何て言ってる場合じゃないわね。わかったワ。ケース

ケ君が言った映画のシーンが

「それって、もしかして、パート1の終わりの方の

「そう、時計塔からカリオストロ伯爵によって蹴落とされたクラリス姫が

湖に向って落ちて行くシーンよ。あの時、クラリス姫の下にいたルパン3

世がすぐにクラリス姫の方に飛び込んで、空中でクラリスに追い付いて彼

女を抱き、そのまま一緒に湖に落ちていったのよ」

「そうか、わかった、つまり、ケースケはあの時、わたしはラバボーが来

るのを自分の今いる場所から動かずにただ待っているのではなく、今いる

場所から離れてラバボーと一緒に落ちていればすぐに受けとめる事が出来

たハズだって言いたかったんだわ」

その時わたしの心にひとすじの光が差し込んで来た

「そうよ。コメット。つまり彼は今までお前達はラバボーを助けようと、

一段高い立場にいたからダメだったんだ。ラバボーを助けたかったら、ラ

バボーと同じ立場になって、ラバボーと一緒に落ちる所まで落ちる必要が

あるんだ、って言いたかったのね、さすがだわ。コメット、もうあまり時

間がないわ。ムーク主任弁護人達と一緒に急いで対策を練り直しましょ

う」

「ええ。わたし、ラバボーと一緒に落ちる覚悟は出来ているわ」

 わたしは自分が再び輝きを取り戻したことを感じながらそう答えた

 それからわたし達は一時間近く、色々話し合った。そして再び法廷に向った。

ドアの前でクラリスがこう言った。

「さあ、反撃開始よ!」

☆☆☆その2「反撃」へ続く

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