コメットさん☆の日記 第8章「アフガンの輝き2」その4

主な登場人物:

コメットさん:13才。ハモニカ星国の王女。タンバリン星国のプラネット

王子を探しに地球に滞在中。バーバラさん、ムハンマドさん達の依頼で暫

定行政機構の会議を成功させるためにアフガニスタンに来たが、ムシャラ

ク少佐にいのちを救われ、自分を狙ったウサマ・ヒン・ラディンと対決す

るためにトラポラに向かう。

メテオさん:13才。カスタネット星国の王女。コメットさんを追ってアフ

ガンに来た。キュービトを使ってカイザル議長とマフード副議長を和解さ

せようとしたが失敗し、日本に戻る。

ラバボー:コメットさんのお供&ペット。

 

バーバラ・カーライルさん:28才。NYタイムスの新聞記者。父をNYテロ事

件で失う。

 

ムシャラク・アブドラさん:52才。暫定行政機構運輸相。コメットさんをかば

って銃弾に倒れる。

 

ウサマ・ヒン・ラディン:45才。テロ組織アルカロイドの指導者。米国テ

ロの首謀者とされる。家族構成など不明な点が多い。数十人の兄弟がいるらしい。

4人の影武者がおり、一人は常に自分の側にいる。身長が2 m近くある。

オマール師:タリバンの最高指導者。現在の居所は不明。

 

アフガン現地時間 12/25 18:30(日本時間 12/25 23:00

 

 わたしは星の導きにより、ウサマ・ヒン・ラディンが潜む洞くつを探しあてた。

しかし、入り口には2人の兵士が立っていた。

ひめさま、どうするボー。とても入れてくれそうにないボー

わかってるわ。だから、コウモリさんに変身するのよ

 わたし達は小さなコウモリに変身し、難無く洞くつ内に入った。洞くつ内は暗

く、細い道が所々で枝分かれしており、幾つかの部屋があった。かなり奥まで来

た時、一つの部屋から話し声が聞こえた。

ひめさま、誰かいるみたいだボー」

ウサマ・ヒン・ラディンかもしれないわ。行ってみよう」

 わたし達は部屋の中に入り天井にとまった。中はたいまつでうす明るくなって

いた。何人かの男達がいて、中央に背の高い、テレビで見たのと良く似た体格の

男性が携帯電話で誰かと話していた。顔はフードですっぽりおおわれ、鋭く光る

目だけがのぞいていた。

「あれがウサマ・ヒン・ラディンにちがいない。」

そうわたしは思った。耳をすますと、

というわけでオマール師。暫定行政機構の会議は明日に延期された。しかし、

あのコメットという新聞記者のおかげで、あの2人は和解してしまったようだ。

ムシャラク少佐がジャマさえしなければ誤算だった。まあ、彼はいずれ殺すつ

もりだったし、現在、彼女の行方を追わせている。じきに捕まるだろう

という声が聞こえた。

 わたしは怒りに身をふるわせ、新聞記者の姿に戻ってウサマ・ヒン・ラディン

の前に飛び出した!

「あなたがウサマ・ヒン・ラディン?わたしがコメットよ」

「ああ。よくここがわかったな」

「ムシャラク少佐が教えてくれたわ。どうして彼を殺したの?」

「我々のジャマをしたからだ。あの会議が失敗すれば、暫定行政機構は混乱し、

やがて崩壊するだろう。そうすれば再び我々がアフガンを支配出来るからだ。お

前があの2人を和解させなければ

「どうしてそんなことをするの?せっかくみんなで新しい国をつくろうと

しているのに

「彼らはアメリカの手先だ。我々を殺そうとしている。この国はもともと我々の

ものだ」

「どうしてあのテロ事件を起こしてアメリカの人達を殺したの?」

「我々の存在を忘れ、貧しい国から富を集めて繁栄を謳歌し、軍事力にものをい

わせて他国に言うことを聞かせようとするアメリカ人が憎いからだよ。それに異

を唱えないお前達日本人も同じだ。では死んでもらおうか。あの娘を撃て!」

 まわりにいた何人かが銃を構えた時、まばゆい光と共に、わたしは恋力で変身

した。

 

「お、お前は」ウサマ・ヒン・ラディンは驚いて言った。

「て、天使」機関銃を持っている兵士のひとりが言った。

「これがわたしの本当の姿よ」

「どうした、早く撃て!」

とウサマ・ヒン・ラディンは命令したが、みな無言でかぶりをふった。

「ええい!」

と自ら銃を向けようとしたその時、

「やめろ!みんな銃をこっちに投げるんだ!」

という声と共に機関銃を構えたムシャラク少佐が現れた。

「ム、ムシャラク少佐!!」

「コメット!こいつはにせ者だ!本物はあそこにいる!2人とも正体を見

せろ!」

 いかにも、確かに私がウサマ・ヒン・ラディンだ

と言ってその男は顔半分を隠していたターバンをとると、ほおが落ち、やせこけ

た顔が現れた。この男も背が高かった。

「あ、あなたがウサマ・ヒン・ラディンー」

 ああ。この2ケ月、逃げ回ってばかりだったからな。大勢いた部下も、

大半が逃げたり、降伏したりした。ムシャラク少佐、君は死んだはずでは

なかったのかね」

「ああ、確かにアルカロイドの命令であの会議を妨害しようとしたムシャ

ラク少佐は死んださ。でも、おれはこの娘のおかげ、そしてこのペンダン

トのおかげでムシャラク・アブドラとしてよみがえることが出来たんだ」

「ム、ムシャラクさん、わたしを助けてくれてありがとう。でも、わたし

はもう大丈夫。あなたも銃を捨てて」

「わかってるよ」

そう言って彼は銃を足元に落とした。でも誰も再び銃を取ろうとはしなかった。

「ウサマ・ヒン・ラディン、あなたは世界一寂しがりやで臆病な人だと思

うわ。どうしてムシャラクさんやわたしを殺そうとしたの?どうしてあの

テロ事件を起こしたの?」

みんなこの国のことを忘れてしまったからだよ。ソ連軍の撤退の後、国

土は荒廃し、民は貧しく、飢えや病気で死ぬ者が少なくなかった。我々は

助けを必要としていたんだ。だがアメリカを始めとする西欧諸国も、日本

も、何もしてくれなかった。マスコミも関心をもたなかった。我々が国の

大半を支配しても、国として認めてくれたのはパキスタンだけだった。世

界中が我々を無視したんだよ。これではただ訴えただけでは誰も話を聴い

てくれない。いや、そういう場すら与えてもらえなかった。かと言って強

大な軍事力を誇るアメリカとまともに戦っては勝ち目はない。そこで彼等

の富と力の象徴であるあのビルを壊して目を覚まさせ、我々の力を示すし

かなかったのだ。我々はアメリカと戦争をするつもりは本当は初めはなか

った。作戦があそこまでうまくいくとは思わなかったからだ。でも、もう

後には引けなくなってしまったんだよ。君の言う通り、私は世界一寂し

がり屋で臆病者かも知れん。私は裕福な家庭に生まれたが父親は子供の時

に死んでしまった。母親が父親の他の妻と違う民族出身だったから、他の

大勢の兄弟たちの中で私はひとりぼっちだった。今でもそうだ。自分の部

下でさえ信用していないからな。私には4人の影武者がいて、その正体は

ごく一部の者しか知らん。アメリカの攻撃は恐かった。いつ自分が殺され

るかも知れない、と思って夜もロクに眠ることは出来なかった

わたしは思わず、

「ウサマ・ヒン・ラディン、ごめんなさい!わたし、あなたのことを知ら

なかった。この前ここに来るまではアフガンがどこにあるのかさえ知らな

かったわ。あなたのした事は間違ってると思うけれど、あなたが一番輝き

を必要としていたのに

と言った。

 ウサマ・ヒン・ラディンはこのことばに衝撃を受けたようだった。彼はわたし

をじっと見て、

「こんなことを言ってくれたのは、君が初めてだ。どうしてそんなことが言える

のかね」とこれまでにない、やさしい声で言った。

「よくわからないわ。でもムシャラクさんやバーバラさん、ムハンマドさ

んにカイザル議長、ハリー君みんなから輝きをもらっているからかもし

れないわ。そしてあなたからも

 そうわたしが言った時、2人の間に一瞬だけ「心の絆」が出来たのをはっきり

と感じることが出来た。

「君みたいなひとにもう少し早く出会えていれば、私はあの事件を起こさ

ずに済んだかもしれん。でももう遅すぎた。私はあまりにもたくさんの人

を殺しすぎた。今、自爆装置を作動させた。後5分でこの洞窟は爆破さ

れる。さらばだ

 こう言ってウサマ・ヒン・ラディンは銃を拾いあげると部下と共に洞窟の奥に

消えた。直後、天井が崩れ始めた。

「ウサマ・ヒン・ラディーン!」

「コメット!時間がない。こっちへ逃げよう!」

「ムシャラクさん、待って!ラバボー、わたし達を乗せたらすぐに出口に

向って!」

ひめさま早く!」

わたしがラバボーに飛び乗ると、ムシャラクさんも飛び乗ってきた。

星の子達、わたし達を守って!

というとたちまちバリヤーがはられ、岩が落ち始める中をわたし達は出口へと向

った。外に飛び出した直後、大きな爆発があり、洞窟は跡形無く崩壊した。

「ウサマ・ヒン・ラディーン!!」

それを見ながらわたしは思わずそう叫んでいた。

 

アフガン現地時間 12/25 19:00(日本時間 12/25 23:30

 

「コメット!コメット!」

ムシャラクさんの声で我に返ったわたしは自分が新聞記者の姿に戻ったことに気

づいた。

「どうしたのかい、顔色がまっ青だよ」

「ムシャラクさん!わたし、本当はとても恐かった

 わたしはムシャラクさんにすがりついて泣いた。

「ああ。でももう大丈夫だよ」

 ムシャラクさんはわたしの頭をやさしくなでながらそう言った。

 それからムシャラクさんは洞窟に来るまでのことなどを話してくれた。

「あれからしばらくして目が覚めたら麻酔をかけられる直前だった。起き

上がったら医者はたまげていたよ。何せ傷口が完全にふさがっていたから

な。それから医者達を説得して、このことをしばらく誰にも言わないよう

頼み、ちょうど私によく似た体格の男の死体があったものだから、それに

私の服を着せといたんだ。君が看護婦姿で私の胸に手を置いている夢を見

たよ。やっぱり君が助けてくれた

んだね」

「ええ。確かに手を置いたわ。でも、あのペンダントは?」

「私はナジブラ政権が崩壊した10年前に妻と2才になる息子と別れてそ

のころ出来て間もないタリバンの指揮官として各地を転戦した。その後妻

は死んだという知らせが入ったが息子の行方はわからないんだ。これはそ

の二人の写真を入れたものだ。これも命の恩人だ」

と言って彼は穴のあいたペンダントと中の写真を見せてくれた。

「この子は?」

「ハリーって言うんだ。かわいいだろ」

「あの子と同じ名前だわ。待って、10年前に別れたってことは、今わたしと同

じ位だわよね。もしかして

「え?君は息子の居場所を知っているというのかね」

「もしかしたら、わたし達が泊まっているホテルにいるかもしれないわ。ラバボ

ー。急いで

はい、ひめさま

 

 わたし達はカヴール郊外へ向かい、そこから星のトンネルでホテルまで行った。

まずバーバラさんに会ってこれまでのことを話すと、ムシャラクさんの姿を見て

驚いていたが、とても喜んでくれた。それからハリー君に会いに行った。予想通

り、ムシャラクさんがペンダントの写真を見せると、二人が親子であることがわ

かり、2人は抱き合って

喜んだ。それから4人で楽しい食事をした。

 

アフガン現地時間 12/26 10:00 日本時間 12/26 14:30

 ムシャラク運輸相の無事が確認されたため、予定を繰り上げて会議が行われた。

会議にはメテオさんも駆けつけてくれた。会議は無事終わり、各グループが今後

も協力しあうこと、来月東京で復興支援会議を開くことなどが決まった。会議が

終わった後、バー

バラさんがわたし達に聴いた。

「これからどうする?日本に戻る?」

「ごめんなさい。話すの忘れてたわ。わたし達今日いっぱいはここにいて、アフ

ガンの復興のお手伝いをするつもりです。まず、カヴールにある地雷を取り除く

お手伝いをしようと思います。さっき、ムシャラクさんからカイザル議長に話し

てもらいました」

「まず、星力で地雷が作動しないようにするの」

とメテオさん。

「それから、もうすぐ来るヒデさんに全ての地雷の位置を記録してもらうの。こ

うすれば、後から作動しないことを確認して取り除くことが出来るわ。あ、来た

みたい」

「バーバラさん、初めまして。ハモニカ星国でアニメの動画を描いているヒデで

す。私もお手伝いしに来ました」

「はじめまして。バーバラです。よろしくね」

「ムシャラクさんに市内を案内してもらうことになってるの。バーバラさんも一

緒に来ない?」

「もちろん!」

 それからわたし達は夕方までかかって市内の全ての地雷を作動しないようにし

た。ヒデさんが記録したMO200枚に達した。10万個以上あったことになる。

それからわたし達は星力で官邸を始めとする行政機構の建物の壊れた所を直した

り、一つの小学校を建てるのを手伝ったりした。

 すっかり夜になり、わたし達は帰ることにした。

「それじゃ〜来月の復興支援会議で」

「ええ。必ず行くわ。ムシャラクさん、あなたのことは忘れないわ。あり

がとう」

「こちらこそ」

「コメット。色々ありがとう。気をつけてね」

「バーバラさん、こちらこそ、ありがとう。復興支援会議には必ず来てね」

「もちろんだわ。今度はあなたの家にも寄らせてもらうつもりよ」

「それじゃみんな、さようなら〜」

 わたしは恋力で変身すると、ラバボーに乗って飛び上がり、上空で待っていた

星のトレインに乗り込んだ。

どんどん小さくなるカヴールの明かりを見ながら、

アフガニスタンはいま、ようやく自分で輝き始めたばかりだ。またいつ

か、もっと輝いた姿をこの目で見てみたい

そうわたしは思った。

 

「ラバボー。もうすぐおうちだよ」

 

 眼下に鎌倉の明かりがきらめいていた。エピローグへ続く

 

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